ボクシングレヴュー

「TM」はタイトルマッチ、階級名につく「S」はスーパー、「L」はライトの略です。

天熊丸木ジムが消滅

2008年01月11日 | その他
このニュースには驚かされた。
かつて3度も世界に挑戦した石井広三(元東洋太平洋スーパー・
バンタム級王者)や、元東洋太平洋ウェルター級王者の渡辺博らを
輩出した天熊丸木ジム。そんな、東海地方を代表するジムの一つが、
消滅することになった

会長の丸木孝雄氏は、元世界ランカー(名王者サムエル・セラノ
挑戦し判定負け)。最近では、息子の和也が新人王戦の西軍代表になり、
全日本の決勝では惜しくも敗れたものの、今後に期待を持たれていた。
そんな中でのジム解散。先の予定はまだ立っていないという。

ボクシングジムの経営がどういう風に行われているかはよく
知らないが、そうそう儲かるわけではないことは確かだ。

WBC世界バンタム級TM 長谷川穂積vsシモーネ・マルドロット

2008年01月10日 | 国内試合(世界タイトル)
長谷川が大差の判定で5度目の防衛に成功、日本人のバンタム級
世界王座防衛最多記録を更新した。

欧州王座8度防衛中の世界1位に対し、力の差を見せ付けて
完勝したことは素晴らしい。ランキングと実力は必ずしも比例しない
とはいえ、上位ランカーばかりを相手に勝ち続ける長谷川の強さは本物だ。
しかし、内容を見れば決して「会心の出来」とは言えない。


負の要素は、枚挙にいとまがない。一時は引退まで考えたという
ジム移籍のゴタゴタ、それに伴うブランク、約13kgに及んだ減量、
移籍後初の試合、そして夢のアメリカ進出のためには「いい勝ち方を
しなければならない」というプレッシャー(世界1位を相手に快勝が
義務づけられるチャンピオンなどそう多くはない)。

そして試合中には、相手のパンチによる大量の出血(実際は
バッティングによる傷である可能性が高い)。無理に打ち合いに行って
傷が深くなれば、試合をストップされてTKO負けになる恐れがある。
そこで長谷川は迷い、行くに行けなくなってしまった。

また、この日の長谷川は、なぜか動きにいつもの切れがなかった。
過酷な減量のせいだろうか、KOを意識しすぎたせいだろうか。
最大の魅力であるはずの、スピードがあまり感じられない。


様々な逆境を前にしても、長谷川は巧みな体さばきで相手のパンチを
かわしたり、終盤には激しい打ち合いを仕掛けたりと、何とか観客を
湧かせようという努力はしていた。そして何より、そういった状況の
中でも大差で勝ってしまう辺りはさすがである。

ただ、長谷川がさらに大きな舞台を目指していることを考えれば、
決して万人を納得させるような内容でなかったのも事実だ。
トレーニングによって体が大きくなり、減量も厳しさを増している。
コンディショニングの面も含め、今後に課題を残した試合でもあった。

WBA世界バンタム級TM ウラジミール・シドレンコvs池原信遂

2008年01月10日 | 国内試合(世界タイトル)
池原は大差判定で敗れ、王座獲得はならなかった。
王者シドレンコにとってはポイント差ほど楽な展開ではなく、
池原は健闘したとも言えるが、もっと出来ただろう、というのが
正直な思いだ。

池原は、2ラウンドにもらったパンチが効いたことにより、
ボクシングに迷いが生じてしまったという。「絶対に下がらず、
前に出て手を出し続ける」そこにしか勝機はなかったはずなのに、
思うように前へ行けなかった。というより、前には出ていたが、
そこにはシドレンコを下がらせるほどのパワーが感じられなかった。

リング中央で打ち合い、一見すると五分に戦えているようにも見える。
しかし、攻防ともに正確性では王者が一枚も二枚も上。必然的に、
ポイントはどんどんシドレンコの方に流れていく。リングの中央ではなく、
相手をロープやコーナーに押し込むくらいの勢いが必要だった。
多少見栄えが悪くとも、多少レフェリーに注意されても、シドレンコの
バランスを崩させ、疲れさせるくらいに押し込めれば・・・。

もちろん、それをさせなかったシドレンコの巧さもある。さすがに
無敗の王者だ。確かに崩しにくい選手ではある。しかし、決して
絶対に崩せない、というほどではない。


池原は試合前「負けたら引退」と考えていたようだが、今回は
少し悔いの残る負け方だったのではないだろうか。ファンが池原の
世界挑戦をもう一度見たがっているかどうかはさておき、個人的には
がむしゃらに勝ちに行けばもう少しやれたはず、という思いが強い。

10日にダブル世界戦

2008年01月08日 | その他
いよいよあと2日と迫った、大阪でのダブル世界戦
WBA世界バンタム級王者ウラジミール・シドレンコに池原信遂が
挑み、またWBC世界同級王者・長谷川穂積は、1位シモーネ・
マルドロットの挑戦を受ける。

新聞などの記事を読む限り、出場する4選手のコンディションは
まずまずのようだ。


今回のダブル世界戦は、いずれもバンタム級のタイトルマッチ。
また、ウクライナ人(シドレンコ)とイタリア人(マルドロット)
という、最近の日本のリングにはあまり馴染みのない国から
選手がやってくるという点においても興味深い。

長谷川の世界戦の相手は、タイ人(ウィラポン・ナコンルアン
プロモーション)が2度、メキシコ人(ヘラルド・マルチネス、
ヘナロ・ガルシア)が2度、そして南アフリカ人(シンピウェ・
ベチェカ)、今回のイタリア人と、実に国際色豊か。
これぞまさに世界戦、という感じがする。

ちなみに、12月度のWBCバンタム級ランキングを見てみると、
15位以内にメキシコ人が3人、南アフリカが同じく3人、
他にはニカラグア、パナマ、コロンビア、ウルグアイ、イタリア、
タイ、フィリピン、日本といったところの面々が名を連ねている。
中南米とアジアの勢力が強いのは軽量級の常だが、南アフリカも
一つの勢力として存在感を放っている。


今回の試合とは直接関係のない話になったが、予想をするとすれば、
長谷川vsマルドロットは判定決着になる可能性が高いのではないかと思う。
長谷川がマルドロットにKOされるとは思えないし、また
マルドロットはタフそうな気がするからだ。

シドレンコvs池原は、KOが見られる可能性もある。
KO勝ちの少ないシドレンコだが、前戦は初のKO防衛。
敵地であったこと、相手の実力を早々に見切ったことなどが
原因と思われる。今回もまた敵地なので、同じことが起こる
かもしれない。一方、池原にはパンチ力がある。シドレンコは
崩しにくい選手なのでKOするのは難しそうだが、ぐらつかせる
場面は作れるかもしれない。要するに、判定にせよKOにせよ
池原の不利は変わらないわけだが、何かが起きそうな気もする。


しかし個人的には、今さら予想などするより、直前に迫った
試合をただ楽しみに待ちたい、という気持ちだ。

恐らく、いずれの試合も打ち合いの場面が多く見られるだろう。
日本で行われる世界戦としては、これが今年初。今年の景気付けに
なるような素晴らしい試合を期待したい。

関西の試合結果

2008年01月05日 | 国内試合(その他)
大阪で行われた興行の結果。

元WBC、WBA(暫定)世界ミニマム級王者の高山勝成は、
タイ選手相手に約3年振りのKO勝利。昨年秋に新設された
真正ジムに移籍して以来、早くも2連勝を挙げた。


前座では、日本ランカーの山本大五郎がタイ人に引き分け。
また、元東洋太平洋王者の小松則幸がタイ王者に判定負け。
波乱の結果となった。

日本Sフェザー級TM 小堀佑介vs松崎博保

2008年01月05日 | 国内試合(日本・東洋タイトル)
小堀が、僅差判定勝ちで6度目の防衛に成功
かなり際どい内容だったようだ。松崎によく研究されて
いたのだろう、小堀が空転する場面が多かったという。

それでも勝ってしまう辺りはさすがだが、世界を目指すなら
もう少し技術的な上積みを考えるべきかもしれない。


また、この日の前座では、元新人王の奈須勇樹が前東洋王者の
ジョジョ・バルドンに1ラウンドKO負け。日本ランカーの
秋葉慶介が苦戦の末負傷ドロー。(小堀、奈須、秋葉が所属する)
角海老宝石ジムにとっては厳しい一日となった。

崔堯森が死去

2008年01月03日 | その他
年末年始なんて大したニュースはないだろうと思いつつ、
何気なくスポーツ紙のサイトを見たら飛び込んできた悲報。

先日の試合後に意識不明となっていた元WBC世界ライト・
フライ級王者の崔堯森(かつてのリングネームは崔堯三)が、
3日に亡くなった。記事によれば、2日に脳死を宣告され、
翌日に家族の同意のもと生命維持装置が外されたらしい。

ボクシング人気が低迷している韓国にあって、気を吐いていた
数少ないトップボクサーだった。王者時代には、来日して
山口真吾の挑戦を受けたこともある。

メキシコの強豪ホルヘ・アルセに敗れて王座を失ったのが
5年半ほど前。その後は2度の王座挑戦に失敗していた。

アルセと当たらなければもう少し長く防衛できていたかも
しれないが、10度防衛のサマン・ソー・チャトロン
攻略したこと、また韓国ボクシング界の不景気の中で
3度の防衛を果たしたことは立派な業績と言えるだろう。


何とも言えない、やり切れない気持ちだ。
今はただ、彼のご冥福を祈りたい。