ボクシングレヴュー

「TM」はタイトルマッチ、階級名につく「S」はスーパー、「L」はライトの略です。

WBC世界フライ級TM ポンサクレック・ウォンジョンカムvsエベラルド・モラレス

2006年06月30日 | 海外試合(世界タイトル)
ここまで27勝10敗のエベラルド・モラレスを4回TKOに下し、
15度目の防衛に成功。70年代の王者、ミゲル カント(メキシコ)の
「14度」を上回り、ポンサクレックはフライ級の連続防衛記録を更新。

それにしてもポンサクレックの挑戦者選びはひどい。ランク下位の選手が
多く、さらに1階級下のライト・フライ級のランカーも少なくない。
今回のモラレスも明らかに格下。暫定王者ホルヘ・アルセとの統一戦の
日程は全く決まらず、そうしている内にアルセは王座を返上、階級を
上げてしまった。このようにして強敵を避け続ければ、まだしばらくは
防衛記録を伸ばせるかもしれない。

なお、一時、日本の久高寛之が6月に挑戦か、などというニュースも
あったが、その話はどうやら流れたようだ。

IBF世界S・ライト級王座決定戦 ファン・ウランゴvsノーフェル・ベン・ラバー

2006年06月30日 | 海外試合(世界タイトル)
(8月8日・記)

リッキー・ハットンが返上した王座を争ったこの一戦は、徹底した
アウトボクシングをどう評価するかで、採点が大きく分かれる
試合だった。ひたすら前進するウランゴ、ひたすらバックステップを
踏むベン・ラバー。パンチのヒット数では明らかにベン・ラバーが
上で、現地の解説者はほぼフルマークでベン・ラバーの勝ちとした。

ところが、ジャッジ3氏はいずれもウランゴのアグレッシブさを
評価したようだ。6ポイント差、4ポイント差、2ポイント差と
点差はそれぞれ違った。ひたすら同じような展開に終始した試合
だったが、ベン・ラバーのアウトボクシングを、「主導権を握って
いた」と判断するか、「ウランゴに押されて逃げていた」と取るかで
各ラウンドごとに頭を悩ませたことだろう。ジャッジは難しい。

それにしても退屈な試合だった。終盤にはブーイングも起こっていた。
僕はどちらかというとアウトボクサーは好きだが、それもあくまで
「前に出る姿勢」があってこそ、だということを改めて思い知った。

亀田、亀田、亀田・・・

2006年06月30日 | その他
具志堅用高氏が亀田興毅について語った記事が話題になっている。
内容は、亀田の力をある程度認めた上で、陣営の姿勢などを批判したもので、
「具志堅用高記念館」の掲示板などに、多くの賛同の声が寄せられている。

具志堅氏の意見は大筋において正論であるが、なぜこの時期に?という
思いも禁じ得ない。亀田の世界戦が決まっているこの時期である。
東日本ボクシング協会副会長という要職にある人間の発言としては
いささか配慮に欠けていると思う。

とはいえ具志堅氏はただ思ったことを言っただけで、配慮が欠けているのは
むしろこの記事を書いた記者の方ではないだろうか。思ったことを
思った時に言う傾向のある具志堅氏を引っ張り出し、自分の意見を
代弁させているだけのようにも見える。


これに対し、協栄ジム側も反論しているが、こちらはあまりにも
大人気ない対応だと言わざるを得ない。確かに時期は悪かったものの、
具志堅氏の発言は、協栄ジム出身の世界王者として、あるいはボクシング人
としての愛ある助言だろう。それを、単なる誹謗中傷であるかのような
受け取り方をし、あろうことか絶縁宣言までしている。

選手が可愛いのは分かるが、これでは「亀田の批判は一切許さん」と
言っているようなものだ。業界に大きな影響力を持つ協栄ジムに、
「批判をしたら縁を切る」と言われては、大抵の関係者は尻込みして
しまうだろう。一種の言論統制とさえ思える。


「記念館」の書き込みには、感情的に亀田を嫌う人が、感情的に
具志堅氏を支持しただけのようなものも少なからずある。
ただ感情にまかせて物を言うだけでは、マスコミに踊らされ、盲目的に
亀田のファンになった人たちと大差ないのではないか。

亀田に関しては、一般人もマスコミ人も、どうも感情的になりがちだ。
ジャーナリストの江川紹子氏が亀田の態度について批判していたようだが、
これも感情論といえば感情論だし、それに賛同する人の意見も感情論が多い。
ただ、それはそもそも亀田陣営が見る者の感情を逆撫でするような言動を
繰り返してきたことが原因なので、そういった意見が多いのも当然ではある。

しかし、ちょっと自分の思いを代弁してくれただけで、「全面的に支持します」だの
「やっぱり具志堅(江川)はいいこと言うな~」だの、彼らの過去の発言については
ほとんど検証もせず、一直線に賛同するのは危険な傾向だとも思う。


何かと礼儀知らずの言動が非難される亀田だが、彼も最低限の礼節は
持っていると思う。試合後には相手のコーナーへ歩み寄り、健闘を称える
挨拶をしようとする。しかし、それを引き離そうとする父親の姿を見れば、
誰が諸悪の根源なのかはすぐに分かる。

この19歳の少年は、幼い頃から絶対者たる父親の言いつけに従い、
世界王者という目標に向かってひたむきに努力しているだけだ。あるいは、
自分を大事に扱ってくれる周囲の人間の期待に応えようとしているだけだ。


個人的には、こんなことは全て、ひたすらくだらないと思う。
ボクサーなのに、ボクシング以外の話題が一人歩きしすぎている。
ボクシングのことなどほとんど誰も語らない。それが寂しい。

こんなくだらないことでしか盛り上がれないマスコミと、こんな
くだらないことでしか盛り上がれない読者(視聴者)、どちらも
ひたすらくだらない。周りのくだらない騒ぎが、これから世界に挑もうか
という前途ある若いボクサーの邪魔にならないことを祈るばかりだ。


亀田ファンでもアンチ亀田でもいい。もっとボクシングを見て欲しい。
一人でも多くの人に、ボクシングの面白さや奥深さに触れてもらいたい。

東洋太平洋&日本フライ級TM 小松則幸vs内藤大助

2006年06月27日 | 国内試合(日本・東洋タイトル)
東洋王者と日本王者が、互いのベルトを賭けて戦うのは史上初。
ワールドカップ期間中、しかも平日の夜ということを考えれば充分に大入りと
言える観客数だが、決して超満員とは行かず、歴史的なビッグマッチとしては
やや寂しい気もした。

両者とも、世界戦で完敗しているベテラン同士。これから世界へ駆け上がって
行こうとする若きホープに比べると、「この先」に対する期待感が薄い。
つまり、この対決に勝利して再度世界戦に漕ぎ着けたとしても、ちょっと
勝つのは難しいだろうなあ・・・と容易に予想できてしまうのである。
そういったことも客の入りに影響したのであろうか。


とはいえ、試合自体は大いに盛り上がった。当然だ。ベテラン同士、これで
負けたらもう後がない。逆に、勝者は世界戦線への最後の望みをつなぐ
ことになるだろう。まさにサバイバルマッチなのだ。勝ち負け以前に、
こういったリスクの大きい試合を行う決断を下した両選手とその陣営には
最大級の敬意を表さねばならない。

序盤からお互いの動きが固い。この試合の持つ意味の大きさを考えれば、
それも仕方ない。開始からわずか10秒後、いきなり内藤の左フックが
炸裂し、小松がぐらつく。体が固いところにまともに貰って、効いて
しまったようだ。この後も、内藤の大振りのパンチが再三ヒットする。
何とか打ち返す小松。お互いにラフなパンチの応酬。世界ランカー同士の
対戦とは思えないほどのバタバタした立ち上がりだ。

しかし、実は内藤の大振りは作戦だったらしい。陣営によれば、最初は
大きなパンチで相手のペースを乱し、そこから細かい攻撃に移るという
プランを立てていたという。ところが予想以上に小松が固くなっていたため、
その大振りのパンチが当たってしまったということだろう。

元々ガードが低い上に大振りを繰り返すものだから、内藤の顔面はガラ空きで、
そこに小松のパンチもいくつかはヒットしている。しかし与えたダメージ、
見た目のインパクトは明らかに内藤が上。小松は完全に後手に回ってしまった。

同じような展開で5ラウンドまでが終わった。明らかな劣勢に立たされた
小松だが、まだ逆転の目はあった。豊富なスタミナに物を言わせ、後半に
粘り強さを発揮するのが小松の持ち味なのだ。ところが続く第6ラウンド、
その持ち味を出す前に試合は一気に決着を見ることになる。

ラウンドの半ば、内藤の強烈な右フックが炸裂、小松が前のめりに崩れる
ダウン。誰もが「決まった」と思ったことだろう。何とか立ち上がったが、
小松の足はフラフラだ。すかさず内藤がラッシュをかけた直後、レフェリーが
たまらずストップ。6ラウンドTKOで内藤が勝利を収めた瞬間だった。
これで内藤は日本タイトル4度目の防衛を果たすと同時に、東洋太平洋
タイトルも獲得。2冠王者となった。


結果的に言えば、序盤の攻防が全てだった。最初からダメージを負って
しまった小松は、ペースを掴み切れずラウンドを重ねた。また、基本的に
ボクシングが真っ正直な小松に対し、内藤には変則的な動きも含め、老獪な
技術がふんだんにあった。その差が出た試合でもあったように思う。

それにしても、ダウンを奪った内藤のパンチは見事だった。その前にまず
軽い右アッパーを当てておいて、ほぼ同じモーションからの右フック。
「またアッパーが来る」という頭があったのか、内藤が若干タイミングを
ずらしたせいか、小松はこれに全く反応できていなかった。しかもぐっと
腰を落とし、力を溜めてからの一撃だ。タフなことで知られる小松だが、
こんなパンチを貰ってはたまらない。


辛うじて、3度目の世界挑戦への希望をつないだ31歳の内藤。
年齢的にも、残された時間はそれほど多くはない。以前のはじけるような
動きのキレは影を潜めていたが、逆に老獪さは増した感じだ。と同時に、
ガードの悪さや空振りした時のポジションの悪さ(相手のパンチがまともに
当たる位置に立ってしまう)は改善されていなかった。また、かねがね
スタミナを不安視されていた内藤だが、今回は前半で試合が終わって
しまったため、その点は確認できなかった。

すなわち「世界」を相手にした時の不安要素は変わらず残っているわけだが、
一発の威力が健在であることも示し、巧さも見せた。全体的な実力はむしろ
今がピークなのではないだろうか。それでも「世界の壁」は高いと言わざるを
得ないが、今後に向け、改めて期待感を持たせてくれたのは確かだ。

ボクシングニュース3本

2006年06月09日 | その他
新井田-高山、正式決定

 これは以前にも書いたニュースだが、いよいよ正式決定したようだ。

 世界タイトルをこれまで4度防衛、世界戦の通算戦績は6勝1敗。
 新井田は世界チャンピオンとして見事な結果を残してきたが、その
 ほとんどが僅差の判定による決着だったせいか、どうも評価が上がらない。

 一方、1度も防衛できずに世界王座を失った高山は、その負け試合
 (イーグル京和戦)や、その後の小熊坂諭戦(日本タイトル獲得)の
 内容により、むしろ世界王者だった頃より評価は上がってきている。

 この試合の勝敗予想は難しい。殴り合いに持ち込めば新井田が有利な
 気がするが、スピードと手数で勝る高山の動きについて行けないようだと
 新井田にとって厳しい戦いになるだろう。


長谷川、ラリオスとスパーリング

 さぞ見応えのあるスパーになったことだろう。現在の日本ボクシング界の
 エースである長谷川と、1階級上の世界王座を9度も守ったラリオス。
 メキシカンとグローブを交えた経験は初防衛のマルチネス戦だけという
 長谷川にとって、メキシコの強豪選手とのスパーは大いに参考になったはずだ。

 ヘナロ・ガルシアとのV3戦が、いつの間にかあと1ヶ月ちょっとに迫っている。
 コンディションさえ整っていれば、間違いなく強敵だと思う。口の悪い連中から
 すれば(そんな人間がいるのかどうか知らないが)、長谷川はまだ、衰えた
 ウィラポンと、下田にすら完敗したマルチネスに勝っただけじゃないか、という
 ことになるのかもしれない。このガルシアに勝てば、長谷川はいよいよ本物、と
 認定されることになるのではないだろうか。


アマ13冠の佐藤がビー・タイト出場

 将来を嘱望されるアマチュアエリートが、こういった大会に出るのは珍しい。
 13冠というと凄いことのようだが、ミドル級は選手の層が極端に薄く、
 タイトルの獲得数だけで強さを測るのは難しい。ミドル級の選手が少ないのは
 プロも同じで、佐藤としては、早期の日本ランク入りを狙うには、どういう形でも
 いいから国内選手とコンスタントに試合をするのが得策だと考えたのかもしれない。

 正直言ってこの佐藤、試合ぶりはお世辞にもスマートとは言えず、少なくとも 
 現時点では、「世界」を狙える選手とは到底思えない。いずれにせよ、とにかく
 キャリアを積むことがまず大事だから、ビー・タイト出場も一つの方法ではある。 

ライカと女子ボクシング

2006年06月06日 | その他
元WIBA世界フェザ-級王者のライカが、去る5月20日、
韓国においてIFBA世界スーパー・ライト級王座の決定戦に
判定勝ちし、2階級制覇を達成した。

このニュース、さっきまで全く知らなかった。もちろん気をつけて
情報収集していればすぐに分かったはずだが、曲がりなりにも世界一を
決める戦いのニュースが、気をつけていないと入ってこないというのも
寂しい話だ。

一時期はテレビのドキュメンタリー番組などでも取り上げられていた
女子ボクシングだが、最近はあまり話題になっていないように思う。
少なくとも日本では、女子ボクシングはまだようやく色んなものが
整いつつある、といった段階なので、そんな内からあまり話題になっても
困りものではあるのだが・・・。

それと気になったのは、スーパー・ライトという階級だ。フェザー級
からすれば3階級も上である。フェザーでさえがっしりとした体型だった
ライカが3階級も上げたことに、健康管理上の問題はないのだろうか。
一般的に、階級が上がれば上がるほど、相手のパンチ力も上がるのだ。

今後はスーパー・フェザー級で再び王座を狙っていくというライカ。
日本の女子ボクシング界においては貴重なタレントであるだけに、
頑張ってもらいたいところだ。と同時に、運営側にはきちんとした
安全管理の対策などを願いたい。

日本vsメキシコ・3番勝負

2006年06月03日 | 国内試合(その他)
「日本・メキシコ対抗戦」と銘打たれたイベントが行われ、
帝拳ジムから出場した3選手が揃ってメキシコ選手に勝利を収めた。

昨今、あのオスカー・デラ・ホーヤ(世界6階級制覇王者)率いる
ゴールデン・ボーイ・プロモーションズが「ボクシングのワールドカップ」を
提唱し、手始めにメキシコとタイの対抗戦を開催しており、それに
倣ったものと思われる。個人競技であるボクシングで、国別とか
ジム別の対抗戦と言われても個人的にはピンと来ないが・・・。


それはともかく、今回の「日本vsメキシコ」、先陣を切ったのは
下田昭文。前の試合で瀬藤幹人に初めての黒星を喫し、同時に日本ランクも
失った下田にとって、これは再起戦でもある。その再起戦の相手が、何と
世界ランカー(15位)のヘラルド・マルチネス。マルチネスと言えば、
昨年長谷川穂積の持つWBC世界バンタム級王座に挑戦して惨敗した印象が
強いが、少なくとも肩書きだけを見れば、日本ランクにすら入っていない
下田よりも遥かに格上。下田が勝てば大金星ということになる。

ところが試合は、どちらが格上だか分からないほどの展開に終始する。
スピードで圧倒的に上回る下田が面白いようにダウンを量産し、第7ラウンド、
マルチネスの負傷により下田のTKO勝ちが告げられたのだ。長谷川戦でも
露呈した通り、マルチネスはどうやらスピードのある相手に弱いようだが、
それを差し引いても下田の出来は素晴らしかった。

元々ずば抜けた身体能力を持った選手なのだが、ちょっと相手を舐めてしまう
ところがあり、それが前回の敗戦の一因でもあったように思う。それが今回は、
敗戦で気を引き締めたのか、あるいは強豪が相手だったからか、立ち上がりから
これまでにない集中力を見せていた。ルーズだったガードを高く上げ、落ち着いて
相手を見ながら鋭いジャブを放つ。ダウンを奪った左のカウンターも見事だった。

あまりの一方的な内容に、連打すれば綺麗にケリをつけられたのに、
と物足りなささえ感じてしまったが、何しろ相手は世界ランカー、しかもこれは
再起戦なのだ。慎重になったとしても仕方ないだろう。

後半は少しマルチネスのパンチを浴びる場面もあり、本人は集中力が切れた
ことを反省していたが、フルラウンド集中力を保ち続けることは難しいものだ。
キャリアを積めば、力の抜きどころも自然と分かってきて、上手く試合を
運べるようになるのではないだろうか。また、そうなれば日本タイトルぐらいは
楽に取れる器だと思う。いよいよ才能が開花しつつある下田の今後が楽しみだ。


続いての登場はホルヘ・リナレス。ベネズエラ人ではあるが、帝拳ジムの
所属であることから、日本の選手としての出場となった。リナレスについては
もはや多くを語ることもないだろう。ほぼ間違いなく世界を獲れるであろう
逸材だ。日本での人気もかなり上がってきたようである。

ただ、今回のリナレスは心なしか顔色が悪いように思えた。そして試合の方も、
これといった見せ場もなく無難に判定勝ち。打たせずに打つというリナレスの
美点は充分に見られたが、KOを意識したのかやや力みの入ったパンチが多く、
いつものリナレスらしいキレがあまり感じられなかった。


そして最後は粟生隆寛。この粟生も、今さら説明するまでもない日本のホープ
である。この試合に快勝すれば、次はいよいよ日本タイトル挑戦か、とも
言われていたが、いつも飄々としている粟生が、試合後のリング上で悔しさの
あまり号泣するほどの苦しい戦いとなってしまった。

序盤はいつも通り、スピード溢れるパンチを放って好調さを印象づけた粟生だが、
中盤、強打者フランシスコ・ディアンソが急激に荒々しさを増すと、その攻撃を
止め切れず失速。フラフラと力なくリングを彷徨い、あわやダウンかと思われた
ほどの大ピンチに。その後は何とかリズムを立て直し、ディアンソのスタミナ
切れにも助けられて終盤に反撃、判定勝ちを収めた。

冷静に振り返ってみるとディアンソが明確に取ったラウンドはそれほど多くなく、
ポイントの面ではまず問題なく粟生が勝っていたわけだが、受けたダメージや
疲労度は、ほとんど五分に近かったかもしれない。印象的には薄氷の勝利だ。

確かに、打たれた時の脆さをさらけ出してしまった観のある粟生のショックは
大きいだろうが、観ていた側としては白熱の好勝負だと思えたし(粟生の試合の
中では、これまでで一番観客が熱くなっていたのではないだろうか)、あれだけの
ピンチを切り抜けて再び主導権を取り戻した粟生に、精神的な逞しさを感じた。
この苦戦は、相当にいい経験となるだろう。落胆する必要はないと思う。