具志堅用高氏が亀田興毅について語った記事が話題になっている。
内容は、亀田の力をある程度認めた上で、陣営の姿勢などを批判したもので、
「具志堅用高記念館」の掲示板などに、多くの賛同の声が寄せられている。
具志堅氏の意見は大筋において正論であるが、なぜこの時期に?という
思いも禁じ得ない。亀田の世界戦が決まっているこの時期である。
東日本ボクシング協会副会長という要職にある人間の発言としては
いささか配慮に欠けていると思う。
とはいえ具志堅氏はただ思ったことを言っただけで、配慮が欠けているのは
むしろこの記事を書いた記者の方ではないだろうか。思ったことを
思った時に言う傾向のある具志堅氏を引っ張り出し、自分の意見を
代弁させているだけのようにも見える。
これに対し、
協栄ジム側も反論しているが、こちらはあまりにも
大人気ない対応だと言わざるを得ない。確かに時期は悪かったものの、
具志堅氏の発言は、協栄ジム出身の世界王者として、あるいはボクシング人
としての愛ある助言だろう。それを、単なる誹謗中傷であるかのような
受け取り方をし、あろうことか絶縁宣言までしている。
選手が可愛いのは分かるが、これでは「亀田の批判は一切許さん」と
言っているようなものだ。業界に大きな影響力を持つ協栄ジムに、
「批判をしたら縁を切る」と言われては、大抵の関係者は尻込みして
しまうだろう。一種の言論統制とさえ思える。
「記念館」の書き込みには、感情的に亀田を嫌う人が、感情的に
具志堅氏を支持しただけのようなものも少なからずある。
ただ感情にまかせて物を言うだけでは、マスコミに踊らされ、盲目的に
亀田のファンになった人たちと大差ないのではないか。
亀田に関しては、一般人もマスコミ人も、どうも感情的になりがちだ。
ジャーナリストの
江川紹子氏が亀田の態度について批判していたようだが、
これも感情論といえば感情論だし、それに賛同する人の意見も感情論が多い。
ただ、それはそもそも亀田陣営が見る者の感情を逆撫でするような言動を
繰り返してきたことが原因なので、そういった意見が多いのも当然ではある。
しかし、ちょっと自分の思いを代弁してくれただけで、「全面的に支持します」だの
「やっぱり具志堅(江川)はいいこと言うな~」だの、彼らの過去の発言については
ほとんど検証もせず、一直線に賛同するのは危険な傾向だとも思う。
何かと礼儀知らずの言動が非難される亀田だが、彼も最低限の礼節は
持っていると思う。試合後には相手のコーナーへ歩み寄り、健闘を称える
挨拶をしようとする。しかし、それを引き離そうとする父親の姿を見れば、
誰が諸悪の根源なのかはすぐに分かる。
この19歳の少年は、幼い頃から絶対者たる父親の言いつけに従い、
世界王者という目標に向かってひたむきに努力しているだけだ。あるいは、
自分を大事に扱ってくれる周囲の人間の期待に応えようとしているだけだ。
個人的には、こんなことは全て、ひたすらくだらないと思う。
ボクサーなのに、ボクシング以外の話題が一人歩きしすぎている。
ボクシングのことなどほとんど誰も語らない。それが寂しい。
こんなくだらないことでしか盛り上がれないマスコミと、こんな
くだらないことでしか盛り上がれない読者(視聴者)、どちらも
ひたすらくだらない。周りのくだらない騒ぎが、これから世界に挑もうか
という前途ある若いボクサーの邪魔にならないことを祈るばかりだ。
亀田ファンでもアンチ亀田でもいい。もっとボクシングを見て欲しい。
一人でも多くの人に、ボクシングの面白さや奥深さに触れてもらいたい。