ボクシングレヴュー

「TM」はタイトルマッチ、階級名につく「S」はスーパー、「L」はライトの略です。

日本フライ級TM 内藤大助vs小嶋武幸

2004年10月11日 | 国内試合(日本・東洋タイトル)
苦節7年でようやくタイトルを掴んだ内藤が、衝撃的なKOで
初防衛に成功した。タイムは何と、1ラウンド24秒。

2001年7月、坂田健史との日本フライ級タイトルマッチでは
引き分けで涙を飲んだ。その後なぜか世界ランク入りを果たし、
敵地タイで挑んだ世界戦。試合前から「無謀」と批判されたその戦いは、
わずか34秒、フライ級の世界戦史上最短記録でのKO負けという、
これ以上ないほどの惨敗だった。

当然のごとく叩かれまくった内藤は、しかしそこで終わらなかった。
日本ランク1位まで浮上し、ついに迎えた今年4月のタイトル再挑戦。
名古屋の無敗王者・中野博に完勝し、悲願のベルトを手にしたのだった。

苦労して獲ったタイトルだから、絶対に渡したくない。そんな思いも
当然あっただろう。その思いが「気負い」につながると、体が堅くなって
しまう。だからこそ、「初防衛は苦戦する」というのがボクシング界の
定説にもなっているのだ。しかしこの試合で内藤が印象づけたもの、
それはむしろ「冷静さ」だった。

試合前にリング中央でレフェリーの注意を聞いている間、内藤は
挑戦者の「先に一発やってやる」という気負いを感じたという。
その読みが正しかったことは、試合開始直後に証明された。
打ち気にはやってガードがガラ空きになっていた小嶋に、
右ストレートがカウンターでヒットした。小嶋ダウン。

騒然とする場内。何とか立った小嶋だが、すぐに内藤の連打に
追い詰められコーナー付近で2度目のダウン。コーナーポストで
頭を打っており、危険と判断したレフェリーが試合をストップした。
まさに電光石火。内藤の喜びが爆発した。

これは日本タイトルマッチ史上、最短KOの記録となった。
世界戦では34秒、そして日本タイトルでは24秒。
自らの拳で汚名を挽回した形だ。

坂田、トラッシュ中沼、本田秀伸らフライ級のホープたちが
世界の舞台で散った。かつて「無謀」と批判された世界戦で惨敗を
喫しながら這い上がってきた内藤に、世界への期待が高まってきた。