ボクシングレヴュー

「TM」はタイトルマッチ、階級名につく「S」はスーパー、「L」はライトの略です。

新井田、返り咲きなるか?

2004年07月03日 | その他
今日3日、WBA世界ミニマム級タイトルマッチが行われる。
名古屋では放送がないので見ることはできないが・・・。

この試合、王者のアランブレットが何と昨日の計量で体重オーバー、
戦わずして王座を失ってしまうというハプニングがあった。
というわけで、挑戦者の新井田豊が勝てば新チャンピオン誕生、
負けたり引き分けだった場合には王座は空位という変則的な
タイトルマッチとなる。ちなみに、アランブレットが体重超過で
王座を剥奪されるのはこれで2度目。呆れてしまう。

新井田には、勝つチャンスが十分にある。ベルトを失った「前王者」の、
モチベーションの低下は避けられない。もちろんコンディションも
良くはないだろう。元々僕は、このアランブレットという選手が嫌いだった。
ひたすら軽いパンチを出してポイントを奪ったら、後は持ち前の早い足や
クリンチワークでエスケープ。試合巧者なのは認めるが、まるで面白味に
欠けるボクサーなのだ。ぜひ新井田には勝ってもらいたいところである。


かつてこの王座に就いたこともある元王者の新井田だが、防衛戦を
行わずして引退を表明、ファンを驚かせた。まだ無敗のままだった。
引退直後は「再起は絶対にない」と言っていたが、多くのボクサー同様、
やはりリングに戻ってきた。

そして昨年7月、約2年ぶりの再起戦がいきなりの世界挑戦となった。
相手は今回と同じくアランブレット。惜しくも僅差の判定で敗れ返り咲きは
ならなかったが、長いブランク明けにもかかわらず、新井田のボクシングに
錆付きは見られなかったようだ。

新井田のボクシングセンスは、日本人離れしている。新井田が所属する
横浜光ジムの会長で、元東洋フェザー級王者の関光徳氏は、かつて
「新井田はボクシングの美を表現できるボクサーですよ」と言った。
軽やかで柔軟な身のこなし、そして何と言っても左アッパーの切れ味が
素晴らしい。センスだけを取れば、歴代の日本人世界チャンピオンの中でも
屈指ではないか、という声もある。

ただし新井田のボクシングは、まだ荒いところがある。パンチを貰うと
熱くなって大振りしてしまう傾向があるし、試合運びも達者とは言えない。
前回のアランブレットとの対戦では、ブランクの影響はなかったものの、
その試合運びの巧さでやられてしまった感じだ。また基本的に「待ち」の
タイプである新井田は、カウンター狙いで手数が少ない。僅差の判定を
争う試合展開では、手数で印象点を稼ぐことが大事になってくるが、
そういった部分でも新井田には分が悪かった。

今回それらの欠点をどこまで克服してくるかが、新井田の勝利の鍵だろう。
かといって強引に前に出るだけでは、アランブレットの巧妙なディフェンスを
破ることは難しい。相手が攻めて来ないなら手数を出してジャッジにアピール、
攻めてきたらのらりくらりとかわす。アランブレットは実にやりにくい
ボクサーなのだ。いかに追い詰め、いかに捕らえるか。そこがポイントだ。
引退→再起→敗戦を経て、新井田がどう変わったのか見てみたい。