ボクシングレヴュー

「TM」はタイトルマッチ、階級名につく「S」はスーパー、「L」はライトの略です。

WBC世界バンタム級TM 長谷川穂積vsフェルナンド・モンティエル

2010年04月30日 | 国内試合(世界タイトル)
とにかくショック。この一戦から、新たな日本ボクシング界の
歴史が始まるはずだったのに。絶対に負けてはいけない試合に
負けてしまった・・・。しかも、長谷川のペースも決して
悪くなかっただけに、余計に悔やまれる。

日本のリングでは史上初、WBC王者とWBO王者の実質的な統一戦。
モンティエルという、評価の高い一流選手との試合。

序盤の、キリキリするような駆け引き。お互いのパンチが
なかなか当たらない、超ハイレベルな攻防。
その中で、長谷川がようやくペースを掴みかけた所だった。

長谷川とすれば、「いい感じになってきた、そろそろピッチを上げるか」、
モンティエルからすれば「このペースだとちょっとマズいな、
もう少し行かなきゃ」という局面。
お互いに思惑は違えど、お互いが全く同じタイミングでギアを上げた。

長谷川は攻めに対する意識が強まり、守りに対する意識が僅かに弱くなった。
その直後の、一瞬の出来事。そりゃ効くよな、という凄まじい一撃。
長谷川が打たれ弱いと言う人もいますが、それは違う。むしろ、
打たれ弱い方が良かった。あそこでダウンしていれば、追撃を浴びることもなかった。
残り時間は僅かだった。立ち上がれば、そのままゴングに救われたはず。

しかし、モンティエルの追撃は見事だった。あれだけ機敏に、しかもあれだけ
的確に詰められる選手は滅多にいない。 そして、いつもなら当たるはずの
長谷川のパンチが、なかなか当たらない。それは、モンティエルにとっても
同じことだったわけだが。お互いに「こいつ、やるなあ」と思っていたに違いない。


長谷川本人は「油断があった」と言っているそうだが、正確には油断と言うより、
ほんの一瞬の「空白」。不用意に危険な距離に入ったことが敗因だろうか。
今までの相手なら大丈夫だったけれど、モンティエルは見逃さなかった。

それまでは良いペースだったし、地力で完全に長谷川が劣るとは思わない。
ただ、「勝ち過ぎたボクサーは弱い」とモハメド・アリが言ったように、
楽勝を収めすぎたことによる、ほんの僅かの隙が敗因だったのかな、とも思う。
「モンティエル相手に不用意に行くのは危ない」と頭では分かっていても、
今までの試合で染み込んだ動きが無意識に出てしまったのかもしれない。

本人の闘志は全く薄れていないようなので、とにかく今はゆっくり休んで、
それから再起して欲しい。

かえすがえすも残念だが、試合前の高揚感、ハイレベルな試合内容、
いずれも本当に素晴らしかった。両選手に感謝したい。

WBC世界Sバンタム級TM 西岡利晃vsバルウェグ・バンゴヤン

2010年04月30日 | 国内試合(世界タイトル)
西岡が、5ラウンドTKOで王座防衛に成功。

今日の西岡は、変則的な相手のパンチを、しばしば浴びていた。
不安に思う人もいただろうが、僕は「いずれ見切るだろうな」と見ていた。
そして、徐々に当たらなくなるバンゴヤンのパンチ。ポイントも奪われ、
焦って出てくる。そこへ、ドンピシャのカウンターが炸裂。
事実上、試合を決めた一撃だった。

今の西岡の強み、それは「冷静さと熱さの絶妙なバランス」だ。
多少パンチを貰っても慌てず、冷静にクリンチ。戦局を冷静に分析し、
反撃のチャンスを伺う。そしてチャンスが来たら、多少の被弾もいとわず攻める。

それにしても・・・西岡の今の状況を想像できた人は、どれほどいただろう。
ウィラポンに4度挑んで夢叶わず、「西岡は終わった」なんて言われていた男が、
30を越えて悲願の王座獲得。これだけでも充分なドラマなのに、
強豪相手に劇的な勝利を収めるなど、気づけば4連続KO防衛。
今まさに、全盛期を迎えているのだ。

年齢的に、ピークを保っていられる時間はそう長くないとは思うが、
今しばらくは西岡の全盛期を堪能していたい。

バレロ・・・

2010年04月19日 | その他
殺人、逮捕、自殺…今日は何て一日だったんだろう・・・。
気持ちの整理がつかない。あのバレロが、こんなことになるなんて。

まだバレロが日本にいた頃、ファンサービスとして後楽園ホールの
リングに上がり、観客に挨拶しているのを見た。
その時の紳士然とした立ち居振舞いが、今でも脳裏に焼き付いている。

帝拳ジムと揉めて日本を離れたとか、素行に問題があるという噂を聞いた時も、
「あんな紳士的な男が?」と信じられない思いがした程だ。

27戦27勝、全KOという完璧なレコードを残したまま、バレロは逝ってしまった。
世界タイトルを2階級に渡って獲得したバレロだが、まだまだこれからだったと思う。
充分な実績を積み、いよいよこれから、世界的なスター選手たちとの
ビッグマッチに乗り出すはずだったのだ。

何でこんなことに・・・今はその思いだけしかなく、
まだ落ち着いて冥福を祈る気持ちにさえならない。