ボクシングレヴュー

「TM」はタイトルマッチ、階級名につく「S」はスーパー、「L」はライトの略です。

大阪の試合

2007年10月06日 | 国内試合(その他)
高山勝成vsファビオ・マルファ」「石田順裕vsハビエル・ママニ」。
大阪で行われた注目の2試合は、高山、石田ともに大差の判定勝ち
いう結果となったが、それぞれの印象はまるで異なるものだった。


文句なしで殊勲の星を挙げたのは石田。結果だけでなく、世界ランカーで
あるママニのボクシングをほぼ完璧に封じたその内容が素晴らしかった。
鋭さのあるジャブなどを見る限り、ママニの調子は決して悪くなかった
ように思う。しかし、石田の巧みな体さばきについて行けず、軽いもの
ではあるが石田のパンチをしこたま貰っていた。

石田の技術は以前から高い評価を得ていたが、後半から終盤にかけて
やや集中力が切れるという悪癖もあった。一方のママニは、クレイジー・
キムに最終回逆転KO勝ち
したことからも分かるように、最後まで
決して勝負を諦めない選手。そこに心配があったわけだが、今回の石田は
最後までしっかり集中し、危なげなく試合を乗り切った。

日本と世界との間にある、中重量級の壁。ウェルター級以上の階級では
日本の選手層は薄く、反対に世界の選手層は恐ろしく厚い。スーパー・
ウェルター級の石田が世界ランカーに技術で完勝したことは、まぎれもなく
快挙である。石田は最初から判定勝ちを狙っていた節があり、試合後の
インタビューでは「つまらない試合で・・・」と謙遜していたが、
そのボクシングはとても美しく、KOの予感などなくても最後まで
飽きずに楽しめた。

これで世界ランク入りが確実となった石田だが、強豪揃いのこの階級
では、世界に挑戦すること自体が難事業だ。しかもママニはあくまで
「いち世界ランカー」に過ぎず、決して世界チャンピオン級の選手
ではない。つまり仮に石田が世界挑戦できたとしても勝てるかどうかは
分からないわけだが、ここまで来たら是非とも挑戦にまでは漕ぎ着けて
欲しいものだ。


この日のメインは、元世界王者・高山の再起戦。敗れた後の試合、と
いうだけではなく、ジム移籍後初めての試合でもある。前ジムとの
ゴタゴタもあり(ファイトマネー未払い問題は解決されたのだろうか?)、
満足に練習に集中できるような環境になかったはずだ。

いい時に比べれば体の動きははっきりと鈍く、ムキになって打ちに行って
逆に被弾する場面も目についた。それでも、高山の勝利自体は全く
疑いのないところではあった。再起戦は、まず勝つことが最も大事だ。
今後は落ち着いて練習できるだろうから、次の試合での「完全復活」を
期待したい。

東洋太平洋Sフライ級王座決定戦 河野公平vsエデン・ソンソナ

2007年10月06日 | 国内試合(日本・東洋タイトル)
河野が、フィリピンの新鋭ソンソナの巧さに苦しみながらも
2-1の判定勝ちで王座獲得。日本タイトルに続く2冠達成となった。


僕は試合前、またよくある「日本人と噛ませ犬の東洋王座決定戦」かと
冷めた目で見ていたのだが、ソンソナは実力者だった。
ボクシングファンなら、最初の1分を見ればソンソナが噛ませ犬で
ないことが分かったに違いない。

現在18歳ながらもフィリピンの国内王者で、既に3度も防衛している
という。若さのせいか線の細さも感じさせたが、これから伸びていく
可能性は充分にある。


河野の側からしてみれば、ソンソナがサウスポーであったことも
苦戦の原因になったのかもしれない。接近して連打、というのが河野の
得意パターンだが、ソンソナのフットワークの良さもあり、なかなか
いつもの連打が出せない。それでも前に出続けて何とかポイントを拾った。

どちらの勝ちか分からないような内容で、敵地なら負けていたかも
しれない。にもかかわらず、一人のジャッジが大差(118-110)で
河野を支持していたのには驚いた。微差のラウンドを全て河野に振れば、
このような採点も「あり」なのかもしれないが・・・。

また、1ラウンドの河野のスリップも、ソンソナのパンチがはっきりと
当たっていたので、ダウンと判断すべきだったのではないだろうか。


それはともかく、世界を目指す選手の試合にしては、やや物足りなさを
感じた。河野にとっては課題の残った試合と言えるだろう。