ボクシングレヴュー

「TM」はタイトルマッチ、階級名につく「S」はスーパー、「L」はライトの略です。

新井田続報

2006年08月30日 | その他
スポニチの記事より。

ケガのため9月2日に予定されていた5度目の防衛戦を延期したWBA世界ミニマム級
王者の新井田豊(27=横浜光)が29日、横浜・鶴見区の同ジムで会見。前WBC
世界同級王者の高山勝成(23=グリーンツダ)との対戦が、来年にずれ込む可能性が
強まった。新井田は左肋軟骨骨折で全治3カ月と診断されたことを明かし「高山さんと
ファンに申し訳ない。歩くのも痛い状態」とコルセット姿で唇をかみしめた。次戦に
ついて関会長は「すべては完治してから」と慎重。高山陣営がWBA本部に暫定王座の
設置を働きかける動きを見せていることも静観する構えだ。

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新井田といえば、かつては「達成感と腰痛」を理由に防衛戦も行わず王座を
返上し、そのまま引退してしまったという過去があり、当時は「わがまま」
などと叩かれたが、ずいぶん大人になったものだ。

そして気になるのは高山陣営の動き。仕方ないこととはいえ、また暫定王座が
立てられるのだろうか。

そういえば、正規の王者が出場不可となり、急遽暫定王座の決定戦に代わった
ケースが過去にはいくつかあった(ガンボア小泉vs安部悟、マルティン・
カスティーリョvs石原英康など)。今回も、タイトルマッチの中止ではなく
そのような形にすることも出来たかもしれないが、新たに出場選手を呼ぼうにも、
あまりに時間が足りなすぎたのだろう。

また、高山のトレーナーの中出氏がこの件に関してブログでコメントを出したが、
「試合が近く、通常なら軽い練習に留めることの多いこの時期に、肋骨を折るほどの
スパーリングをしていたということは、コンディションがあまり良くなかったのでは?」
という推測をしているのは興味深い。

徳山の引退防衛戦、来年4月に大毅と計画

2006年08月29日 | その他
ニッカンスポーツの記事より。

意外なところを突いてきたものだ。確かに大毅が世界ランクに入れば、
理論上は可能なカードではある。しかし、今後も徹底的に日本のジムの
選手との対戦を避けそうな亀田陣営が乗ってくるとは思えない。
つまり、実際には実現の可能性はほぼないと見ていいだろう。

ただ、長い間不透明だった徳山の「今後」に関する話がようやく
動き出したという点は喜ばしい。以前から引退の気持ちが強かった
徳山に対し、慰留を求めてきた金沢会長も、ついに「最後の試合」と
明言した。対戦者選びはともかく、今後の方向性について2者が
妥協点を見出せそうな情勢になってきたことにほっとした。

地味な存在ではあるが、徳山は日本のボクシング史上に残る名選手
であると個人的には思っている。ややダーティな手口も含め、
日本のリングにおいて、これほど「負けないテクニック」を極めた
選手も珍しいだろう。ぜひ綺麗な花道を用意してもらいたいものだ。

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(追記:8月30日)

この話について、徳山は自身のHPで「寝耳に水」とコメントしている。
会長の独断なのだろうか。両者の溝は、まだ埋まっていないということ
なのだろうか。

専門誌ボクシング・マガジンの今月発売号で、「ボクシング界は、もう僕を
必要とはしていないんでしょうね・・・」などと、自虐的な発言をしていた
徳山。これだけの実績を築いた選手の引き際が、ドロドロしたものに
なってしまうことだけは避けてもらいたいが・・・。

王者新井田が肋骨負傷、世界戦は延期

2006年08月27日 | その他
ボクシングの横浜光ジムは27日、所属するWBA世界ミニマム級王者の
新井田豊が、26日の練習中に肋骨(ろっこつ)を負傷したため、9月2日に
東京・後楽園ホールで予定されていた前WBC世界ミニマム級チャンピオンで、
同級5位の高山勝成(グリーンツダ)とのタイトルマッチを延期する、と発表した。
新たな日程は、けがの回復を待って決定する。

ニッカンスポーツの記事より。


非常に楽しみにしていた試合だけに、残念で仕方がない。
長谷川も新井田も負傷、イーグルも徳山も防衛戦の目処が立っていない。

亀田、ランダエタと再戦へ

2006年08月22日 | その他
記事はこちら
ヤフーのトップには「決定」と出ていた。本当だろうか。

何より驚いたのは、「10月」という時期だ。
減量に苦しみながらの世界王座獲得から、わずか2ヶ月。
体調面、精神面で問題はないのだろうか。

今回の苦闘の直接的な原因は、減量苦と緊張の2つだと思う。
緊張の理由が、異常なまでの注目度から来るプレッシャー
だけならまだいい。いずれはある程度慣れるだろうからだ。
しかし僕には、本当の強敵と戦っていないことによる
亀田自身の不安感が表面化した部分もあるように見えた。

亀田は本来、とても繊細なメンタルの持ち主だと思う。
これらの不安はほとんど解消されていないまま、しかも
注目度は今回より確実に上がるという状況で試合に
臨んでいいものだろうか。唯一のプラスは、一度世界戦を
経験したということぐらいだが、自分の弱い部分を
自分自身に対して曝け出してしまったあの試合が、
むしろ亀田にとってトラウマとなっている可能性もある。
楽観視できる要素がほとんどないのだ。

本来持っている能力を存分に出せれば、今回よりも明確な
差をつけて勝つことも不可能ではない。しかし、今の亀田に
最も足りないのは、「能力を出せる能力」である。大舞台で
過度に緊張することなく、練習した通りの力を出す能力だ。
これはもう、経験を重ねることで身に付けるしかないものだ。
こんな短い期間でそれが出来るとは思えないのである。

とはいえ、現実には亀田は世界チャンピオンであり、もはや
後戻り出来ない位置にまで来てしまった。であるならば、
これからは敗戦をも視野に入れた苦難の世界ロードを歩んで
いくしかないだろう。これからが本当の戦いなのだ。
ワイドショー的な話題作りではなく、一ボクサーとしての
真の強さを身に付けていってもらいたい。



訃報

2006年08月17日 | その他
元世界王者の訃報が二つあった。

渡辺二郎とも戦った、元WBC世界スーパー・フライ級王者の
パヤオ・プーンタラット氏。元五輪メダリストでもあり、わずか
9戦目で世界タイトルを獲得。それより驚いたのは、総じて試合数の
多いタイ人にしては珍しく、たった14戦で引退していることだ。

そして、元世界ミドル級王者のアル・ホスタック氏。
正直言って「ホスタックって誰?」という感じだったが、調べて
みると1930年代末に2度も世界王者になっている選手だった。
敗れはしたが、歴史的拳豪トニー・ゼールとも戦っている。

タイの試合を見る

2006年08月16日 | 海外試合(その他)
タイのボクシングを紹介するサイトがあるのだが、そこで見た
試合予定を頼りに、ストリーミング配信でタイのボクシングを観戦した。
パソコンのスペックが低いせいか、映像が紙芝居のような状態で
カクカクしていたが、何となく雰囲気は堪能できた。

ちなみに試合は以下の通り(結果は不正確)。元世界王者が
2人も登場するという、なかなか豪華な興行だった。


WBOアジアパシフィック バンタム級王座決定戦
 ラタナチャイ・シンワンチャー TKO4R ジョニー・リア(フィリピン)

 プラムウォンサック・ゴーギアットジム 判定6R シェルウィン・パロ(フィリピン)

 ガイチョン・ゴーギアットジム TKO3R終了 リトル・ローズマン(インドネシア)

 ラタナポン・ソーヴォラピン KO1R エド・レシレイ(インドネシア)


WBOアジアパシフィックというのは地域タイトルに過ぎないのに、
試合前のセレモニーがかなり長く、世界戦のような感じだった。
タイでは普通なのだろうか。

また、明後日には違うチャンネルでまた試合がある。こちらも
名の知れた選手が多く出場するようだ。興味のある方は、ご覧になって
みてはいかがだろうか。しかし、確かこの日のウィラポンの相手は、
日本の本田秀伸だったはずだが・・・流れたのだろうか。


2006.08.18 パトンタニー県 3チャンネル 日本時間17:30~ 生中継

ABCOスーパー・フライ級タイトルマッチ
 デーヴィッド・ナコンルアンプロモーションvsマービン・タンパス(フィリピン)

ABCOスーパー・フェザー級タイトルマッチ
 トーング・ポーチョークチャイvsジェイミー・バルセロナ(フィリピン)

 ウィラポン・ナコンルアンプロモーションvsアンソニー・マシアス(タンザニア)

 ナパーポン・ギティサックチョークチャイvs相手不明

暫定王座について

2006年08月15日 | その他
10月9日、東洋太平洋チャンピオンの嘉陽宗嗣が、WBC世界
ライト・フライ級暫定王者ワンディ・シンワンチャーに挑む
ことになった。日本のジムに所属する選手が出場した「暫定」の
冠が付くタイトルマッチは過去に10度あり、嘉陽が11例目となる。

チャンピオンが怪我などで長期にわたって防衛戦が行えなくなった
場合、世界タイトルマッチの不活性化を防ぐために設けられるのが
暫定王座だ。ランキング・ボクサーが不当に「待たされる」ことが
ないように、という大義もあるが、実のところは興行上の問題が大きい。
「世界王座」という冠で客を呼びたい興行主側と、認可料を取りたい
認定団体(WBA、WBCなど)側の利害が一致しているのだ。
よって昨今は、不可解とも思える暫定王座の設立もたまにある。

記憶に残っている中で最もひどい例は、99年5月のWBAスーパー・
フライ級の暫定王座決定戦だ。当時フライ級王者だったレオ・ガメスは、
通常の防衛戦を行う予定だった。しかし、プロモーターが認可料を渋り、
正規の王座よりも認可料の安い暫定王座に目を付け、突然1階級上の
スーパー・フライ級の暫定王座決定戦へと冠を変えたのだ。
スーパー・フライ級の王者はヘスス・ロハス。わずか2ヶ月前に日本で
防衛戦を行ったばかりだった。

また、同じ99年の2月には、畑山隆則が王座に就いていたWBA
スーパー・フェザー級でも、暫定王座が設けられた。畑山が初防衛戦を
行った、わずか1週間後のことである。しかもその決定戦で勝利した
アントニオ・エルナンデスは、畑山が2度目の防衛戦を行ったのと同じ
6月に、暫定王座の防衛戦に臨んでいるのだ。つまり、正規の王者が
アクティブに活動しているのに、ほぼ同時進行で暫定王者も動いていた
ことになる。これはどう考えてもおかしい。

最近では、WBCのライト・フライ級の動きが変だ。正規王座を掛けた
タイトルマッチは今年の2月と8月に行われているにもかかわらず、
7月に暫定王者ワンディが誕生しているのだ。また、一つ上のフライ級でも、
ついこの間まで正規王者のポンサクレック・シンワンチャーと暫定王者の
ホルヘ・アルセがそれぞれ防衛戦を行っていた時期があった。

暫定はあくまで「暫定」。出来るだけ早く、正規王者と戦ってタイトルを
統一してもらいたいものである。

ちなみに、僕が調べた限り、現在の主要4団体における暫定王者は
以下の通り。改めて見てみると、確かに正規王者が長い間防衛戦を
行っていないケースが多く、おおむね妥当性があるのではないだろうか。


WBC
LF ワンディ・シンワンチャー(正規王者:オマール・ニーニョ)
SF 川嶋勝重vsクリスチャン・ミハレスの勝者(正規王者:徳山昌守)
L  デビッド・ディアス(正規王者:ディエゴ・コラレス)

WBA
SB セレスティノ・カバイエロ(正規王者:ソムサク・シスチャチャワン)
LH シルビオ・ブランコ(正規王者:ファブリス・ティオーゾ)

IBF
L  フリオ・ディアス(正規王者:ヘスス・チャベス)

WBO
Fe ファン・マヌエル・マルケス(正規王者:スコット・ハリソン)
C  エンゾ・マッカネリ(正規王者:ジョニー・ネルソン)


日本Sフライ級TM 菊井徹平vs有永政幸

2006年08月14日 | 国内試合(日本・東洋タイトル)
ちょっと大袈裟だが、凄い物を見たという気分だ。菊井がこんなに
いいボクサーだとは思わなかった。

この日は、菊井にとっては初防衛戦。元東洋太平洋王者にして元日本
王者、世界ランクでも菊井より上位に位置する有永は、かなりの強敵と
見られていた。それがここまで一方的な展開になろうとは・・・。


1ラウンド開始のゴングが鳴ったその直後、菊井が右ストレートで
有永をぐらつかせる。慎重なテクニシャンとして知られる菊井の
まさかの速攻に、有永はすっかりペースを奪われてしまったようだ。

その後も、菊井は自信たっぷりに攻めに出る。かつては消極的な
ボクサーと評されていた菊井の、この変化はどういうわけだろう。
本当の理由は本人にしか分からないが、河野公平との再戦は、その
きっかけの一つではないだろうか。


河野に敗れて一時は日本ランク落ちを経験した菊井が、接近戦にも
進境を見せてリベンジを果たした一戦。元々アウトボクシングには
定評があったが、常に前に出てくる河野のプレッシャーに負けずに
打ち合いにも応じることで得た勝利だった。

そして今年4月、圧倒的不利を予想されていた、世界ランカー相澤国之との
日本王座決定戦。相澤の不調にも助けられ、番狂わせとも言える判定勝ちで
王座を獲得、同時に世界ランクも手にした。この試合も大きな自信に
なったことだろう。


2ラウンド以降も、歯車の狂った有永は空転し続ける。菊井の自在な動きに
翻弄されているせいもあるだろう。決して派手に足を使うわけではないが、
常に小刻みなステップを踏み、一か所に留まらない。地味ながら、効率的で
無駄な動作のないステップワークだ。

そして本来の持ち味であるジャブの巧さ。同じくジャブを最大の武器とする、
ゲスト解説の徳山昌守(WBC世界スーパー・フライ級王者)が思わず
「素晴らしい」と連呼するほどのジャブだ。真っ直ぐ伸び、威力もある。

ジャブが当たれば他のパンチも当たる。対照的に有永は、焦りから大きな
パンチを狙い、空振りを繰り返して更に手数が減るという悪循環。

菊井の的確なパンチを浴び、回を追うごとに有永の顔が腫れてくる。
それでも諦めず前に出る有永。これまでにも、序盤の劣勢を跳ね返し
逆転勝ちを収めた経験がある。後半に入ると、初回から飛ばしてきた
菊井にも若干の疲れが見える。圧倒的優位だからこそ、気の緩みが生じる
こともある。それを知っているからこそ、有永は攻め続けるのだろう。

しかし、菊井は決して崩れなかった。9ラウンド、左フックで有永を
ふらつかせた後に猛然と襲い掛かり、ダウン寸前にまで追い込んだ。
菊井はここまで20勝して4KO。もう少しパンチ力があれば、ここで
試合は終わっていたに違いない。

10ラウンドも前半はKOを狙って攻めた菊井だが、後半はセコンドの
指示通り、余裕を持ってリングをサークリングして試合終了のゴングを
聞いた。判定は3-0、ジャッジ3氏のうち2人がフルマーク(1ポイントも
失わないこと)を付けるほどの完璧な勝利だった。


ついこの間まで冴えない中堅ボクサーに過ぎなかった男が、世界にさえ
手が届きそうな位置まで来た。世界に挑むためにはあと少しの逞しさが
必要だろうが、今回の勝利を自信にして、また一つ強くなるはずだ。


日本ミニマム級王座決定戦 小熊坂諭vs三澤照夫

2006年08月12日 | 国内試合(日本・東洋タイトル)
高山勝成に敗れ王座を失った小熊坂だが、世界挑戦の決まった高山が
ベルトを返上したため、またすぐに返り咲きのチャンスが巡ってきた。
イーグル京和に完敗した世界戦を含め、小熊坂は今回で実に11度
連続のタイトルマッチ出場となった。

これは再戦である。前回は05年3月。小熊坂の持つ日本タイトルに
三澤が挑戦し、優位に試合を進めたものの9ラウンドにダウンを喫し、
僅差の判定を落としている。小熊坂は再浮上を賭け、三澤はリベンジを
期している。両者ともに、どうしても負けられない一戦だ。


小柄な体にみっちりと筋肉が詰め込まれている三澤が、初回から
やる気満々で出てくる。スピードもある。しかし、力みがあるためか
ややモーションが大きい。一方の小熊坂はさすがベテラン、いつもの
ように悠然と構えている。現在のランクは、三澤がWBA4位で小熊坂は
8位。しかし、小熊坂の方が立場は未だ上のように見える。

小熊坂は引いて構える「待ち」のタイプ。スピードがあり、スムーズな
ジャブや突然の大振りで牽制する。ただ、相変わらず手数が少ない。
常に前進する三澤の方も、クリーンヒットはあまり多くない。お互いに
相手のパンチに対する反応が速いせいもあるだろう。序盤はジャッジ
泣かせのラウンドが続く。

第3ラウンド、小熊坂が3度もローブローで注意を受ける。故意では
ないだろうが、こう再三注意されればボディは打ちにくくなるだろう。
三澤はただでさえ小柄な上に、がっちりガードを固めているため、
小熊坂はなかなか打てる場所を見つけられないでいるようにも見える。
採点上、なるべく優劣を付けなければならないとすれば、積極性に
勝る三澤のラウンドが多かったかもしれない。

5ラウンド、試合が動いた。三澤がジャブを省略しいきなりの右
ストレートを連発すれば、小熊坂も左フックをカウンターで当てて応戦。
6ラウンドは、小熊坂も積極的に前へ出る意思を見せる。ここまで
見せていなかった右アッパーがクリーンヒット。小熊坂が前に出てきた
ことで、三澤は少し距離が合わなくなったようだ。出鼻にカウンターを
合わされる場面が目立った。

7ラウンド、序盤から飛ばしてきた三澤には若干の疲れが見られるが、
それでも果敢に突進し続ける。ただ、クリーンヒットは少ない。
小熊坂の方もまた手数が減り、お互いに目立ったヒットは2~3発程度。
8ラウンドは空回りする三澤に対し、冷静にパンチを当てる小熊坂と
いう印象。そして9ラウンド、前回に続いてまたも小熊坂がダウンを
奪う。ガードの上から当たったパンチにも見えたが、それだけ強烈だった
ということだろう。待ちのスタイルを捨て、一気に襲い掛かる小熊坂。

最終ラウンド、小熊坂はKOを狙っているのか、ジリジリと前に出る。
三澤も負けじと前進。結局この前進は最後まで止まらなかった。


個人的には序盤の劣勢を跳ね返した小熊坂の勝ちと見たが、判定は
三者三様のドロー、王座は空位のままとなった。積極性はあったが
決定打に欠けた三澤、巧さは見せたが積極性では劣った小熊坂。確かに
評価が分かれてもおかしくない。あと少しの「何か」があれば勝てていた。
両者にとって、惜しい星を落としたといえる。


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なお、この日のセミファイナルも見応えがあった。

強打の日本ランカー真鍋圭太と、ノーランカー鈴木拓也がダウン応酬の
激闘を繰り広げ、最終10ラウンドに真鍋が2度目のダウンを奪い、
そのままKO勝ちを収めた。ただ、その直前にレフェリーストップ寸前に
まで追い込まれていたのは真鍋の方であり、ダウンから立ち上がってきた時の
鈴木の余力や、残り時間の少なさも考えれば、ストップは少し早いような
印象もあった。

しかし、相手は強打の真鍋である。もし試合が再開され、あと2~3発
鈴木がパンチを受けていれば、最悪の事態が起こったかもしれない。
そう考えると、レフェリーの判断にも妥当性はある。難しいところだ。

名城の近況

2006年08月11日 | その他
WBA世界スーパー・フライ級チャンピオン、名城信男に関する
ニュースが3つあったので、まとめて書いておく。

故・田中さんの墓前に勝利を報告

 昨年4月の日本タイトルマッチで名城に敗れた直後に亡くなった
 田中聖二さんの故郷・鳥取に出向き墓参した名城。リングでの
 悲しい事故が起きるたび、ボクシングファンとして複雑な気分になる。
 ボクシングは間違いなく危険な競技である。名城はどう折り合いを
 つけて行くのだろうか。

奈良県スポーツ特別功労賞を受賞
 
 13人目の受賞だそうだ。名城は奈良県では初めての世界王者。
 ちなみに、世界王者を都道府県別に記載したリストはこちら

 奈良県庁に問い合わせたところ、過去の受賞者が見られるページを教えてくれた。

  ○平成8年10月1日表彰
   田中順子  アトランタ五輪水泳(シンクロ) 銅メダル
   元淵幸   アトランタ五輪水泳(飛び込み) 6位入賞
   鈴木一二美 アトランタパラリンピック(ア-チェリ-) 金メダル

  ○平成10年3月25日表彰
   山口喜久  長野パラリンピック(アイスレッジスピードレ-ス) 銀・銅メダル

  ○平成14年7月18日表彰
   楢崎正剛   2002FIFAワ-ルドサッカ- ベスト16
   三宅陽子   ソルトレイク五輪(スノーボード競技) 8位入賞

  ○平成16年10月19日表彰
   宮崎奈美・森本さかえ・駒澤李佳・小森皆実
          アテネ五輪 (女子ホッケー)  8位入賞
   鈴木祐美子  アテネ五輪(カヌー) 決勝進出
   山本貴司   アテネ五輪水泳(200mバタフライ) 銀メダル
             〃     (男子メドレーリレー)銅メダル

東大寺で防衛プラン

 8戦目での世界挑戦といい、このジムの会長はなかなかのアイディアマン
 のようだ。ジムのHPを見ると、少年ボクサーの育成にも力を入れているようだ。
 さすがに東大寺で世界戦というのは難しいだろうが、こういった発想は面白い。
 なお、会長の枝川孝氏の本職は、住宅販売会社の社長。ボクシングは、
 30過ぎてから少しかじった程度だそうだ。

KO率とは

2006年08月08日 | その他
これまであまり深く考えたことはなかったが、
KO率というのは「全試合数に対するKO勝ちの数の
割合」なのだそうだ。

一般には「勝った試合の数に対するKO数の割合」を
KO率として宣伝することが多いように思う。その方が
数字が上がるからだ。

例えば、12戦9勝(9KO)3敗の選手がいたとすると、
正しいKO率は100%ではなく、75%になるわけだ。
もしくは「勝った試合のKO率が100%」という表現なら
間違ってはいないのだろう。

なぜこういう計算法を採るかというと、「勝った試合の
数に対するKO数の割合」で計算した場合、1勝1KO9敗の
選手のKO率も、9勝9KO1敗の選手のKO率も100%と
なってしまい、選手の強さをあまり反映できないからだと思う。
同じ10戦で、1勝しかしていない選手と9勝している選手の
KO率が同じでは、確かに何かおかしな感じがする。

これを「全試合数に対するKO勝ちの数の割合」で計算すれば、
前者のKO率は10%、後者が90%となり、数字の上にも
ある程度は強さが反映されることになる。もちろん、強さと
いうのは数字だけで測れるものではないのだが。


ちなみに、これで現役世界王者のKO率を計算してみると、
徳山昌守(36戦32勝8KO3敗1分)は約22%、
長谷川穂積(22戦20勝7KO2敗)が約32%、
新井田豊(24戦20勝8KO1敗3分)は約33%、
イーグル京和(17戦16勝6KO1敗)が約35%、
名城信男(8戦8勝5KO)は約62%、亀田興毅
(12戦12勝10KO)が約83%となる。

この数字を見ると、KO率が必ずしも「強さ」を反映
しているとは言い切れないことが分かるだろう。名城や亀田の
KO率が高いのは、まだ世界レベルでの試合経験が少ないからだ。
国内レベルでKO率が高くても、世界戦を戦うようになると
そう簡単には倒せなくなるケースが多い。

例えば、世界戦では判定勝ちの多かった鬼塚勝也や川島郭志だが、
世界戦に出場する前までのKO率は、鬼塚が18戦全勝16KOで
何と約89%、テクニシャンとして知られる川島も16戦13勝
12KOで、75%という高い数字を記録している。

また、総じてKO率の低い徳山だが、世界戦に限ってのKO率は
11戦10勝3KOで約27%と、微妙に上がっているのは
評価に値するのではないだろうか。また、長谷川の世界戦での
KO率が3戦3勝2KOで約67%というのも凄い。まだ世界戦を
行った数が少ないとはいえ、倒すことを意識した戦い方に変わって
きていることが、数字上でも明らかだ。


僕はどちらかというと、ひたすら攻めるファイターよりテクニシャンが
好きなのだが、彼らのKO率が低いのもその理由の一つかもしれない。
初めからあまりKO決着を期待しておらず、判定まで行くことを前提に
見るため、試合をじっくり堪能できる。反対に、KO率の高い選手が
KOを逃した場合、フラストレーションが溜まることが多い。

また、KOを期待していないからこそ、テクニシャンのKOシーンには
より鮮烈な印象が残っているのかもしれない。徳山が前王者のチョー・
インジュを返り討ちにした右ストレートや、長谷川が同じく前王者だった
ウィラポンを倒したカウンターは、ボクシングの持つ「芸術性」を
能弁に表現していた。

海外の試合結果

2006年08月07日 | 海外試合(世界タイトル)
4日、IBF世界ライト・フライ級王者のウリセス・ソリス(メキシコ)は、
同国人のオマール・サラドと引き分けて2度目の防衛に成功。


5日、WBO世界フライ級王者オマール・ナルバエス(アルゼンチン)は
指名挑戦者レクソン・フローレス(フィリピン)を地元に迎え、
大差判定勝ちで8度目の防衛に成功。

フライ級は強豪揃いだ。WBA王者がテクニシャンのロレンソ・パーラ
WBC王者が15度防衛中のポンサクレック・ウォンジョンカム
IBF王者が強打のビック・ダルチニアン


同じく5日、アメリカ・ネバダ州でマルケス兄弟が揃って登場。
兄のファン・マヌエル・マルケス(メキシコ)はWBO世界フェザー級の
暫定王座決定戦に出場し、テルドサック・ジャンデーン(タイ)に
7ラウンドTKO勝ち。暫定とはいえ久しぶりに王座を獲得した。

弟のラファエル・マルケスは、サイレンス・マブサ(南ア)と再戦し、
9ラウンド終了TKO勝ちでIBF世界バンタム級王座7度目の防衛。
バンタム級もこのラファエルを筆頭に、WBC王者の長谷川穂積
WBA王者のウラジミール・シドレンコ、WBO王者のジョニー・
ゴンサレス
と、錚々たる顔ぶれだ。ただ、マルケスは減量苦のためか
今回の防衛戦を最後に王座を返上する意向を表明している。


世界戦ではないが、ちょっと気になった試合を。

冒頭のソリスの世界戦と同じ興行で、元WBC世界ミニマム級王者の
ホセ・アントニオ・アギーレ(メキシコ)が、最終回にダウンしながら
判定勝ちでIBFのライト・フライ級ラテン王座を獲得。3連敗中だった
アギーレだが、これをきっかけに再浮上できるだろうか。

元世界王者同士の激突は、バーノン・フォレスト(アメリカ)が
アイク・クォーティ
(ガーナ)に判定勝ち。リカルド・マヨルガ
連敗した後ブランクを作っていたフォレストだが、これで再起3連勝。

日本でもその強さを見せつけた元WBA世界フェザー級王者の
フレディ・ノーウッドが、再起第2戦に判定勝ち。2000年9月に
デリック・ゲイナーに王座を奪われて以来、約6年振りにカムバック
したのが今年6月。もう36歳、失われた時間が惜しまれる。

WBA世界Sフェザー級TM ビセンテ・モスケラvsエドウィン・バレロ

2006年08月06日 | 海外試合(世界タイトル)
スポニチより速報。

日本でもその強打でファンの度肝を抜いたKOモンスター、バレロが、
10回KOで王座奪取。戦績を20戦全勝(20KO)とした。
あのアレクサンデル・ムニョスを生んだベネズエラから、またしても
全勝全KOの世界チャンピオンが誕生した。

ベネズエラからは、多種多様な選手が出てくる。「これぞベネズエラ
スタイル」というものは、あまりないように思う。柔軟なボディワークと
老獪な試合運びが印象に残るヘスス・ロハスと、4階級制覇を達成した
強打のレオ・ガメスの間には、特に共通点は見出せない。

また、好選手を多数輩出しているにもかかわらず、ベネズエラ人は
なぜか長期防衛することが少ない。90年代以降で5回以上防衛したのは、
アントニオ・セルメニョエロイ・ロハスぐらいのものではないだろうか。

さて、バレロはどこまで連続KO記録を伸ばすのだろうか。また、
再びの来日はあるのだろうか。この階級の東洋太平洋王者は
本望信人、日本王者は小堀佑介。どちらも素晴らしいボクサー
ではあるが、バレロ相手にはちょっと分が悪いか・・・。

日本S・ライト級TM 木村登勇vs小暮飛鴻

2006年08月05日 | 国内試合(日本・東洋タイトル)
もはや何も言うことはない。5年7ヶ月ぶり、2度目のタイトル挑戦に
燃える小暮の闘志を空転させ続け、一方的に殴りまくり7ラウンド終了
間際の連打でTKO。全く危なげなく7度目の防衛に成功した。

独特の野性的なキャラクターの小暮は、お揃いのTシャツを着た
たくさんの応援団からの声援を浴びて入場。組織だった応援のない
木村に対し、人気の面では上回っていたが、力の差は段違いだった。

木村は4試合連続のKO防衛。もう国内に敵はおらず、次のステップに
進むべきだろう。本人はあまり欲を見せず、日本タイトルの10度防衛を
目指すと語っていたが、強豪ひしめくスーパー・ライト級では世界挑戦が
非常に難しいことを知っての発言なのだろう。であるならば、まずは
東洋太平洋のベルトを狙って欲しい。

確かに完勝ではあったが、この日の木村の戦いぶりは、上を目指す人間
としての強烈なアピールに欠けていた。楽に戦い、楽に勝ってしまった
という印象なのだ。これだけの素質を持ちながら、もったいない話だ。