ボクシングレヴュー

「TM」はタイトルマッチ、階級名につく「S」はスーパー、「L」はライトの略です。

WBC世界ライト級TM ホセ・ルイス・カスティージョvsセサール・バサン

2001年01月20日 | 海外試合(世界タイトル)
初めて世界タイトルに挑戦した時、カスティージョは全くの無名で、
スーパー・フェザー級(1階級下)の下位ランカーだった。当時の王者
スティーブ・ジョンストンは、恐らく「安全パイ」のつもりでカスティージョを
挑戦者に選んだに違いない。ところが、その安全パイがまさかの王座奪取。
世界で最も権威のあるボクシング雑誌である「リング」誌から、「2000 Upset
of the Year」すなわち、その年の最も大きな番狂わせに選ばれたほどだ。

その試合が僅差の判定だったことから直接の(他の試合を挟まずに)再戦が
行われ、またも接戦を繰り広げた結果、カスティージョが引き分けでタイトルを
防衛。高い評価を得ていたジョンストンに負けなかったために、その実力は
ある程度認められたが、2戦続けてのはっきりしない結果だったため、お世辞にも
安定王者になるような器には見えなかった。

ところがその後カスティージョは、フロイド・メイウェザー、あるいはディエゴ・
コラレスといったスター選手とも互角に渡り合うほどの存在となり、一方の
ジョンストンには、これ以降世界戦のチャンスすら訪れなかった。分からないものだ。


この試合は、ジョンストンと引き分けた後の、カスティージョにとって2度目の
防衛戦。元王者で、坂本博之の挑戦を退けるなど来日経験もあるバサンが相手だ。
先にも述べた通りカスティージョは王者とはいえまだ無名に近く、バサンの王座
返り咲きも十分に考えられると予想されていた。

ゴングが鳴ると、両者の距離の違いが明白になった。どちらも打ち合いを好む
ファイターではあるのだが、接近して連打を出したいカスティージョに対し、
バサンはやや遠い距離から伸びのある強打を放ってくる。序盤はそのバサンの
距離だ。カスティージョはなかなか懐に飛び込めない。ただし、カスティージョは
丁寧にジャブを突き、この距離でも決して一方的に打たれているわけではない。

ラウンドが進むにつれ、カスティージョの手数がどんどん増えてくる。
しつこく手を出しながら前進し、打ち合える距離になってきた。足を使って
距離を取ろうとするバサンだが、カスティージョは前に出続ける。

そして5ラウンド。意を決したように、打ち合いの激しさを増していく両者。
お互いに力のこもったパンチをヒットさせていく中、カスティージョの左フックが
カウンターとなりバサンついにダウン。立ち上がったバサンに連打を浴びせる
カスティージョだが、バサンも必死に打ち返し、ダメージを与える。非常に
エキサイティングな展開だ。

6ラウンドも意地の打ち合いが続く。両者効いているが、ダメージはやはりバサンの
方が上だ。残り1分のところでカスティージョが放ったアッパーで、バサン2度目の
ダウン。ここで終わりかと思われたが、バサンは立ち上がる。しかもフィニッシュを
狙って攻めてくるカスティージョに対し、手を出して応戦する。凄まじい闘志を
見せたバサンだが、最後はカスティージョの連打につかまりレフェリーストップ。
カスティージョがTKOで2度目の防衛に成功した。

見た目も戦い振りも垢抜けないカスティージョだが、ジャブ一つ取ってもレベルが
高く、数々の名ファイターを生んだメキシコのエッセンスが凝縮されているように
感じた。一方のバサンもさすが元チャンピオンというところを見せ、メキシカン同士の
好勝負となった。

この試合は、メイウェザー対コラレスというビッグマッチの「前座」として行われた。
そのメインカードでは、メイウェザーがコラレスを一方的に打ち倒して観客の熱狂を
呼んだわけだが、実は個人的にはこちらの試合の方が印象に残っている。