ボクシングレヴュー

「TM」はタイトルマッチ、階級名につく「S」はスーパー、「L」はライトの略です。

越本隆志

2005年01月30日 | その他
福岡で、東洋太平洋フェザー級王者の越本隆志が、
KOで7度目の防衛に成功した。この越本、
僕がボクシングを見始めた頃からずっと、日本の
フェザー級では常に第一人者だった。


25戦無敗、日本タイトル6度防衛の実績を引っさげて
世界王者のフレディ・ノーウッドに挑んで惨敗したのは、
もう5年も前のことになる。2度目の挑戦のチャンスが
なかなか巡ってこず、年齢的にももう下り坂だなんて声も
聞かれるが、僕は未だにこの人が日本フェザー級では
最強だと思っている。

安定したディフェンス技術に加え、ワンパンチKOできる
カウンターの精度も上がってきた。派手さはないものの、
キャリアを積んで実力が磨かれてきたように思う。
2度目の挑戦に期待したい。







WBC世界フライ級TM ポンサクレック・シンワンチャーvs小松則幸

2005年01月29日 | 国内試合(世界タイトル)
大阪で行われたこの試合、残念ながら完敗に終わったようだ。
まあ勝つことを予想していた人はほとんどいなかったと思うが・・・。

元々切れやすかった目を1ラウンドからカットしてしまい、
3度のダウンを奪われての5ラウンドTKO負け。
それまでのポイントも、王者のフルマークだったそうだ。

まあ前の東洋王者であり、世界ランカーでもあるわけだから、
形の上では挑戦の「資格」は十分にある小松だったのだが、
肩書きに見合った実力があるのかということについては、
ほとんどの人が疑問視していたはずだ。

不利どころか「無謀挑戦」と非難された選手が、予想通りの
惨敗を喫する姿は、何か非常に虚しいものがある。


なお、同じ日の同じリングでは、世界に2度挑んでいずれも
敗れた小島英次が、同じく世界挑戦に失敗した仲宣明を
圧倒してサバイバルマッチを制した。

本来1~2階級上の仲を3度倒しての判定勝ちは大したものだ。
極端に少ないキャリアでの世界挑戦が散々叩かれた小島だが、
やはり国内レベルでは相当な実力者であることは間違いないようだ。

侍と呼ばれた男

2005年01月14日 | その他
WBAでスーパー・フライ級とバンタム級(暫定王座)の
2階級を制覇した元世界王者、戸高秀樹が引退を表明した。
以前に患った眼疾の状態が思わしくないためで、バンタム級の
初防衛戦で敗れた試合が結局ラストファイトになってしまった。
昨年3月の敗戦の後、彼の動向のニュースが全く伝わって
こなかったので、どうしてるのかなあ、と思っていたのだが・・・。

宮崎県出身の戸高は、ボクシングを始めたのも日本王者になったのも
宮崎のジムにいる時だったが、その後転機を求めたのか、名古屋の
緑ジム」に移籍し、そこでついに世界チャンピオンとなったのだった。

年齢が近く、地元名古屋の世界王者とあって、僕は戸高のことを
長らく応援してきた。スーパー・フライ級王者時代、レオ・ガメスに
顎を砕かれてKO負けした時には本当に胸が痛んだし、怪我から
カムバックして再起を表明した時には、エキシビジョン(公開
スパーリングのようなもの)を会場まで見に行ったほどだ。
そして宿敵ガメスと階級を上げて再戦、判定勝ちで見事リベンジ
果たした姿に、言葉にならない喜びと感動を覚え、震えたものだ。

打たれても打たれてもひるまず、果敢に前進していくファイトスタイルに、
いつしか「侍」の称号が与えられた。実際は軽やかな身のこなしや
素早い踏み込みなども重要な武器だったのだが、世界レベルでは
相手のパンチをもらわずに勝つなんて至難の業である。戸高といえば
ガンガン打ち合う「魂のファイター」というイメージが強くなっていった。
しかしその激闘の代償は小さくなかった、ということなのかもしれない。

常に熱いファイトで、見る者の心を揺さぶった戸高秀樹。ベストファイトは、
劣勢でスタートしながら、打ち合いでじわじわと挽回して逆転KOに
結びつけたヨックタイ・シスオー戦だろうか。個人的には、当時
「最も世界に近い男」と言われた名護明彦を空転させ続けた試合や、
燃えたぎる闘志とクールな頭脳を融合させたガメスとの再戦なども
非常に強く印象に残っている。

今後は、東京でジム経営をしたいとのこと。頑張って欲しい。

期待のルーキー粟生

2005年01月09日 | その他
ネットで知り合った人と、ボクシングビデオの交換をした。
その中に、日本ボクシング界期待のルーキー、
粟生隆寛(あおう・たかひろ)の特集があった。

この粟生、アマチュア時代に前人未到の6大会優勝を達成して
鳴り物入りでプロの世界に入ってきた選手だ。少なくとも、
ここ10年では最も期待の高い新人と言っていいと思う。

ビデオを見てみると、確かに物凄いセンスだ。距離感がよく、
また日本人離れした体の柔らかさがある。つまりディフェンスが
非常にいいのだ。日本のボクサーというと、攻撃はいいんだけど
防御が甘く、国内レベルでは攻撃力だけで勝ち上がっていけても、
世界戦ではボコボコに打たれるという場合が多い。この点だけを
取っても、粟生には将来性を感じてしまう。

また攻撃の面でも、スピードのある連打や、体の柔らかさを利用した
多彩なパンチを出すことができるので魅力充分だ。率直に言って、
新人時代の辰吉丈`一郎にも匹敵するセンスの持ち主だと思う。

ついでに言うなら、茶目っ気のある笑顔もなかなか魅力的だ。
残念ながらイケメンというわけではないが、トゲトゲした所のない
「癒し系」のルックスである。そんな柔和な顔をしていながら、
新人のくせに「3分以内に倒す」とか「WBA、WBC両方のベルトを
獲ります」とか、あの亀田クンばりの大胆な発言をするのだが、
その癒し系の笑顔で言われると、不思議と生意気さを感じない。
この辺りは育ちの違いなんだろうか。

世間では亀田クンの方が有名(と言うより、粟生なんてボクシングファン
以外はまだ誰も知らないだろう)なので書いておくが、現時点では
亀田なんてお話にならないくらい粟生の方が強いと思う。まあ階級が
違うので、実際に対戦することはないわけだが。

前の試合で拳を痛めたせいもあってか、5戦目ではやや苦しんでの
判定勝ちに終わったようだが、拳の怪我がクセにならないことを願いたい。
それと、お客さんを意識しすぎるのかパンチが大振り気味になるところが
あるのも気になるが、ともかく粟生にはぜひ順調に伸びていって
もらいたいものだ。

激戦のフェザー級

2005年01月08日 | 国内試合(日本・東洋タイトル)
本日行われた、注目の日本フェザー級タイトルマッチ。
王者の榎洋之が、14戦全勝全KOの新鋭・金井晶聡に
7ラウンドTKO勝ちして初防衛に成功した。

ここ数年、フェザー級は日本で最も熱い階級と言っても
いいだろう。個性的なパンチャーたちが素晴らしい戦いを
繰り広げてきた。現在は東洋太平洋王者の越本隆志から、
正統派のテクニシャン木村鋭景、ケタ外れのハードパンチャー
雄二・ゴメス、「尼崎のKOキング」万能型の洲鎌栄一
圧倒的な手数と化け物じみたタフさが売りの大之伸くま
そしてこれまた強打の榎まで。なんと、越本が王座決定戦を制した
96年以来、新チャンピオンは全てKOで誕生しているのだ。

木村が奥田春彦を迎えた防衛戦での逆転に次ぐ逆転の展開や、
その木村がゴメスの凄まじい豪打の前にまさに「押し潰されて」
しまった衝撃。あるいはその恐怖のゴメスに真っ向からの打ち合いを
挑んで叩き伏せた洲鎌の勇気、そしてド根性ファイター・大之伸との
我慢比べを制した榎の勝負度胸など、「激戦のフェザー級」を示す例は
枚挙にいとまがない。

これだけ素晴らしい選手が揃っているのに、その中で世界挑戦を
果たしたのはまだ越本、洲鎌の2人だけ。しかもいずれもKO負けに
終わっている。日本のフェザー級も層が厚いけれど、世界の
フェザー級はさらに層が厚いということなのだろう。

さて、今のチャンピオン、榎はどうだろうか。個人的にはまだちょっと
世界は遠いかな・・・という印象もあるが、その強打とパンチを当てる
勘には非凡なものが感じられるし、今後に期待したいところだ。




中沼、川嶋、W世界戦

2005年01月03日 | 国内試合(世界タイトル)
新春早々行われた、ダブル世界タイトルマッチ。
アテネ五輪女子レスリングのメダリスト浜口京子と
その父アニマル浜口らが着物姿でリングサイドに陣取り、
正月気分を感じさせる中での戦いとなった。


WBAフライ級では、無敗の王者ロレンソ・パーラに
日本の悪ガキ、トラッシュ中沼が挑んだが判定負け。

無類のテクニシャン、パーラの前に中沼のパンチはほとんど
当たらなかったが、最終12ラウンドに強烈なパンチを一発
ブチ込んで意地を見せた。あれがもっと早く当たっていれば・・・
いや、それをさせないのが王者の巧さだったのだろう。
戦前の「しょっぱい試合で負けたら引退する」との言葉通り、
中沼は試合後、引退を表明した。


続くWBC世界スーパー・フライ級タイトルマッチでは、
これまた無敗の挑戦者ホセ・ナバーロに、チャンピオン川嶋勝重
苦しみながらも何とか防衛を果たした。正直言って、僕は
ナバーロの方が優勢だったんじゃないかと思ったが、
まあ勝ちは勝ちだ。この試合、圧倒的有利を予想されていたのは
実は挑戦者の方だった。チャンピオンに対して失礼な言い方だが、
そんな評価の高い選手を相手に堂々と渡り合ったのだから、川嶋も
大したものだと思う。

次は、前チャンピオンである徳山昌守とのV3戦が決まっているそうだ。
過去の両者の対戦成績は1勝1敗、まさに決着戦と言えるだろう。
1度目は徳山が判定で無難に勝利、2度目は川嶋が何と1ラウンドで
徳山を倒し、そこで王座が交代したわけだ。この成績を見ると、
川嶋の方が強いんだろうと思う人もいるかもしれないが、そう単純には
行かないのがボクシング。果たしてどちらが勝つんだろうか。