12月15日、90年代にカリスマ的人気を誇った、あの辰吉丈一郎が
3年4ヶ月ぶりに再起する。相手は無名の噛ませ犬ではなく、非常に
評価の高かった元世界王者、タイのセーン・ソー・プルンチットだ。
辰吉は、日本人にとってはある意味でマイク・タイソンのような存在とも
言える。その名がランク表から消えても、まるで休火山のように背後から
我々を常に刺激し続け、何かを期待させ続けてきた。
しかし3度目の王座に就いたシリモンコン戦以降からしかリアルタイムで
試合を見ていない僕にとっては、そのカリスマ性が今一つ実感できない。
むしろ彼以降の世界チャンピオンがことあるごとに辰吉と比較され、
少なくとも人気の面では決して辰吉を抜くことが出来ないでいる状況に
イライラしていた。言わば目の上のタンコブ的な存在でもあったのだ。
その辰吉の再起戦が決まった時、専門誌「ボクシング・マガジン」は
辰吉の記事をトップに持ってきた。現役の世界チャンピオンを尻目に、
である。こういう事実がまた僕をイライラさせる。ボクシング界は一体
いつまで、辰吉丈一郎の名前で商売しようというのか。
これを受けて早速各ボクシングサイトでも、多くの人がこの試合の予想を
立て、また激しい議論の的となっている。予想はやはり悲観的なものが多い。
3年4ヶ月前のウイラポン戦ですら何も出来ず完敗した辰吉が、強豪である
セーンに勝てるわけがない。そしてこの長すぎるブランク。事実、最近の
新聞報道などでも、練習における辰吉の不調が伝えられている。
しかし穿った見方をすれば、これも辰吉人気を盛り上げるためのマスコミの
常套手段と考えられなくもない。普通、大事な試合前の選手をマスコミが
露骨に「不調」と書き立てることはあまりないからだ。実際は言われている
ほど不調でもないのではないだろうか。試合はしなくとも、ブランクの間
ずっとそれなりには練習してきたはずだ。
しかし仮に辰吉の調子が悪くなくても、相手はセーンである。爆発的な
攻撃力こそないが、非常に洗練された技術と豊富な経験の持ち主である。
こういったタイプは一般的に、年齢による衰えが少ないと言われる。
正直、仮に辰吉が王座に返り咲いた5年前の時点で対戦していたとしても、
勝てるかどうか分からなかったほどの難敵なのだ。
最近のセーンの試合ぶりはよく知らないが、今なおWBA2位、WBCでも
5位(いずれもスーパー・フライ級)と上位にランクされていることからも、
それなりの戦力を保っていると考えた方が良さそうだ。元フライ級王者の
セーンと、元バンタム級王者の辰吉との体格の差も気になるところだが、
防御技術の高いセーンと、不用意に打たれることの多い辰吉、という点を
考えれば、「与えられるダメージの量」に差はあまりない気がする。
このように、当日の両者の様子を見てみないと何とも言えない部分が
多すぎるのだが、やはり辰吉不利、の予想は覆し難い。恐ろしい話だが、
辰吉が滅多打ちに遭っての終盤TKO負け、というのが僕の予想だ。
辰吉にはその強烈な個性ゆえに、熱狂的ファンとアンチファンの両方が
存在する。もはや辰吉の勝利、ましてや王座復帰を本気で信じている人間は
ほとんどいないようにも思える。果たして我々は辰吉が勝つのを見たいのか、
それとも完膚なきまでに叩きのめされるのを見たいのか。恐らく両方であり、
だからこそ今回の試合も、普通の選手の試合とは違った異様な空気を孕んだ
注目を集めているのであろう。
ウイラポン戦の惨劇が再び繰り返され、今度こそ一つの時代の終わりを
見届けることになるのか。それとも今まで以上の「奇跡」が見られるのか。
やはり、どちらにせよ嫌でも見たくなってしまう試合ではある。
3年4ヶ月ぶりに再起する。相手は無名の噛ませ犬ではなく、非常に
評価の高かった元世界王者、タイのセーン・ソー・プルンチットだ。
辰吉は、日本人にとってはある意味でマイク・タイソンのような存在とも
言える。その名がランク表から消えても、まるで休火山のように背後から
我々を常に刺激し続け、何かを期待させ続けてきた。
しかし3度目の王座に就いたシリモンコン戦以降からしかリアルタイムで
試合を見ていない僕にとっては、そのカリスマ性が今一つ実感できない。
むしろ彼以降の世界チャンピオンがことあるごとに辰吉と比較され、
少なくとも人気の面では決して辰吉を抜くことが出来ないでいる状況に
イライラしていた。言わば目の上のタンコブ的な存在でもあったのだ。
その辰吉の再起戦が決まった時、専門誌「ボクシング・マガジン」は
辰吉の記事をトップに持ってきた。現役の世界チャンピオンを尻目に、
である。こういう事実がまた僕をイライラさせる。ボクシング界は一体
いつまで、辰吉丈一郎の名前で商売しようというのか。
これを受けて早速各ボクシングサイトでも、多くの人がこの試合の予想を
立て、また激しい議論の的となっている。予想はやはり悲観的なものが多い。
3年4ヶ月前のウイラポン戦ですら何も出来ず完敗した辰吉が、強豪である
セーンに勝てるわけがない。そしてこの長すぎるブランク。事実、最近の
新聞報道などでも、練習における辰吉の不調が伝えられている。
しかし穿った見方をすれば、これも辰吉人気を盛り上げるためのマスコミの
常套手段と考えられなくもない。普通、大事な試合前の選手をマスコミが
露骨に「不調」と書き立てることはあまりないからだ。実際は言われている
ほど不調でもないのではないだろうか。試合はしなくとも、ブランクの間
ずっとそれなりには練習してきたはずだ。
しかし仮に辰吉の調子が悪くなくても、相手はセーンである。爆発的な
攻撃力こそないが、非常に洗練された技術と豊富な経験の持ち主である。
こういったタイプは一般的に、年齢による衰えが少ないと言われる。
正直、仮に辰吉が王座に返り咲いた5年前の時点で対戦していたとしても、
勝てるかどうか分からなかったほどの難敵なのだ。
最近のセーンの試合ぶりはよく知らないが、今なおWBA2位、WBCでも
5位(いずれもスーパー・フライ級)と上位にランクされていることからも、
それなりの戦力を保っていると考えた方が良さそうだ。元フライ級王者の
セーンと、元バンタム級王者の辰吉との体格の差も気になるところだが、
防御技術の高いセーンと、不用意に打たれることの多い辰吉、という点を
考えれば、「与えられるダメージの量」に差はあまりない気がする。
このように、当日の両者の様子を見てみないと何とも言えない部分が
多すぎるのだが、やはり辰吉不利、の予想は覆し難い。恐ろしい話だが、
辰吉が滅多打ちに遭っての終盤TKO負け、というのが僕の予想だ。
辰吉にはその強烈な個性ゆえに、熱狂的ファンとアンチファンの両方が
存在する。もはや辰吉の勝利、ましてや王座復帰を本気で信じている人間は
ほとんどいないようにも思える。果たして我々は辰吉が勝つのを見たいのか、
それとも完膚なきまでに叩きのめされるのを見たいのか。恐らく両方であり、
だからこそ今回の試合も、普通の選手の試合とは違った異様な空気を孕んだ
注目を集めているのであろう。
ウイラポン戦の惨劇が再び繰り返され、今度こそ一つの時代の終わりを
見届けることになるのか。それとも今まで以上の「奇跡」が見られるのか。
やはり、どちらにせよ嫌でも見たくなってしまう試合ではある。