東洋太平洋Ｓ・バンタム級ＴＭ 國見泰央vs菅原雅兼

「北陸地方初のチャンピオン」國見の２度目の防衛戦の相手は、
名古屋の菅原。スタイリッシュにまとまった好選手で、これが
初のタイトル挑戦となる。両者とも３０歳。「負ければ引退」という
実況アナウンサーの言葉も、確かに大袈裟には聞こえない。
なおこの試合は、菅原のホームである名古屋で行われた。

國見というボクサーを初めて見たのだが、だいたい想像した通りの
選手だった。ＫＯ率（２５戦して１６勝６ＫＯ）が示すように
決定打はないものの、スタミナが豊富でタフ。接近戦でのボディ打ちが
得意のようだ。一言で言えば地味なファイター。

試合は、足を使いアウトボクシングをしようとする菅原に対し、
ガードを固めて中に入るチャンスを伺う國見、という展開で始まった。
序盤は菅原の動きが良い。國見はスロースターターなのか、菅原の
速いパンチをいくつか被弾してしまう。

しかし中盤あたりから國見がプレッシャーを強め、ボディを中心に
攻めると、菅原のパンチが当たる場面が減ってきた。徐々にスタミナも
切れてきたようで、１～２発打つとすぐにクリンチ。あまりに執拗に
クリンチするので、ついには減点されてしまったほどだ。菅原の試合は
何度も見ているが、スタミナが切れたところなど初めて見た。國見の
プレッシャーがそれほど強かったのか、あるいは初のタイトルマッチという
緊張感のせいだろうか。

確かに菅原のクリンチは見栄えが悪かったが、國見の方もそれを振りほどいて
打つこともせず、抱きつかれるまま。打開策を見出せないでいるようだ。
そうこうしている内に試合は終了。どちらの勝ちか分からない微妙な内容
だったが、その通り僅差の判定（２－１）で菅原が新チャンピオンになった。

國見の方は判定に不満そうだったが、特に不当なジャッジだったとは
思えない。今や地元判定の代名詞となってしまった「名古屋判定」は、
今回はなかったようだ。

またこんな世界戦・・・

杉田竜平の、２度目の世界挑戦が決まりそうだという。
これはどうなんだろうか・・・頑張ってる選手には
もちろん何の文句もないのだが、杉田が世界に２度も
挑むほどの実績を残しているかというと、とてもそうは
思えないのだ。

９８年に獲得した日本王座は、一度も防衛せずに返上。
まあこれは眼疾のためなので仕方ないが、その後は
東洋太平洋王座に挑むも判定負け。世界ランク入りを
果たしたのは恐らく、世界ランカーのハビエル・ハウレギ
（後のＩＢＦ世界ライト級王者）と引き分けたからだろうが、
その裁定も地元びいきの色が濃いものだった。

暫定ながら日本タイトルを再び獲得したものの、またも防衛戦を
行わず返上。明らかな格下相手の試合をいくつかこなし、
昨年２月、初めて世界の舞台に立つが７回ＴＫＯで惨敗。
序盤から王者の強打をまともに浴び、いい所はほぼ皆無だった。

そんな惨敗を経て再び世界に挑むのなら、ファンを納得させるような
厳しい試合を勝ち残り、成長の跡を見せなくてはならないだろう。
しかし世界戦の後、そんな試合はついぞ見られなかった。性懲りもなく
聞いたこともない格下の選手と戦うばかり。おまけにそんな相手に
苦戦したりもしているのだ。

ただ今回は、チャンピオンの方からお声が掛かり、チャンピオンの
地元に乗り込んでの挑戦ということだから、その辺りは大目に
見ないといけないのかもしれない。本来世界挑戦のチャンスとは
そうそうないものなのに、チャンピオンの方から呼んでもらった
のだから、断るというのも無理な話なのだろう。

まあしょせん僕なんかは外野の人間に過ぎないから、
頑張ってくれと言うしかない。頑張って下さい。

上半期の世界戦

６月末に予定されている川嶋と徳山の決着戦の他にも、
今後の世界戦の日程が続々と発表され始めた。

４月４日には大阪で高山勝成が、ＷＢＣ世界ミニマム級王者の
イサーク・ブストス（メキシコ）に挑戦する。このブストス、
安定王者候補と目されていたイーグル京和の試合中の負傷により
幸運な王座奪取を果たし、今回が初防衛戦になる。イーグル戦では
まるでいいところがなかっただけに、挑戦者が殺到するだろうなと
いう気はしていたが、早速高山が名乗りを上げたわけだ。

高山は早くから熱心なファンの間で素質を評価されていたようだが、
日本タイトル挑戦にさえ失敗している選手なので、あまり期待は
していない。相手のブストスがそれほど強敵でないという判断から
挑戦を目論んだのだろうが、果たしてどうなるか。

同じ４月の１６日には、またダブル世界戦が挙行される。
ＷＢＡミニマム級王者の新井田豊の２度目の防衛戦と、
関西のホープ長谷川穂積が、超安定王者のウィラポンに挑むＷＢＣ
バンタム級戦だ。

新井田の相手は、元東洋太平洋王者の金在原。ここのところ強敵との
対戦が多く、見栄えのしない僅差の勝ちを拾ってきた新井田にとって、
久しぶりに「格下」と呼べる選手かもしれない。ここはＫＯにせよ
判定にせよ、圧倒的な勝ち方を期待したいものだ。

一方の長谷川は、現在のバンタム級では最も期待値の高い選手の一人。
強烈なパンチ力こそないものの、スピードとテクニックが非常に
優れていると評判だ。今回が１５度目の防衛戦となるウィラポンの
強さ、手堅さは日本でもよく知られているが、もう３６歳、さすがに
陥落の時が近づいているような気もする。長谷川がスピードを生かした
激しい出入りをすれば、あるいは勝機が見えてくるかもしれない。

元世界王者、佐藤が引退

元ＷＢＡ世界Ｓ・バンタム級王者の佐藤修が、引退を表明した。


劇的な逆転ＫＯで王座を獲得したヨーダムロン戦が
見られなかったので、個人的にはあまり印象に残る
王者ではなかった。何しろ佐藤は、世界戦を４試合やって
勝ったのはその一戦だけ。しかも悪いことに残りの３試合は全て
見ているので、どうもしょっぱい選手だなあ、というイメージが
焼きついてしまったのだろう。まあとにかくお疲れ様でした。