ボクシングレヴュー

「TM」はタイトルマッチ、階級名につく「S」はスーパー、「L」はライトの略です。

現在の世界王者一覧

2007年04月28日 | その他
ボクシング界には、無数の「世界王者」が存在する。
WBA、WBC、IBF、WBOの「メジャー4団体」だけに
限っても、全17階級×4団体だから68人。暫定王者や
WBAの「スーパー王者」を加えれば、さらに増える。

ちなみに「スーパー王者」とは、WBA王座を含む
複数団体の統一王者が生まれた場合、その選手を「スーパー
王者」に格上げし、改めて「通常の王者」を決めるもの。
そのため、WBAでは暫定王者も含めれば、一つの階級に
3人の世界王者が存在しうる。全くややこしい話だ。

マメにチェックしていないと、知らない間に知らない選手が
世界チャンピオンになっていた、ということがよく起こる。
取りあえず、現在の世界王者を列記してみたい。
(「暫」は暫定王者、「S」はスーパー王者の略)


<WBA>

ミニマム   新井田豊
Lフライ   (空位)
フライ    坂田健史(暫 ロベルト・バスケス)
Sフライ   名城信男
バンタム   ウラジミール・シドレンコ
Sバンタム  セレスティノ・カバレロ
フェザー   クリス・ジョン
Sフェザー  エドウィン・バレロ
ライト    ファン・ディアス
Sライト   スレイマヌ・ムバエ
ウェルター  ミゲル・コット
Sウェルター トラビス・シムズ
ミドル    フェリックス・シュトルム(S ジャーメイン・テイラー)
Sミドル   アンソニー・ムンディン(S ミッケル・ケスラー)
Lヘビー   スティペ・ドレブス
クルーザー  ジャン・マルク・モーメック(暫 ワレリー・ブルドフ)
ヘビー    ルスラン・チャガエフ

<WBC>

ミニマム   イーグル京和
Lフライ   エドガル・ソーサ
フライ    ポンサクレック・ウォンジョンカム
Sフライ   クリスチャン・ミハレス
バンタム   長谷川穂積
Sバンタム  ラファエル・マルケス
フェザー   池仁珍(暫 オスカー・ラリオスとホルヘ・リナレスの勝者)
Sフェザー  ファン・マヌエル・マルケス
ライト    デビッド・ディアス(暫 ホエル・カサマヨル)
Sライト   ジュニア・ウィッター
ウェルター  フロイド・メイウェザー
Sウェルター オスカー・デラ・ホーヤ
ミドル    ジャーメイン・テイラー
Sミドル   ミッケル・ケスラー
Lヘビー   チャド・ドーソン
クルーザー  ジャン・マルク・モーメック
ヘビー    オレグ・マスカエフ

<IBF>

ミニマム   モハメド・ラクマン
Lフライ   ウリセス・ソリス
フライ    ビック・ダルチニアン
Sフライ   ルイス・ペレス
バンタム   (空位)
Sバンタム  スティーブ・モリター
フェザー   ロバート・ゲレロ
Sフェザー  ムゾンケ・ファナ
ライト    フリオ・ディアス
Sライト   ラブモア・ヌドゥ
ウェルター  カーミット・シントロン
Sウェルター コーリー・スピンクス
ミドル    アルツール・アブラハム
Sミドル   アレハンドロ・ベリオ
Lヘビー   クリントン・ウッズ
クルーザー  クリズトフ・ウロダルジアク
ヘビー    ウラジミール・クリチコ

<WBO>

ミニマム   イバン・カルデロン
Lフライ   ウーゴ・カサレス
フライ    オマール・ナルバエス
Sフライ   フェルナンド・モンティエル
バンタム   ジョニー・ゴンサレス
Sバンタム  ダニエル・ポンセ・デレオン
フェザー   (空位)
Sフェザー  ホアン・グスマン
ライト    ファン・ディアス(暫 マイケル・カツディス)
Sライト   リカルド・トーレス
ウェルター  アントニオ・マルガリート
Sウェルター セルゲイ・ジンジラク
ミドル    ジャーメイン・テイラー
Sミドル   ジョー・カルザゲ
Lヘビー   ゾルト・エルディ
クルーザー  エンゾ・マカリネリ
ヘビー    シャノン・ブリッグズ

ちょっといい話

2007年04月27日 | その他
引退後、韓国に語学留学している元WBC世界スーパー・
フライ級チャンピオンの徳山昌守。現在もホームページで
日記を更新している。

その中に、かつてタイトルを奪った相手、仁柱(チョー・インジュ)と
再会したエピソードが書かれていた。ある記者の紹介で、韓国にある
のジムに連れて行かれたのだそうだ。


徳山は、が自分のことを良く思っていないのではないかと心配した。
僕もそう思っていた。無敗のまま5度の防衛に成功していたは、
日本で徳山に大差の判定でベルトを奪われた上に、韓国での再戦では
ワンパンチKOで惨敗、母国のファンに恥をさらしてしまったからだ。

しかし、は予想に反して、徳山を熱烈に歓迎した。お互いに現役を
退き、当時のわだかまりも消えていたのかもしれない。朝まで酒を
酌み交わし、おまけに2週間後の日記では、のことを「兄貴」と
呼ぶほどに親しくなっていた。


お互いのプライドを賭け、激しく殴りあうボクシングというスポーツ。
ボクサーは何より、負けることを嫌う。負けた時は、自分の全てを
否定されたような気持ちになるのだという。恐らくも、長い間
屈辱を払拭することが出来ないでいたに違いない。のプロ戦績に
たった二つだけ付けられた傷は、いずれも徳山によるものなのだ。

そんな二人が、時を経て、親しく酒を飲めるようになった。
読んでいるこちらまで、何か心が温かくなるような話だった。

ボクシングニュース

2007年04月26日 | その他
西沢国内現役復帰へ…ファン動いた

 西澤の国内復帰に関しては賛否両論あるが、海外で可能なら
 別に日本でやってもいいのではないか、という気もする。
 国内のルールに抵触しているわけでもないのだし。


日本ランキング、12位まで発表

 これについても賛否両論あるのだろう。個人的にはちょっと
 違和感があるが、慣れればそれが当たり前になるのかもしれない。
 どういったメリット・デメリットが生ずるのかは、今後の
 経過を見守りたい。


内藤、日本王座返上

 「世界挑戦準備のため」というのが理由になっているので、
 近い内に内藤の世界挑戦が発表されるのかもしれない。
 これにより暫定王者の吉田健司が正規王者に昇格。
 「暫定」の冠が取れて、ファンも本人もすっきりしたことだろう。


亀田興毅、次戦の相手決まる

 1階級下の東洋ランカーということで、またバッシングの種にも
 なりかねないが、有力ボクサーがこうした格下と調整試合を行う
 ことは、決して珍しくない。前戦の出来が今一つだったので、
 とりあえず軽い相手とやって調子を戻そうということなのだろう。

GWのお楽しみ(海外編)

2007年04月25日 | その他
5月5日(現地時間)、アメリカで行われるスーパーファイト
WBC世界スーパー・ウェルター級タイトルマッチ、
王者オスカー・デラ・ホーヤに挑むのは、フロイド・メイウェザー
長きに渡り世界のトップシーンを走ってきた二人が、ついに激突する。


改めてこの両者の戦歴を振り返ってみると、その凄さに圧倒される。

デラ・ホーヤはバルセロナ五輪で金メダル、アマチュア戦績は
228戦223勝。プロ入りしてわずか1年3ヶ月弱で最初の
世界タイトルを獲得し、その後10年かけて前人未到の6階級制覇を
達成した。ここまでのプロ戦績、42戦38勝(30KO)4敗
圧倒的な人気を誇る、ボクシング界のスーパースターだ。

メイウェザーはアトランタ五輪の銅メダリストで、アマでは
90戦84勝。プロデビューから2年で世界タイトル獲得、
それから8年で4階級を制覇。プロでは37戦全勝(24KO)
未だに実力の底を見せていない。「現役最強」と呼ばれる、
異次元のスピードを操る超人的なボクサーである。


人気の面ではデラ・ホーヤに大きく後れを取っているものの、
こと勝敗という点では「メイウェザー有利」という評判がもっぱらだ。
34歳という年齢に加え、1年のブランク。ボクサーとしての
ピークを過ぎた観のあるデラ・ホーヤに対し、30歳のメイウェザーに
衰えは見当たらない。単純な戦力を比較してみた場合、体格とパンチ力では
デラ・ホーヤが上回るが、スピードではメイウェザーが上だろう。
そのスピード差を利して、メイウェザーが判定勝ちするのでは、
というのが最も多い予想ではないだろうか。

ただし、デラ・ホーヤにもスピードはある。メイウェザーの速さに
ついて来れない、とは言い切れない。また、逆に体格の面で言えば、
デラ・ホーヤ絶対有利、と思えるほどの差があるわけではない。
見た目の差だけでなく、その他の眼には見えにくい様々な要素が
絡み合って勝敗が決するのではないだろうか。


正直なところ、これが「世界一強いボクサーを決める戦い」だとは
言いにくい。メイウェザーはウェルター級で、デラ・ホーヤは
スーパー・ウェルター級で、それぞれまだ最強を証明していないからだ。
メイウェザーはアントニオ・マルガリートミゲル・コットに勝てるのか、
デラ・ホーヤはトラビス・シムズコーリー・スピンクスに勝てるのか、
やってみないと分からない。

しかし、これがビッグマッチだということは間違いない。
少なくとも興行面では、これ以上の大試合はそうあるものではない。
メイウェザーはかなり以前から「デラ・ホーヤと戦いたい」と
発言していたが、その当時は階級が離れすぎていたため、誰も
本気にはしていなかった。そんな二人が本当に戦うことになった。
まずはそのことに感慨と興奮を覚える。

これまでに共通の対戦相手が一人もいない、(*注)まるで接点のなかった
はずのスーパー・ボクサー二人が対戦する。これまで行われた
ビッグマッチとは一味違う、何とも言えない面白さがある。
勝敗以前に、この両雄がリングで向かい合うこと、そしてどういった
試合が展開されるのかということ。それが楽しみだ。


ちなみに記録の面だけで言うと、デラ・ホーヤが勝った場合は
タイトルの初防衛、メイウェザーが勝った場合には5階級制覇
達成、ということになる。なお、5階級を制したボクサーは
デラ・ホーヤを含め3人いるが、5階級に渡って同じ団体のベルトを
獲得した例は過去にはない。メイウェザーが勝てば、史上初めての
「同一団体(WBC)での5階級制覇」となる。


(*注)共通の対戦相手に、アルツロ・ガッティがいたので
    訂正しました。間違いを指摘して頂いた「ボクヲタ」さん、
    ありがとうございました。

GWのお楽しみ(国内編)

2007年04月24日 | その他
ゴールデンウィークには、国内外でビッグマッチが控えている。
まず、日本で5月3日に行われるトリプルタイトルマッチ
展望を書いてみようと思う。


名城対ムニョス。これはやはり、挑戦者で元王者のムニョスに
分のある試合だと言わざるを得ない。何しろ、超が付くハードパンチの
持ち主なのだ。名城は割とパンチをもらう方だし、ディフェンスにしろ
ボディワークでよけるタイプではない。ガードの上からでも効いて
しまうのがムニョスのパンチであるから、どれだけ頑張っても
結局はどこかで倒されてしまうのではないだろうか。

ただ一つ、活路を見出すとすれば接近戦である。接近すればムニョスの
パンチ力は殺されるし、ボディブローを多用すればムニョスの動きを
鈍らせることも出来る。懐に入ってしまえば、むしろ小回りの効く
名城の方が有利のような気もするのだ。接近する前に、ムニョスの
得意パンチの一つでもあるアッパーをもらってしまっては危ないが、
とにかく中に入らなければ名城の勝機は薄い。


バレロ対本望。こちらは逆に、チャンピオンの圧倒的有利と
言われているカードだ。全勝全KOの「怪物」バレロは、
自分から攻めて行ってももちろん強いが、引いて構えてカウンターを
打つことも出来る。攻めに関してはまさにオールマイティな選手だ。
国内屈指のテクニックを誇る本望だが、バレロには技術もある。

なかなか挑戦者が勝つイメージが浮かばないが、名城同様、
こちらも接近戦に若干の勝機があるような気もする。中間距離では
バレロのパンチをよけることに専念し、接近したら細かいパンチを
集めてすぐ離れる。いわゆるヒット・アンド・アウェイだ。
パンチ力のない本望にとっては、本当に神経をすり減らすような
戦いになると思うが、どこまで健闘できるか楽しみだ。
ハードパンチャーとテクニシャン、まるで対照的な二人だが、
実は「フットワークに自信を持っている」という共通点もある。
その辺りのせめぎ合いにも注目したいところだ。


長谷川対ベチェカ。遠く南アフリカからやって来るベチェカの
情報が少ないため、予想の立てにくい試合だ。アマチュアでは
150戦133勝、プロでは16戦全勝という戦績から、
決して侮ることの出来ない相手であると思われるが、果たして
どのようなボクサーなのだろうか。

日本のエース、長谷川の戦いそのものも楽しみだが、謎のベールに
包まれたボクサー、ベチェカの実力がどれほどのものなのか、
そちらにも注目したい。

東洋太平洋ライト級TM ランディ・スイコvs中川知則

2007年04月23日 | 国内試合(日本・東洋タイトル)
スイコが判定で中川を破り、初防衛に成功した試合。
中川は、3年前の日本タイトルマッチに続き、2度目のタイトル
挑戦にも失敗。

いくつかのラウンドがカットされた映像で見ただけだが、
中川はよく健闘したと思う。

「フィリピンの石の拳」の異名を持ち、28戦25勝のうち
KO勝ちが22回というハードパンチャー、そして東洋タイトルは
スーパー・フェザー級に続き2階級制覇。世界挑戦は失敗に
終わったが、東洋では無敵状態。そんなスイコに対し、
一度もダウンすることがなかったばかりか、ある程度自分の
ボクシングを遂行することが出来たのだから。

パンチ力がないのが痛いが、強豪に善戦した経験を生かし、
また、何か決め手となる武器を身につければ、まだまだ
やれるのではないだろうか。

面白いブログ

2007年04月22日 | その他
以前にもボクサーのHPやブログを紹介したが、
最近また面白いブログを見つけた。


「竹原慎二はブタっ鼻」

 日本人として唯一、伝統の世界ミドル級王座に就いた
 竹原慎二氏のブログ。それにしても凄いタイトルだ。
 恐ろしくシンプルだが味のある文章で、元ボクサーという
 枠を越えた人気を得ている。更新頻度がやたら高いのも特徴。


小堀佑介ブログ

 日本スーパー・フェザー級王者で、朴訥なキャラクターで知られる
 小堀。「日本初!完全無料のプロボクサーファンクラブ」という
 のが売りで、会員登録すると日記が見られる仕組みになっている。
 飄々とした文体だが、この人は実は相当頭がいいのでは、と思わせる。
 

日本ライト級TM 長嶋建吾vs石井一太郎

2007年04月21日 | 国内試合(日本・東洋タイトル)
ベテラン・長嶋が、強打の石井を完封し、判定で2度目の防衛に成功

この試合の勝敗および展開は、多くの人が予想していた通りだった
のではないだろうか。石井はパンチはあるものの技術的な引き出しが
少なく、長嶋が石井のパンチをまともに食らうことはまずないのでは
ないか、と思われたからだ。


ただ、試合後のインタビューによれば、長嶋には不満の残る内容
だったようだ。確かに、石井の強打を封じることには成功したが、
自分も相手をぐらつかせるようなパンチを当てることが出来なかった。
王座を守る、というだけなら完璧に近いボクシングだったが、
これからまだ上を狙っていく選手としては、ややアピール不足
だったかもしれない。


それにしても、ライト級に上がってからの長嶋には安定感がある。
若かりし頃のスーパー・フェザー級時代には、スピードと勢いはあったが
線の細さ、危うさを常に感じさせた。それが今は、昔に比べれば派手さは
なくなったものの、隙が少なくなり、総合力はむしろ増している気がする。


およそ5年前、スーパー・フェザー級での世界挑戦は惨敗に終わった
長嶋だが、今なら、勝敗はともかく、もう少しいい勝負が出来るのでは
ないだろうか。ライト級は基本的に層が厚く、挑戦することさえ難しい
階級ではあるが、地道に力を貯えていけば、いずれチャンスが巡って
こないとも限らない。

日本ウェルター級王座決定戦 湯場忠志vs古川明裕

2007年04月20日 | 国内試合(日本・東洋タイトル)
湯場が古川をわずか1ラウンド、92秒でKOに下し、
かつて保持していた王座に返り咲いた

この試合が決まるまでには、紆余曲折があった。
湯場は、大曲輝斉に同じく1ラウンドでKOされて王座を奪われたが、
その大曲の3度目の防衛戦の相手は、当初は牛若丸あきべぇになる
予定だったが、牛若丸陣営がキャンセルし、代わりに湯場が挑戦する
ことになった。しかし大曲が眼筋麻痺の治療のため王座を返上してしまい、
王座は空位に。湯場はそのまま王座決定戦に出場することになったが、
肝心の対戦相手がなかなか見つからない。そしてようやく名乗りを
挙げたのが6位の古川だった、というわけだ。


古川は、2005年の全日本ミドル級新人王。つまり新人王戦の
頃から考えると、2階級落としてのタイトル挑戦だった。
キャリアの少なさ、減量、そして急に決まった初のタイトルマッチ。
これらを考慮すれば、古川にも同情すべき点は少なくない。

一方、ライト級、スーパー・ライト級、そしてウェルター級と、
日本タイトルの3階級制覇という偉業を成し遂げている湯場だが、
このところテレビで試合が放送される機会が少ない。残念ながら、
この試合も結局見ることが出来なかった。


その湯場絡みで見たいカードが2つある。復帰できればの話だが、
大曲とのリベンジマッチ。そして、東洋太平洋チャンピオン、
丸元大成への挑戦。これらの試合が決まれば、大きな話題になるだろう。

リナレス、ついに世界へ

2007年04月19日 | その他
日本の帝拳ジムに所属する「ベネズエラのゴールデンボーイ」こと
ホルヘ・リナレスの世界初挑戦が、ついに決まった。出場するのは
WBC世界フェザー級の、暫定王座決定戦


試合はアメリカで、約1ヶ月後の5月26日に行われる。
相手は、かつてスーパー・バンタム級のWBC王座を9度も防衛し、
日本のリングでも再三その強さを見せつけたこともあるオスカー・
ラリオス
。元々は、正規王者の池仁珍にラリオスが挑戦する予定で
あったが、池が負傷のため試合をキャンセル。この日の前座に出場
することになっていたリナレスに、白羽の矢が立てられたというわけだ。

唐突な印象を持った人も多いと思うが、実はリナレス、この世界戦を
見据えて「池、ラリオス、どちらかが試合に出れなくなったら、
自分が代役出場する」という心構えを既に整えていたようだ。
元々契約にそのような内容のことが書かれていたのかもしれないが、
本当に池が出れなくなったのだから、急な話とは言え、何やら
運命的な必然性を感じる。


「暫定」の冠が付くとは言え、これは正規王座を争うのと同等の
レベルの試合だ。池とラリオスでは実力的にラリオスが上か、あるいは
少なくとも互角ではあると思われるし、リナレスは長らく世界の上位
ランクにいる選手。ラリオスは、あのスーパースター、マニー・
パッキャオとも対戦経験があり、敗れはしたものの判定まで粘って
健闘している。そんなラリオスに勝てば、リナレスの世界的な知名度も
グッと上がるだろう。


さて、肝心な試合の方はどうなるだろうか。ラリオスには既に
世界レベルでの実績があるが、リナレスは初挑戦で、世界レベルでは
試されていない部分もある。蓋を開けてみれば、やはりリナレスは
強かったということになるのか、あるいは逆にまだキャリアが
足りなかった、ということになるのか。

とにかく、「世界王者になるのは間違いなし」と言われ続けた
リナレスが、ついに世界の舞台に登場するのだ。
今から楽しみで仕方がない。

日本バンタム級TM 三谷将之vs寺畠章太

2007年04月15日 | 国内試合(日本・東洋タイトル)
三谷がランキング1位の挑戦者を2ラウンドTKOで仕留め、
見事2度目の防衛を果たした。


こういう結末は予想していなかった。挑戦者の寺畠は粘り強い
ファイターだし、三谷は落ち着いた試合運びが持ち味の選手。
高い確率で、勝負は判定まで行くと思っていた。

1ラウンド開始から、僕は寺畠が積極果敢に前に出て、接近戦に
持ち込むのだろうと思っていたが、意外にも静かな立ち上がり。
と言うより、初のタイトルマッチ、敵地での挑戦ということで
プレッシャーを感じているのか、明らかに緊張で堅くなっている。
その証拠に、三谷のジャブに反応しきれていない。中間距離で
落ち着いたボクシングをさせては、チャンピオンの思う壺だ。

2ラウンド、さすがに寺畠もここから動きがほぐれていくのだろうと
思った矢先、三谷が左、右、左と高速のコンビネーション。最後の
左フックをまともに食らい、寺畠はダウンを喫してしまった。
何とか立ち上がったものの、ダメージは明らか。すぐにまた左フックで
ダウンを奪われ、レフェリーが試合を止めた。鮮やかすぎるKO劇だった。


それほどハードパンチャーだとは思わないが、三谷のパンチは
正確で速い。寺畠は、自分の力を全く出せずに敗れてしまった。

この快勝は寺畠の堅さがもたらしたという部分もあり、性急に
三谷の「今後」について楽観論を述べるべきではないと思うが、
三谷が非常に優れたボクサーであることは間違いない。

既にWBA、WBCともに10位以内にランクされており、
世界タイトルに充分挑戦できる位置にある三谷だが、出来ることならば
もう少し経験を積み、満を持して挑戦してもらいたい。
それだけの素材なのだ。まだ若いし、何も急ぐことはない。

WBA世界ヘビー級TM ニコライ・ワルーエフvsルスラン・チャガエフ

2007年04月14日 | 海外試合(世界タイトル)
213cm、147kgの「史上最大の世界王者」ワルーエフが、
4度目の防衛戦であっけなく王座を手放した。終わってみれば、
「レベルが違う」とさえ思えるような完敗。判定が2-0となったのは
意外だった。


チャガエフは、元王者ジョン・ルイス(ワルーエフに負けて王座を
失った)との挑戦者決定戦を制してこの舞台に上がってきた選手だが、
その試合にはまるで印象に残る場面がなく、「大した事ない」と
決め付けていた。

しかし、世界選手権2度優勝(1度目の金メダルは、同時期にプロでも
活動していたことが発覚し後に剥奪されたが)、キューバの伝説的
ボクサー、フェリックス・サボンに勝利するなど、その輝かしい
アマチュア戦績は伊達ではなかった。


「基本に忠実」と言えば聞こえはいいが、ワルーエフのボクシングは、
技術的には単純なものだ。巨漢でオーソドックスなボクシングをすると
いうだけで、並の相手は近づけない。長いリーチをかいくぐって
パンチを当てようとしても、長身のために顔面にはなかなか届かない
(ような気がしてしまう)。しかし、チャガエフのようなレベルの
相手には、体格の利だけでは通用しなかった。

試合を見ていた者としては、大男に果敢に挑むチャガエフの姿に
感動すら覚えたものだが、本人にとっては意外と、それほど難しい
試合ではなかったのかもしれない。

日本Sライト級タイトルマッチ 木村登勇vs飯田聖州

2007年04月14日 | 国内試合(日本・東洋タイトル)
1ラウンドから3ラウンドまで毎回ダウンを奪い、
4ラウンドに飯田の負傷によって試合終了。
木村が9度目の防衛を果たした。

もはや木村には、国内レベルで対等に戦える相手すらいない。
本人は、この階級の日本タイトル連続防衛記録の「10度」を
取りあえずの目標としているようだが、それよりも、一刻も早く
上へ行ってもらいたい。東洋タイトルに挑戦するもよし、
世界ランカーと対戦するもよし。

このまま日本タイトルの防衛を続けることに、それほどの意味が
あるとは思えない。陣営の決断を望みたい。

東洋太平洋王座は人気薄

2007年04月10日 | その他
昨日の山中-下田の日本タイトルマッチの前には、
東洋太平洋スーパ・フライ級タイトルマッチが行われ、
王者の相澤国之が、TKOで初防衛に成功した。


ふと気付くと、日本のジムの選手の東洋チャンピオンが
最近非常に多い。

ミニマム   和賀寿和
Sフライ   相澤国之
バンタム   ロリー松下
フェザー   榎洋之
ウェルター  丸元大成
Sウェルター クレイジー・キム
ミドル    佐藤幸治
クルーザー  高橋良輔
ヘビー    オケロ・ピーター

全17階級のうち、9階級までが日本のジム所属選手。
つい先ごろ返上した内藤大助、本望信人も合わせれば11人。

当然ながら東洋タイトルは日本タイトルよりも「格」の点では
上であり、獲得すれば世界ランクに入れる可能性が高い。
その一方、格は上でありながら、ランキングに入っている選手の
レベルは、下手をすれば日本ランカーより低いのではないか、
と思わせるケースも多く、手っ取り早く世界ランクを手に入れるには
絶好のタイトル、でもある。

知名度もなく、大して強くもない相手と決定戦、あるいは防衛戦。
東洋太平洋タイトルマッチは、大抵あまり人気がない。

日本Sバンタム級TM 山中大輔vs下田昭文

2007年04月09日 | 国内試合(日本・東洋タイトル)
まさに熱戦、だった。お互いの気持ちがぶつかり合う、いかにも
日本タイトルマッチらしい好ファイト。

この試合は、「野性派」対決でもあった。
強靭な肉体を活かしてひたすら攻めまくる王者・山中と、
天性のボクシングセンス、常人離れしたスピードを持つ挑戦者・下田。
そして、負けん気が非常に強いこと、ハングリーさを剥き出しに
した不敵な面構え、なども二人の共通点だ。

接近戦(というより乱戦)に強い山中と、離れた距離からの
左ストレートが最大の武器である下田。戦い方は両極端だが、
どこか似ている部分も多い両者の対戦。個人的には、今年の
チャンピオン・カーニバルの中では一番楽しみにしていたカードだ。


先にリングインした下田。「俺の方が強い」という意思を
漲らせた、挑戦者かくあるべき、と言いたくなるような良い表情だ。
対する山中は威風堂々、「チャンピオンは俺なんだ」という
自信、風格を感じさせる。

名前がコールされ、リング中央に歩み寄る両者。山中は下田を
グッと睨みつけ、下田は忙しく体を左右に振って挑発する。
まるで、これから始まる戦いを予告するかのようだった。


いよいよ試合開始。いきなり山中が突っ掛けたが、それ以降は
意外に慎重な探り合いを見せる二人。均衡を破ったのは、やはり
下田だ。左フックをきっかけに、一気に王者をコーナーに詰める。
ここは無難に脱出した山中だが、下田を勢いづけてしまったことは
間違いない。ボディへのストレートや、左のショートカウンターも
上手くヒットさせる。

2ラウンド、早くも下田がリズムに乗る。下田のような天才肌の
ボクサーをリズムに乗せると、実にやっかいだ。自分のパンチは当たるが
相手のパンチは届かないというベストな距離を掴んだ下田が、リングを
自在に動いている。そしてこのラウンドの中盤、クリンチ際からの
強烈な左フックが炸裂。やや引き倒したような感じではあったが、
山中からダウンを奪った。一気に仕留める、というところまでは
行かなかったが、もはや完全に下田のペースだ。

3ラウンド。山中が前に出ようとする瞬間、あるいは山中がパンチを
打ち終わった瞬間を、下田が狙い打ちする。危険なタイミングでの
打ち合いでも、スピードの差でことごとく下田のパンチだけがヒットする。
恐るべき才能だ。そしてラウンド終了のゴングの最中に打った右フックが
抜群のタイミングで山中を捉え、またしてもダウンを奪った。
これで終わってもおかしくないほどの一発だったが、山中は立ち上がり、
そのままインターバルへ。辛くも生き延びた。

このインターバル中、解説の元世界チャンピオンが「山中は
サウスポー対策が出来ていない」と指摘した。しかし、下田レベルの
スピードとセンスを持ったサウスポーの練習相手など、そうそう
いるものではない。山中だって、全くサウスポー対策を考えなかった
わけではないだろう。それ以上に、下田が強すぎるのだ。

4ラウンド。この絶好のチャンスに、下田は畳み掛けることをしない。
まだ落ち着いて行こうということなのか、あるいは一発の強打を
狙い過ぎているのか。いずれにせよ、これが後々の試合展開に
大きな影響を及ぼすこととなる。ここから、少しづつではあるが
山中の左フックが当たり始めるのだ。

5ラウンド。ダメージを残しながらも、山中が意を決したかのように
ひたすら前に出て、プレッシャーを強める。下田がバックステップを
踏む場面が目立ってきた。このラウンド終盤、下田のパンチが
またしても続けざまにヒットしたが、今度は山中は倒れない。
ここまで、ポイントの面では圧倒的に下田がリードしているはずだが、
山中も王者の意地を見せたラウンドだった。

6ラウンド。下田のパンチの命中率が若干低くなった。山中の
体に力が戻ってきて、動きが良くなったこと、それに伴い両者の
距離が微妙に縮まったことなどが原因だろう。運動量の多い
ボクシングをする下田は、どうしても後半にスタミナが切れてしまう。
何やら波乱の予感が漂いだしたラウンドだった。

7ラウンド。それにしても驚かされるのは、山中のタフネスだ。
下田のパンチのタイミング、スピードに慣れてきた部分もあるのだろう。
まだ慣れていなかった序盤にはダウンを繰り返していたが、
4ラウンド以降は時おり下田の強打を受けながらも、全くひるむことなく
打ち返してくる。止むことのない手数。それに煽られ、下田が
みるみる疲労していく。

8ラウンド。前のラウンド辺りから、接近戦が増えてきた。苦手だった
接近戦の練習をしてきたという下田は、果敢に真正面から打ち合うが、
この距離はもともと山中の土俵。下田が被弾する場面が多くなり、
ここへ来て山中が押している印象だ。しかしそのパンチの何割かを
下田はボディワークでかわしており、さすがの才能を見せる。

9ラウンドには逆に再び足を使い、悪い流れを変えようとする下田だが、
かえって山中を勢いづかせてしまう。疲れの見える下田の避け勘が鈍り、
これまでのようにフットワークでパンチを外し切れない。しかし、
山中だってもちろんノーダメージではない。いいパンチを再三当てながら、
下田を追い込み切れない。

ついに最終ラウンド。気合いを入れ直したのか、下田の動きにキレが
少し戻った。死力を振り絞って襲い掛かった下田が、ついに山中を
後退させる。しかしそれも一瞬のことで、すぐに手を返していく山中。
下田がまた打ち、山中がまた後退。しかしまたすぐ前に出る山中・・・。

その闘志には本当に頭が下がるが、下田も見上げたものだ。ポイントでは
間違いなく上回っているにもかかわらず、まるでKOしか勝つ道が
ないかのように攻めていく。勝敗というより、もはやボクサーとしての
本能、戦う魂がそうさせているのだろう。最終回に劇的なKOを見て
みたいという気持ちと、両者に最後まで戦わせたいという気持ちが交錯する。
結局、壮絶な打ち合いは最後まで続き、会場が大きな歓声に包まれる中、
ようやく試合は終わった。


判定は大差の3-0、下田が新チャンピオンに。しかし、ポイントの
差以上に苦しい戦いだった。前半で倒しきれなかったこと、また
スタミナが切れてしまったこと。勝者の表情は晴れない。

試合後のインタビューでも、スタミナ切れを反省していたが、
これまでの試合に比べれば、スタミナが切れる時間帯はかなり遅かった。
スタミナ強化に努めてきたという下田、その努力は決して無駄では
なかったのだ。


負けた山中にも、勝った下田にも課題が見えた試合だった。しかし
それと同時に、両者が持ち味を存分に出した試合でもあった。
また、これは「世界ランカー対決」でもあったのだが、勝った下田が
今すぐ世界へ行けるかと問われれば、やはり「否」と答えざるを得ない。
しかし、日本タイトルマッチとしては、近年稀に見る熱戦だったことも
決して否定できない。

そして、課題が見えたということは、逆にまだまだ伸びしろが
あるということでもある。スタミナは少しづつ、しかし確実に
アップしている下田だが、これからもっと上のレベルで戦うとなると、
単純に体力を強化するだけでは心もとない。緊急避難用でもいいから、
スタミナが切れることを前提とした試合運び、というものも
身に付けた方がいいのではないだろうか。


とにかく、非常にいい試合だった。若き新王者・下田には
これからも期待したいし、敗れた山中にも拍手を送りたい。
名勝負は、一人では作れないものなのだ。