ボクシングレヴュー

「TM」はタイトルマッチ、階級名につく「S」はスーパー、「L」はライトの略です。

WBA世界Sバンタム級TM ヨーダムロン・シンワンチャーvs佐藤修

2002年05月18日 | 国内試合(世界タイトル)
WBA世界スーパー・バンタム級タイトルマッチで、佐藤修が
見事なKO勝ちでタイのヨーダムロン・シンワンチャーを下し、
新チャンピオンに輝いた。実に喜ばしいことだ。しかし僕は
素直に喜べなかった。佐藤選手に文句があるのではない。我が東海
地方ではテレビ放送がなかったので、どうも実感が湧かないのだ。

前回、ウィーリー・ホーリンの持つWBC王座に挑み、序盤の2度の
ダウンを挽回しての引き分けで大いに株を上げた佐藤。当然、今回の
試合も全国放送されるものと思っていたのだが・・・。

何でも、急に決まった試合だったため、テレビの枠がなかなか取れなかった
のだという。確かに冷静に考えてみると、これほどスケジュールが流動的な
プロスポーツも珍しい。これはボクシング人気が定着しない理由の一つだ。
他のスポーツなら大抵、シーズンの初めに大体のスケジュールが発表される
ものだ。それを思えば、一概にテレビ局を責めるわけにもいかない。

ボクシングそのものは決して人気が出ないソフトではないと思う。
ボクシングを題材にした漫画や、ボクサーを扱った映画などは数限りない。
しかし、仮にある選手の試合を見てファンになったとしても、野球や
サッカーに比べて極端に試合数が少なく、またよほど有名な選手でもない
限り、次の試合予定もつかみにくい。これではファンはなかなか増えない。

肝心の佐藤の試合に全く触れないまま長々と書いてきてしまったが、
何しろスポーツニュースで数分間のダイジェスト映像を見ただけなので、
試合そのものについては書きようがない。次戦はぜひ全国放送を!

最短世界王座奪取記録を狙う小島英次

2002年05月15日 | その他
試合までまだ2ヶ月以上あるのに、こんなに話題になる世界戦も珍しい。
それはひとえに小島英次が、わずか6戦しかしていないボクサーだからだ。

しかしほとんどのファンは、この7戦目での世界挑戦に批判的だ。
何しろあの辰吉丈一郎が持つ、8戦目での世界王座奪取という日本記録を
上回ろうかという早さだ。もちろんジム側はその「記録」更新を意識した
部分もあるのだろうが、早くから「天才」と騒がれていた辰吉に比べると、
やはり唐突な印象は拭えない。「時期尚早」「無謀」と言われる所以だ。

ましてや相手は、先日セレス小林を倒しまくってWBA世界スーパー・
フライ級王座を強奪した、あのアレクサンデル・ムニョスである。
22戦全勝全KO。戦績だけ見ればまさに「怪物」だ。

アマチュア歴があるとは言え、3戦目でタイ王者、4戦目で世界ランカーを
下し、5戦目で東洋太平洋の王座に就くという「超」がつくスピード出世。
常識的にキャリアが重要とされるボクシングの世界で、「小島は壊される」
「まだ先のある選手なのだから、じっくりキャリアを積ませるべきだ」
こういう意見が大勢を占めるのも無理はない。

しかし小島はまがりなりにも東洋王者であるし、初防衛戦では浅井勇登から
2度のダウンを奪う完勝。4戦目で負傷判定勝ちしたラウル・フアレスを
含め、すでに世界挑戦経験者を2人も下しているのだ。キャリアの浅さを
差し引いて考えるなら、十分世界挑戦の資格はあると言える。

それに「キャリア」と言ったって、ボディ一発ですぐに倒れてしまうような
いわゆる「噛ませ犬」ばかりと戦って築き上げた、見せ掛けだけのキャリアに
果たしてどれほどの意味があるのだろうか。実質的には、小島よりも
薄っぺらなキャリアで世界挑戦をする選手が少なくないようにさえ見える。

また、浅井をKOできなかったことを不安視する向きもあるが、小島は
別にKOが売りの選手ではない。強打者の浅井を空転させ続け、おまけに
ダウンまで奪っての大差判定勝ちは、小島のスタイルを考えれば文句のない
出来である。

ただ、打ち終わりに何度か浅井のパンチをもらっていたというのは心配の種だ。
ディフェンスに甘さがあるのか、集中力が途切れたのか分からないが、相手が
ムニョスだったら無事では済まないだろう。セレス小林が「ガードの上から
でも効いた」と語ったほどの豪腕の持ち主なのだ。

しかし戦術面では、とにかくブッ倒そうとするムニョスには、相手をいなす
タイプの小島のような戦い方は有効だ。勝機は少なからずあると予想する。
無論、ムニョスの予想以上のプレッシャーに怖気づいた小島が、あっという
間に倒されてしまうという筋書きも否定できないが・・・。

そしてキャリアの浅さが災いして、世界戦の雰囲気に呑まれてしまわないか
どうかも心配だ。しかし誰だって世界初挑戦の舞台では緊張するものだろうし、
要は小島の心臓がどれほど太いかにかかってくるわけだ。

僕自身は、最短世界王座奪取の記録にはそれほど関心はない。ただ予想が
いい方に当たれば、テクニシャンが強打者を翻弄するという、最も僕好みな
試合が見れそうなので楽しみにしているだけだ。そのためにも小島には、
平常心を失わず、なおかつ集中力を切らさず頑張って欲しいと思う。