新・日曜炭焼き人の日記

炭遊舎のホームページで書いていた「日曜炭焼き人の日記」を引きついで書いていきます。

天ぷらの語源

2015年04月05日 | 日記

 ポルトガルから日本にキリスト教を布教しにきた宣教師たちによって1600年前後にもたらされた食べ方だという点には異論がないようだ。語源説には下の4つがある。強勢がある部分を長母音にしてカナ表記した。
 têmporas(テーンポラス)春夏秋冬それぞれのはじめに鳥獣の肉を断ち、身を清めること。
 templo(テーンプロ)寺院
 têmpera(テーンペラ)鋼鉄などを鍛錬すること
 tempêro(テンペーロ)塩、香料などの調味料
 キリスト教宣教師たちが肉食を断つべき日に魚貝類に小麦粉をまぶし、油で揚げて食べているところを見た日本人が「それはなにか」とたずねた。すると宣教師たちが「年に4回の斎時(quatro têmporas)にはこうして食べる」と説明したのではないか、と推測できる。広辞苑と新明解国語辞典がこの説を採用している。私もこの説がもっとも有力だと考えている。
 temploについては、キリスト教宣教師たちが集会所すなわち耶蘇寺(templo)などで天ぷらを揚げているところを想像すればよい。「耶蘇寺(templo)の食べものは変わっているなあ」と周りの日本人が噂しあう光景が眼にうかぶ。
 têmperaは発音上はテンプラにもっとも近い。意味のうえではどうか。魚の切り身をまな板にのせ、包丁でたたく姿が鍛冶屋が真っ赤に焼けた鋼をたたく姿に似ていないだろうか。しかしポルトガル人たちが調理法の説明に鍛冶屋をもちだすことは想像しにくい。
 tempêroを語源説として採用するにはかなり無理がある。テンペーロをテンプラと聞きとれるだろうか。強勢がない部分の母音は変わりうるが、強勢がある部分の母音は変わらないのがふつうだ。(sewing) machineをミシンと聞きとれるのは、マシーンのように後ろを強く発音し、maの「a」は弱くてミにも聞こえるからだ。

 幼いころ母が「さつま揚げ」のことを「天ぷら」と呼んでいた。長崎で原爆をあびた幼い女の子の手記にも「さつま揚げ」を「天ぷら」と書いている記述があった。関西ではむかし「さつま揚げ」を「天ぷら」と呼んでいた、といってもよいのではないか。では天ぷらはなんと呼ばれていたのか。思うに天ぷらは庶民の食べものではなかったために庶民の語彙には存在しなかったのではなかろうか。



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