ボクシングレヴュー

「TM」はタイトルマッチ、階級名につく「S」はスーパー、「L」はライトの略です。

ボクシングニュース

2007年06月27日 | その他
今日は海外の話題をまとめて。


・メイウェザー、ハットン戦を希望?

 オスカー・デラ・ホーヤを破った直後に引退を表明していた
 メイウェザーが、ハットンの「メイウェザーと戦いたい」という
 発言に応えた、という内容の記事のようだ。現時点では、本当に
 両者の対戦が実現するかはまだ分からない。


・ヘビー級統一戦、10月に

 WBA王者ルスラン・チャガエフと、WBO王者スルタン・
 イブラギモフが、10月にモスクワで王座統一戦を行うことが
 決まったらしい。ヘビー級の統一戦にアメリカ人が絡まないのも、
 アメリカ以外の地でヘビー級の統一戦が行われるのも史上初のこと。

 現在、主要4団体のヘビー級王者は全て旧ソ連圏の選手たちだが、
 「アメリカは蚊帳の外」という流れが、ついにここまで来たわけだ。


・トリニダード再起、相手はジョーンズか

 2005年にロナルド・ライトに完敗して引退したプエルトリコの
 英雄・トリニダードが、再起へ向けてトレーニングを開始したそうだ。
 対戦相手として数人の選手の名が挙がったが、現在最も有力なのが
 ロイ・ジョーンズだという。

 かつてトリニダードが無敵の快進撃を続けていた頃にも、この両者には
 対戦のプランがあった。その後、ともに痛烈な敗北を喫したことで
 計画は霧散したが、意外なタイミングで実現の可能性が出てきた。
 しかし、既に衰えを晒した二人に、多くを期待するのは無理だろう。


・ワルーエフのコーチにジミン

 前述のチャガエフにWBA王座を奪われた「ロシアの巨人」ニコライ・
 ワルーエフが、アレクサンドル・ジミン氏を新たにスタッフに加える
 ことにしたらしい。ジミン氏と言えば、ユーリ・アルバチャコフや
 オルズベク・ナザロフを世界王者にしたことで知られる名トレーナー。
 その頃から現在に至るまで、日本の協栄ジムで選手を指導している。

 そのジミン氏がワルーエフのトレーナーになるということは、
 日本を離れるということだろうか。その辺りは少し気になる。

ジャック・デンプシー

2007年06月26日 | その他
ジャック・デンプシーと言えば、1920年代に活躍した
世界ヘビー級王者。ボクシングの歴史に詳しい人なら、
このデンプシーに「本家」がいることをご存知だろう。
初代世界ミドル級王者とされる、「ノンパレル」ジャック・
デンプシー
だ。

しかし、ボクシングサイト「Boxrec」で検索してみると、
ジャック・デンプシーを名乗るボクサーが、実に30人近くも
出てきたので驚いた。

詳細についてはよく分からない選手が多く、それが本名であるのか
世界王者デンプシーに憧れて付けたリングネームなのかは不明だが、
これだけいるというのは知らなかった。

ちなみに、ジャック・デンプシーという名の魚もいるらしい。
獰猛な性格のため、デンプシー(ヘビー級の方)にちなんで
付けられた名前なのだそうだ。

東洋太平洋Lフライ級TM ファニト・ルビリアルvs中島健

2007年06月24日 | 国内試合(日本・東洋タイトル)
この試合は判定決着と予想していたが、意外にも勝負は
早いラウンドで決まってしまった。

打ち合いの中、1~3ラウンドまでは中島がポイントを
取ったように見えた。しかしようやくルビリアルにエンジンが
かかり始めた4ラウンドからは、一気に中島がペースダウン。
5ラウンドにはもろくもボディで2度のダウンを奪われ、
最後はレフェリーが止める形でKO負けを喫した。

ルビリアルは初防衛に成功。なかなか強いチャンピオンだ。
一方の中島は、試合後に引退を表明した。


中島は、世界ランカーとの2連戦に勝利した後、WBC世界
ミニマム級王者・イーグル京和に挑戦したが惨敗。昨年11月、
ルビリアル戦の前には、ランキング上は格下だった國重隆に
判定負けしていたが、なぜかOPBF挑戦が決まった。

不可解な経緯を辿って挑戦した上にKO負けしたのだから、
ファンに叩かれても仕方のないことだと思う。その実力を
広く世間に知らしめることが出来なかったのは残念だ。

福島が移籍

2007年06月23日 | その他
元日本、東洋のスーパー・バンタム級王者で、世界挑戦経験もある
福島学が、JBスポーツジムから花形ジムに移籍した。

福島は今年33歳。このところパッとしない試合が続いており、
心機一転して最後のキャリアを満足できるものにしたいと
いう思いがあったのだろう。

実は今回の移籍に際して、JBスポーツジムの高橋直人会長
(元日本王者)は、mixiでかなり辛辣なコメントを書いている。
あまり綺麗な別れではなかったようだが、福島には残り少ない
ボクサー人生を精一杯駆け抜けて欲しいものだ。

相澤、9月に世界挑戦か

2007年06月22日 | その他
東洋太平洋スーパー・フライ級チャンピオン、相澤国之が、
9月24日に後楽園ホールで、WBA同級王者アレクサンデル・
ムニョス
に挑戦することになったらしい。

相澤はよくまとまった好選手ではあるが、日本王座の決定戦で
菊井徹平に敗れて評価を落とした。OPBF(東洋太平洋)
王座の決定戦では当時7勝11敗のタイ人が相手だったし、
初防衛戦に迎えた韓国人選手はまだ7戦しかしていなかったから、
正直なところ相澤が世界挑戦に相応しい実力を持った選手で
あるかどうかは、現時点では確信が持てない。

このところ、こんな世界挑戦が少し目立つように思う。
ボクシングは確かに「やってみなければ分からない」のだが、
それなりの説得力のない挑戦では、ファンの共感は得られない。
決まったからには頑張ってもらいたいという気持ちはあるが、
どうも素直に応援できないのである。

それにしても、ムニョスは日本人との対戦が多い。
ムニョスはこれまで世界戦に7回出場しているが、
そのうち日本人とは5度戦っている。あとの2回は
メキシコのマルティン・カスティージョと対戦した
ものであるが、いずれも敗れている。つまり、ムニョスは
世界戦では日本人以外に勝っていないのだ。

長谷川のV5戦

2007年06月20日 | その他
WBC世界バンタム級チャンピオン、長谷川穂積5度目の
防衛戦
は、12月に行われる可能性が高いという。相手は、
1位のシモーネ・マルドロッツ(イタリア)になりそうだとか。

タイ、メキシコ、南アフリカ、そしてイタリア。長谷川の
世界戦の相手の国籍はバラエティに富んでいて面白い。
これでこそ世界戦、という感じだ。

ただ、前回の防衛戦から8ヶ月近くも間が空いてしまうのは
もったいない。長谷川には日本のエースとしてもっと名前を
売ってほしいのに、世界戦が年に2回というのは少し寂しい。
昔の世界チャンピオンのように、ノンタイトル戦などを
挟んだりは出来ないのだろうか。

ボクシングニュース

2007年06月19日 | その他
・デラ・ホーヤ、メイウェザーとの再戦を否定

 空前の興行規模となった世紀の一戦から、もう1ヶ月以上が経った。
 判定は2-1と割れたし、ビジネス的にも旨味が多いと思うのだが・・・
 この発言は意外。試合直後に引退を改めて表明したメイウェザーの
 コメントを聞きたいところだ。


・村上潤二選手、急逝

 まさに突然の悲報だった。死因は心不全だという。
 つい先日、小堀佑介とのタイトルマッチに臨み、敗れはしたものの
 大いに王者を苦しめた姿がまだ記憶に新しい。ご冥福をお祈りしたい。


・バスケスが公開スパー

 坂田健史との王座統一戦を2週間後に控えたバスケスが、早くも来日。
 プロモーションも兼ねて、ということだが、せっかくなので大いに
 宣伝してもらいたい。今のボクシング界に最も足りないもの、それは
 PR能力だと思う。


・大毅、サーシャとスパー

 こちらは「亀田ファンクラブ」会員限定の公開となったようだ。
 技術だけなら間違いなく世界トップレベルのサーシャとのスパー、
 勉強になったことだろう。


・小堀、長嶋建吾とスパー

 ついでなのでもう一つ、近日行われるスパーの情報を。
 28日、後楽園ホールの興行で予定されているそうだ。
 日本ライト級王者の長嶋と、東洋&日本スーパー・フェザー級王者の
 小堀。スパーよりも、正式な試合で見てみたい組み合わせではある。

中村、日本タイトル挑戦

2007年06月18日 | その他
以前このブログに記事を書いたことのある中村徳人が、
キャリア10年にして初のタイトルマッチに挑むことになった。

チャンピオンは木村登勇。9連続防衛中の超安定王者だ。
中村は3連敗の後、現在4連勝中。彼のキャリアの中で、
4連勝というのは初めてのことだ。勢いに乗っているのだろうが、
恐らく、中村が勝つ確率は1割にも満たないだろう。

別に中村に肩入れするつもりはないが、やはり何となく
気になってしまう。試合は7月21日に行われる予定だ。

延期について

2007年06月17日 | その他
ボクシング業界では、試合の延期が時々ある。
このブログでも「○○の試合は何月何日」と書きながら、
いつの間にか日程が変更になっていたりする。
その記事を書いたことを忘れてしまったりして、結果的に
ここを読んだ人に間違った情報を提供していることもある
かもしれない。それに関してはお詫び申し上げたい。


例えば、ホルヘ・リナレスの世界初挑戦。当初は5月26日に
予定されていたが、興行上の都合により7月21日に変更。
場所も、カリフォルニア州のアナハイムから、ネバダ州
ラスベガスに。

あるいは、サーシャ・バクティンの復帰戦。当ブログでは
「5月」と書いたが、その後、7月1日の坂田健史の世界戦の
前座に組み込まれることになった。


試合の延期を知る方法としては、スポーツ紙やボクシングサイト、
主催ジムのホームページなどがある。しかし、スポーツ紙が全ての
延期を伝えるとは限らないし、ジムのHPにしても、あまりマメに
更新していないところもある。

とにかく自分でよく調べるのが一番だが、そもそも、延期の
可能性を考えてチケットを買う人がどれほどいるのだろうか。
少なくともボクシングの試合に関しては、延期やカード変更などが
あり得ることを頭に入れておいた方がいいかもしれない。

韓国のボクシング界

2007年06月16日 | その他
かつては隆盛を極めていた韓国のボクシング界だが、現在では
惨憺たる状況にあるという。

先日、韓国の初代ヘビー級王座決定戦が行われたが、勝った選手は
何とこの試合がわずか2戦目。話題作りのための苦肉の策なのだろうか。
同じ興行でスーパー・ライト級の決定戦も行われたのだが、こちらの
新チャンピオンは3戦目。近年の韓国では、国内王者のキャリアが
10戦に満たないケースは珍しくない。

僕がリアルタイムで見てきた韓国の世界チャンピオンと言えば、
崔龍洙(チェ・ヨンス)、崔尭三(チェ・ヨーサム)、仁柱
(チョー・インジュ)、池仁珍(チ・インジン)くらいだろうか。
ここ10年でわずか4人。いずれも日本で試合をした経験がある。

特に崔龍洙は、畑山隆則との2度に渡る激闘で印象に残っている。
日本のアナウンサーは、崔のことを「コリアン・フェニックス」と
紹介していた。その異名の通り、たとえ序盤にダウンなどのピンチが
あっても、後半には根性で盛り返していく逞しいファイターだった。
また、真摯で礼儀正しい人柄から、日本でもそれなりの人気があった。

そんな崔も、畑山に王座を奪われた後は試合枯れに悩まされ、
日本のジムの招きで来日。返り咲きを期して世界挑戦したが
判定で敗れ、その試合を最後に引退。かつて7度も世界王座を
守った選手としては、寂しい幕切れとなった。


その昔、韓国は日本のライバルとして立ちはだかり、
「日韓対決」は大いに盛り上がったという。再び韓国に
ボクシング熱が戻る日は来るのだろうか。

チャンピオンベルトの話

2007年06月14日 | その他
日本タイトルのチャンピオンベルトが、16年ぶりに新しい
デザイン
に変わった。ベルトの写真と、各チャンピオンの
コメントはこちら。なかなか格好いいのではないかと思う。


日本タイトルのベルトは「持ち回り制」だ。勝てばもらえると
いうわけではなく、負ければそのまま新チャンピオンの手に渡る。
今回の新しいベルトは、1本50万円もするという話だから、
もし毎回作るとしたら大変だろう。

東洋太平洋のベルトは、長らく決まったデザインがなく、後援者に
作ってもらうことになっていた。それでも同じようなデザイン
なるのは、既に型があるためだという。多少安くなるのだろう。

ただ、先日敗れた高橋良輔のベルト、あれはOPBF(東洋太平洋)
初のオフィシャルベルトだということだ。ちなみにこれは
持ち回りではなく、買い取り制。世界のベルトと同様、負けても
自分の手元に置いておけるわけだ。


世の中には「チャンピオンベルトマニア」という人たちが存在する。
デザインはもちろん、レプリカで売られているベルトの情報なども
交換しているようだ。

チャンピオンベルトはトランクスなどと同様、本物のボクサーが
身に付けてこそ価値のあるものだと思うが、ベルトを間近で
見てみたいという気持ちは分かる。

ニュース

2007年06月13日 | その他
元世界スーパー・フライ級王者の渡辺二郎氏が、恐喝の
容疑で逮捕された。グリーンツダジムの話題といい、
今日はボクシング界にとって暗いニュースが2つも
報道されたわけだ。

もちろん罪は罪だから、それなりの罰を受けなればならない。
ただ、マスコミというものはこういったネガティブな
ニュースは盛んに取り上げるくせに、例えばこういった
話題にはほとんど見向きもしないのが少し腹立たしい。

・イーグル、エイズ予防財団に募金届ける

確かに、額は決して多くないし、これは以前からイーグルが
行っている活動だから、特に新鮮味のないニュースではある。
こんなことに怒っても仕方ない、というのはあるのだが・・・。

グリーンツダジムの危機

2007年06月13日 | その他
高山勝成のファイトマネー未払い問題がニュースになった
関西の名門、グリーンツダジムが、閉鎖される可能性が出てきた。

4000万円以上の負債を抱え、ジム関連のプロモーション会社は
既に解散することが決まっている。返済の見通しも立っていないため、
このままジムもなくなるのでは、という憶測がなされているのだ。


ツダジムが最初にその名を世に知らしめたのは、赤井英和の存在に
よってだった。派手なKOを量産した赤井は関西のスター選手となり、
世界挑戦も果たした。その後、井岡弘樹、山口圭司という2人の
世界チャンピオンを育て上げ、「大手」の地位を不動のものとした。
さらに、亀田興毅が最初に所属していたのもこのジムだし、高山勝成も
ツダに移籍して世界王者となった。

最近では、いわゆる噛ませ犬を排した「HONMAMON(ホンマモン)」と
称する興行を再三行い、所属選手をアジアの強豪たちに次々とぶつけたり、
タイへ選手を送り込んで地域王座に挑戦させるなどといった、強気の
マッチメークでボクシングファンの好評を得ていた。

そんな矢先にジムの窮状を知らせるニュースが飛び込んできたのだから、
何とも唐突で意外な感じがしたのだ。


これまでにも、小さなジムが人知れず消えていった例はあるだろう。
しかし、これだけの実績を築いたジムがなくなるかもしれないとなると、
業界関係者に与える衝撃も大きいはずだし、これからプロボクサーを
志そうとしていた若者たちにも、不安を抱かせるに違いない。

もし本当にジムがなくなるのなら、まずは現在所属している選手たちの
受け入れ先が無事に、そして迅速に決まることを願いたい。

東洋太平洋クルーザー級TM 高橋良輔vsドミニク・ベア

2007年06月11日 | 国内試合(日本・東洋タイトル)
高橋が、8ラウンドTKOで初防衛に失敗した試合。
だが正直なところ、「高橋って意外とやるもんだなあ」と
感心した試合でもあった。


僕はこの試合、最初にボクシングサイトで結果と内容を知り、
それから実際の映像を見た。

確かに、体格、パワー、技術など、ほぼ全ての面で上を行かれての
完敗ではある(スピードだけは互角に近かったように思うが)。
挑戦者のベアは、これが6戦目とは思えない実力を持った選手だった。
恐らくそれなりのアマチュア経験があるのだろう。しかし高橋の
方も、記事を読んで想像していたよりは健闘していた印象だ。

印象というのはいい加減なものだ。何しろ僕には、高橋がまだ
4回戦の、ヘビー級トーナメントで戦っていた頃の印象しか
残っていなかったのだ。それはもう、6年も前の話だ。
最近の高橋の試合も1つか2つは見たはずなのだが、不思議と
そちらの方はあまり記憶にない。

4回戦の頃は、何だかボディビルダーがボクシングの真似事を
しているみたいだなあ、と思っていた。つまり、とても本格的な
ボクサーの体付き、動きには見えなかったわけで、当時と比べれば、
今は「ボクサーらしい動き」が出来ていて当然なのだ。


そういったことを踏まえて「高橋はよくやった」と思えるので
あって、冷静に見たらやはり一方的な試合、ということに
なるのかもしれない。

ただ、ヘビー級からクルーザー級に下げ、高橋の動きは
実際に良くなったと思う。以前の無理やり増量したような
体格ではなく、均整の取れた体付きをしていたし、やはり
高橋には今後もこの階級で頑張っていってもらいたい。

WBA世界ウェルター級TM ミゲール・コットvsザブ・ジュダー

2007年06月10日 | 海外試合(世界タイトル)
2階級を制したスター選手同士がぶつかるビッグマッチ。

これはあくまで個人的な嗜好の問題なのだが、僕にとってコットは、
その仏頂面とも相まって、「面白みのないボクサー」という
印象しかない。一言で言えば「がっちり」としたボクシング。
攻めも守りも手堅く、崩れることが少ないスタイルだ。

そんなコットが、破天荒ボクサーの代表格とも言えるジュダーと戦う。
この対比は面白い。下馬評ではコット有利という声の方が多かったが、
そういう人たちも、ジュダーが勝つ可能性を完全には否定できなかった
はずだ。ジュダーには、どうにも予測不能な部分があるからだ。

ジュダーのパンチのキレ、一瞬のスピードは、世界でもトップクラス。
ただ、その能力の高さを発揮するのは序盤だけ、後半は決まって失速する
というのが定評になっている。また、精神的にも不安定なところがあり、
ストップを不服としてレフェリーに掴みかかったこともあれば、
ローブローを抗議してリングに入ってきた、相手側のセコンドを殴りつけた
こともある。要はキレやすいのだ。

そういった粗暴な面はともかくとして、僕はジュダーの才能と破天荒ぶりには
魅力を感じており、勝敗以前に、ジュダーがどこまでコットのメカニズムを
狂わすことが出来るのか、そこに注目していた。


実際の試合は、僕の予想通り、いやある意味では予想以上の内容となった。
序盤のジュダーのスパーク、これは予想通りだったが、それが予想以上に
効を奏しているのだ。

様子見もほとんどせず、1ラウンドから攻めて出るコットに、ジュダーの
強烈な左アッパーがヒット。この、何の前触れもなく放たれる左こそが
ジュダーの武器だ。一気に猛攻をかけるジュダーだが、その直後に
コットがローブローを打ち、ジュダーがマットに転がる。偶然か故意かは
分からないが、これで流れは断ち切られてしまった。

2ラウンドも同じような展開で、全体的にはコットの手数が目に付いたが、
ジュダーが今度は左のショートストレートを当て、コットの動きを止める。
クリーンヒットはほぼこの一発だけだったと思うが、ジュダーの恐ろしさを
充分に印象づける一撃だった。

しかし3ラウンド、コットのローブローでまたしてもジュダーが崩れ
落ちる。コットには減点1が与えられたが、この2度目のローブローは
ジュダーの精神面に大きな影響を及ぼしそうな気がした。何しろジュダーは
集中力が切れやすいのだ。「これでジュダーの勝ちはなくなったかな」、
そんなことすら思った。


だが、その後もジュダーは、辛抱強く左を狙い続けた。一方で、左を
狙いすぎたために強いパンチのヒット数が少なく、その間も繰り返される
コットの攻撃によって徐々に疲弊していったこともまた事実ではあるが。

結果的に、ジュダーの最後の大きな見せ場となったのが第7ラウンド。
クリンチ際からの右フックとそれに続く連打で、コットをダウン寸前に
まで追い込んだのだ。しかしさすがはコット、必死のクリンチで
ダウンを拒んだ。ここで仕留められなかったのは痛かった。

9ラウンド、ジュダーが、カットして腫れも出てきた右目を気にする仕草を
再三見せる。と思ったのも束の間、突然しゃがみこんでしまった。
コットのパンチが当たったわけではないが、レフェリーはダウンとみなし
カウントを始める。形勢が不利なことを感じ、少し休もうと思ったの
だろうか。切れそうになる集中力を、何とか繋ぎとめようとしているようだ。

しかし、もうそれも限界に来ていた。10ラウンドは何とか乗り切ったものの、
11ラウンド開始早々、コットの連打で今度は明確なダウン。と言うより、
これまで蓄積されたダメージで体の力が入らなくなって倒れてしまった
ようにも見えた。その後の追撃で、すぐにレフェリーは試合をストップ。
この場面でもそれほど痛烈なパンチを受けたわけではなかったが、
レフェリーはもうジュダーに余力が残っていないと判断したのだろう。


コットにとっては苦しい防衛戦だったが、コツコツと実直に積み上げてきた
攻撃が、最後は実を結んだわけだ。コットの日々の研鑚が、結果として
自らを救った試合だったとも言える。

一方のジュダー。相変わらずの序盤の切れ味と、これまでにない精神的な
粘り強さを見せたが、コットほどの実力者に勝つには、やはり鍛え足りない
部分があった。

実直なコットは、この苦戦を糧にして、恐らくもっと強くなるだろう。
ジュダーは岐路に立たされた。「恵まれた才能を持ちながら、それを
活かしきれなかったボクサー」で終わるか、ここで奮起して再び頂点を
目指すか。明暗を分けた両者の今後にも注目していきたい。