ボクシングレヴュー

「TM」はタイトルマッチ、階級名につく「S」はスーパー、「L」はライトの略です。

新井田、長谷川ダブルタイトルマッチ

2005年09月25日 | 国内試合(世界タイトル)
今日行われたダブル世界戦では、日本人王者が揃って防衛を果たした。
これまでダブル世界戦というイベントは何度となく開催されているが、
日本人王者が二人とも防衛に成功したのは今回が初めての快挙だ。

結果だけでなく、内容も素晴らしかった。WBA世界ミニマム級
タイトルマッチ、王者の新井田豊は、負傷判定という不本意な結末ながら、
KO防衛の予感も漂う風格充分の試合運びだった。とはいえ、採点は
意外と僅差だったので驚いた。雰囲気では圧倒していたものの、手数など
目に見える部分でのアピールが足りなかったのも確かだ。それは今後の
課題だろう。

とはいえ、これで3度の防衛を果たした新井田。ミニマム級の日本人
チャンピオンとして、3度防衛は単独トップの最多記録だ。本来の
高い能力に加え、しっかりとポイントを取っていく技術を習得すれば、
これからも長く防衛できるだろう。新井田はまだ未完成、言い換えれば
まだ多くの可能性を秘めたボクサーなのだ。


そして何と言っても、続くWBC世界バンタム級タイトルマッチ、
長谷川穂積の初防衛戦には本当に感動させられた。初防衛戦というのは
誰しも固くなりがちで、楽勝と思われた相手にさえ苦戦することが多い。

しかし、タイの英雄「あの」ウィラポンを破った長谷川は、やはり
只者ではなかった。メキシコのヘラルド・マルチネスをほぼ完璧な
ボクシングで終始圧倒、第7ラウンドに3度のダウンを奪って
TKO勝ちし、初防衛を果たした。鮮やかすぎるほどの快勝だった。

本来の挑戦者が負傷のため出場できず、代わって急遽呼び寄せられた
マルチネスは確かに本調子ではなかっただろうし、これで長谷川を
次代のスター扱いするのは性急すぎるかもしれない。とはいえ、
この日の出来はあまりにも素晴らしかった。パンチのスピード、切れ、
そして元々高かったディフェンスの技術。

これまでの長谷川は、KO率の低さが示すようにあまり素人受けする
タイプのボクサーではなかった。しかしここ数試合は、どういう心境の変化か
かなり好戦的なスタイルに変わってきている。攻めて出るということは
当然自分も打たれる危険が増すわけだが、長谷川の場合は、これまで培った
ディフェンスのテクニックが打ち合う場面でも大いに役に立っているようだ。


現在、日本にある世界のベルトは4本。徳山、イーグル、新井田、長谷川と、
確かな技術を持ったボクサーばかりであることが嬉しい。また今回の興行には、
世間の目を再びボクシングに向けようという強い意気込みが感じられたし、
新井田にしろ長谷川にしろ、そういったスタッフの熱意を充分に汲んだ上で
試合に臨んでいたように思う。長谷川の快勝のおかげかテレビの視聴率も
良かったようだし、今後に光が見出せる内容だった。

特定のジムだけで盛り上げようとしたり、特定の選手だけをメインに据えても、
その熱は一過性のもので終わってしまう。それよりも、ボクシング界全体が
一丸となって大きな動きを作ることが非常に大事なのではないか。今回の
興行を通して、そんなことを考えたりもした。