ボクシングレヴュー

「TM」はタイトルマッチ、階級名につく「S」はスーパー、「L」はライトの略です。

日本フェザー級TM 木村鋭景vs雄二・ゴメス

2001年03月11日 | 国内試合(日本・東洋タイトル)
とにかくこの日の主役は、挑戦者ゴメス。
ここまで12戦全勝11KO、うち1RKO勝ちが実に9つという
驚異のハードパンチャーである。全米パワーリフティング選手権で
優勝したこともある完成された肉体美を誇る。序盤から大振りの
パンチで倒しにかかる姿勢は魅力だが、それだけにスタミナ面には
不安があるのではないかという下馬評があった。

対するチャンピオンの木村はここまで2人の挑戦者をいずれもKOで
退け、こちらも波に乗っている。名門・帝拳ジムの選手らしく、
よく鍛えられた万能型だが、ふとした時に気を抜いて不用意にパンチを
受けてしまう欠点がある。桁外れの強打者ゴメス相手には、一発の
被弾ですら命取りになりかねない。スリリングな攻防が予想された。

さて試合は、予想通りゴメスの猛攻で幕を開ける。早くも鼻血を出す木村。
木村も応戦するが、ゴメスの迫力にやや押され気味。やはり序盤はゴメスの
時間かと思われたが、4ラウンド、木村は左フックで軽いダウンを奪う。
タイミングで倒れたダウンで、ゴメスのダメージはない様子。ここから
体勢を立て直したい木村だったが、気を緩めてしまったのか、直後に
ゴメスの反撃を受ける。木村も手を返すが、ゴメスのガードが意外に堅く、
ひるませるまでには至らない。

中盤に入っても、ゴメスの勢いは衰えない。スタミナ不足と噂された
ゴメスだが、確かに序盤のスピードはなくなっているものの、強引な攻めを
控えつつチャンスにはパンチをまとめるという方法で、上手く試合を
運んでいる。ただ手数が減っているのは事実で、木村もガードの隙間を狙い
いくつかパンチをヒットさせ、チャンピオンの意地を見せる。

7ラウンドにはやや膠着状態に入ったかと思われたが、続く8ラウンド、
試合は結末を迎えることになる。ゴメスが再びプレッシャーを強め、
それに応じて木村も力をこめたパンチを返す。しかし木村の奮闘も
ここまでだった。ゴメスの右フックを受け、木村ついにダウン。
立ち上がるもふらつく木村に、セコンドがたまらずタオルを投入し、
ここで試合終了のゴング。8RTKOで新チャンピオンが誕生した。

振り返ってみると、8ラウンドの一発というより、序盤からのダメージが
尾を引いていたことが大きかったと思う。ゴメスの強打に耐え続けてきた
木村の肉体の中の「何か」が、あのダウンで切れてしまったのだろう。