新・日曜炭焼き人の日記

炭遊舎のホームページで書いていた「日曜炭焼き人の日記」を引きついで書いていきます。

カヴァレリア・ルスティカーナ

2016年12月04日 | 日記

 調布市民オペラを鑑賞した。演目はカヴァレリア・ルスティカーナ。「田舎の騎士道」という邦訳をつけている。
 舞台はイタリア、シチリア島のある村。男女が恋仲になり結婚を誓うが、男が兵役に行っている間に、女が近所の羽振りのよい車夫と結婚してしまう。兵役を終えて戻った男は落胆し、別の女に慰みを見いだす。もとの女は結婚を誓った男とその相手女に嫉妬し、もとの男に言い寄る。2人は不倫の関係になる。車夫はそれに腹を立て、男に決闘を申し込む。決闘の結果、男は死ぬ。たわいないストーリーだが、オペラ仕立てにはこの種の単純明快さが脚色を盛り上げる結果になる。
 5人のプロオペラ歌手を、調布市民50人が応援出演する形に舞台が設定され、迫力あるオペラができあがっている。全曲をイタリア語で歌っている。歌詞を憶えるのは容易でなかっただろうと推測される。
 ところで「田舎の騎士道」という邦訳には直訳すぎてかなりの違和感をおぼえる。Cavalleria RusticanaのCavalleriaはcavaliere(騎士)から派生した抽象名詞だろう。そのcavaliereは「cavalloつまり馬」に乗る人のこと、したがって「騎士」または「騎士のような人」、すこし転じて「紳士的な人」の意味に使われているはずだ。「紳士的な人」を抽象名詞にしたものがcavalleriaであるから、その意味は「紳士的であること」になる。そこへrusticanaという形容語句が付加され、都会で見うけられる紳士然とした人物でなく、紳士ぶっていても実際にはかなりピントはずれな行動をする粗忽な田舎者を連想させる。cavalleriaで背筋がとおった気品ある人物を連想させておいて、rusticanaで突き落とす、語順による手法はみごとだが、邦訳することは難しい。
 そこでもし私がこのタイトルを邦訳するとしたら、オペラのどたばたストーリーを斟酌して「田舎っぺ紳士・恋の顛末」としたい。最後の4文字はいいすぎだろうか。
 




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