ボクシングレヴュー

「TM」はタイトルマッチ、階級名につく「S」はスーパー、「L」はライトの略です。

17位

2006年04月21日 | その他
WBC世界フライ級17位の中広大吾が、5月1日に王者ポンサクレック・
クラティンデーンジムに挑戦することになった。

WBC世界フェザー級王者、越本隆志の初防衛戦が決定。7月30日、
同級17位のルディ・ロペスの挑戦を受けるという。

あれ、ちょっと待って、17位? WBCの挑戦資格って15位からじゃ
なかったっけ・・・?

実はこれには例外があって、プロモーターがWBCに申し出て認められれば
15位以下のランカーでも世界タイトルに挑戦できるのだそうだ。
確かに海外でも、15位以下の選手を防衛戦に迎えるチャンピオンを時折
見かける。記憶にある中で最もひどかったのはエリック・モラレスだ。
あの超一流選手が、フェザー級王者時代に何とランク外の選手と防衛戦を
行っていたのである。

別にランクが低いからといって弱いとは限らないが、これでは何のための
ランキングなのか分からない。何より、あまりにもランキングの低い選手が
相手だと、見る方もしらけてしまう。ましてやこれで万が一負けでもしたら、
とんでもない恥を晒すことになる。

がっかりしたというのが正直なところだが、とにかく越本にはすっきりとした
勝利で初防衛を飾って欲しい。中広は・・・う~ん・・・。




東洋太平洋ヘビー級TM オケロ・ピーターvsボブ・ミロビッチ

2006年04月15日 | 国内試合(日本・東洋タイトル)
日本の緑ジムに所属するウガンダ人ボクサー、ピーター。
東洋無敵を誇り、王座を獲得した試合(決定戦)こそ判定だったものの、
ここまでの8度の防衛戦を全て早い回のKOで終わらせてきた。

判定に終わった決定戦も含め、東洋タイトル戦では全く危なげのない
戦いを続けてきたが(とはいえピーターはデビュー5戦目で当時の東洋太平洋
王者に挑戦し敗れており、2度目の挑戦で王座を獲得している)、今回は
相手の度重なるクリンチにも阻まれてKOを逃し、初めての判定防衛となった。
内容的にも全くの凡戦だった。

今回の相手ミロビッチとは過去にも防衛戦で戦い、楽勝(5ラウンドKO)
で片付けていた。それから年月が経ち、ミロビッチは40歳になった。
一方のピーターは、昨年世界3位の選手に挑んで善戦したことが認められ、
日本のジム所属のボクサーとして初めてヘビー級の15位以内に入った。
つまり世界挑戦の資格を得られたわけだ。ミロビッチの年齢と、ピーターの
躍進。それらを踏まえて考えれば、2度目の顔合わせとなった今回も、
ピーターが簡単にKOしてしまうだろうと予想された。

ところが試合はそんな予想に反し、まず序盤は40歳ミロビッチの果敢な
前進が目に付く展開に。ここまで17勝中16KOのピーターだが、本来
パンチ力よりもスピードやテクニックに優れた選手だ。そのピーターが、
得意のジャブを当てられない。反対にミロビッチの意外なほどシャープな
ジャブを貰ってしまう。相打ちでも、ピーターがのけぞる場面の方が目立つ。
ジャブの突き合いだけでなく、ミロビッチは接近戦もなかなかいい。
ピーターをロープに押し込み、ショートフックなどをヒットさせる。

ピーターが持ち前のハードパンチで攻勢を印象づけるラウンドもあるには
あったが、出鼻をくじかれた動揺もあるのだろう、チャンピオンらしからぬ
ラフな攻撃で、空振りも少なくない。前半は明らかにミロビッチのペースで
進んだ。ポイントも優勢だろう。まさかこんなことになるとは・・・。
ピーターのKO勝ちを期待し、また日本ではなかなか見られることのない
ヘビー級の迫力ある試合を堪能したいと詰め掛けた大勢の観客にも動揺が広がる。

しかし、ミロビッチの奮闘もここまでだった。前半は40歳とは思えない動きで
ピーターを翻弄していたが、後半に入ると極端に失速。ピーターの強打を受けて
クリンチを繰り返し、それがあまりに頻発されるため、2度に渡って減点された。
時折思い出したように反撃のパンチを繰り出すが、前半のようなパワーはもう
感じられない。ピーターの方にも疲労があり、クリンチを振りほどくだけの
力はなかった。そんな展開が結局最後まで続き、2度の減点と後半の攻勢点の
おかげでピーターが問題なく判定勝ちを収めた。

前半は大健闘したミロビッチだが、要するに地力の差を埋めるためにハイペースで
飛ばすことにしか勝機を見出せなかったのだ。ピーターにとっては大苦戦の内容
だったが、結局はその地力の差がはっきりと出てしまった。この日は前座の試合も
パッとせず、全体的に低調な興行だった。

辛うじて王座を守ったピーター。バッティングで目をカットしてしまうという
不測の事態にも見舞われてしまった。ここで怪我なく試合を終わらせていれば、
来月には本場ラスベガスで、あの世界的スーパースター、オスカー・デラ・
ホーヤの前座に出場できるかもしれないというビッグチャンスもあったのだが、
果たしてどうなるんだろうか。

視聴率

2006年04月12日 | その他
先日行われた長谷川穂積の防衛戦の視聴率、関東では
わずか9.9%だったという。本当だろうか。

亀田の試合が30%近くを叩き出したのに、あの
素晴らしい試合が9.9%とは・・・悲しいやら
腹立たしいやら、なんとも情けない気分である。

少なくともこの2試合を見比べる限り、長谷川が亀田に
実力の面で劣っているなどとは誰も思わないだろう。
内容の面白さも段違いである。にもかかわらずこの結果。

これはもう、明らかにPR度の差でしかない。これだけ優れた
ボクサーを、上手くアピールできない日本ボクシング界の
罪は重い。「最近ボクシング熱が高まってきた」などと
喜んでいる関係者もいるが、盛り上がっているのは
ボクシング人気ではなく、亀田人気だけだということが
これではっきりとした。


Sバンタム級10回戦 木村章司vsヨーダムロン・シンワンチャー

2006年04月08日 | 国内試合(その他)
木村が元世界王者を破り、世界ランク復帰を確実にした一戦。

無敗で日本王者になった木村だが、僕の中では印象の薄い選手だった。
巧いことは巧いのだろうが、攻撃面でのアピールに欠け、一言で言えば
「つまらない」試合をするというイメージしかない。

そんな木村が初防衛戦で福原力也にタイトルを奪われ、世界ランクも
失った。その再起戦の相手にヨーダムロンを選ぶとは、ずいぶん思い切った
マッチメークだ。ヨーダムロンには確かに一発の怖さはないが、木村が
過去に破ってきた元世界王者たち(セーン・ソー・プルンチット、
ヨックタイ・シスオー)のようなロートルではなく、今も王座返り咲きに
意欲を見せる現役バリバリの世界ランカー(WBA4位)なのだ。

ヨーダムロンは石井広三をKOして王座に就いたヨベル・オルテガを
破って世界王者となり、初防衛戦で佐藤修にKO負けしてタイトルを
失った。1年半ほど前にはマヤル・モンシプールに挑戦し敗れている。
しかし負けたのはその2試合のみ、つまり世界戦以外では負けていない。


試合は、地味ではあるが見応えのあるものになった。本来フットワークを
多用するタイプの木村がほとんど下がらない。ファイターに近いスタイルだ。
長年慣れ親しんだスタイルを変えるのは容易なことではない。もし変えるに
しても、普通なら弱い相手で試しながら煮詰めていくものだ。日本王座も
世界ランクも失った木村は、「今のままじゃいけない」と危機感を抱いた
のだろう。この大一番でのスタイル改造に、木村の決意が感じられた。

とはいえ元々慎重派の木村だから、ただのがむしゃらなファイターになった
わけではない。ガッチリとガードを固め、ディフェンスにも細心の注意を
払った上で、多彩でスピードのあるパンチを放っていく。この辺り、同じ
花形ジムの先輩である星野敬太郎(元WBA世界ミニマム級王者)に通ずる
戦い振りだ。

中間距離でのフェイントの掛け合いやジャブの突き合い、接近戦での
パンチの交換。お互いディフェンスが良く、またお互い強打者ではないため、
どちらかがダウン寸前のピンチに陥るようなエキサイティングな場面は
見られないが、非常にレベルの高い攻防が繰り広げられる。

優劣の微妙なラウンドも多かったが、手数の上でもクリーンヒットの上でも、
若干木村が上回っている。特にボディブローの冴えがいい。後半に入ると
ヨーダムロンが焦り始め、KO狙いでラフに攻め立てる。その中で露骨な
ローブローが増え、2度の減点もあった。相当追い込まれている証拠だ。

結局、多くのラウンドで(ほんの少しの差ではあるが)優位に試合を進めて
いた木村が、文句ない判定勝ちを収めた。ディフェンス面での巧さと攻撃面での
積極性をミックスさせた木村のニュー・スタイルは、少なくともこの試合では
非常によく機能していた。


本来クレバーな面を持つ木村であるから、例えばモンシプールのような
猛ファイター相手に今回のような戦法を一貫して取るつもりはないだろうが、
戦い方の幅が広がったのは間違いない。そして何より、負けたことで逆に
精神的に強くなったようだ。無敗の頃はむしろ「負けないこと」を優先する
ような印象の薄い試合振りだったが、これで一皮むけるのではないかと思う。


大場浩平vs新保力

2006年04月08日 | 国内試合(その他)
今年2月、元世界王者マルコム・ツニャカオの持つ東洋太平洋
バンタム級王座に挑戦して引き分けに終わった大場が、早くも
再起戦を行った。

異常に早いペースだが、それだけツニャカオ戦のダメージが
少なかったということだろう。ドローだったとはいえ、それは
明らかな地元判定による採点で、実際には完敗だった。
ツニャカオと12ラウンド戦って「敗れ」ながら、ほぼノーダメージ
でいられるボクサーが日本にいるとは驚きである。

この再起戦の舞台は後楽園ホール、相手はノーランカーの新保。
WBCのスーパー・フライ級15位にランクされる大場としては、
格下を鮮やかにKOしたい、あるいは東京の目の肥えたお客さんに
自分のいい所を見てもらいたい、といった思いがあったのだろうか。
この日の大場は力みがちで、勝ち急いでいるようにも見えた。
ラウンド開始のゴングが鳴る度にリング中央に駆け出していくなど、
普段の大場からは考えられないことだ。

結果は、1度のダウンも奪えず判定勝ち。パンチに力みがあるせいか
倒すことは出来なかったが、体調自体は悪くなかったようで、いつもの
スピード溢れる連打は健在だった。やはり大場のセンスは並ではない。

KO出来なかった理由はもう一つ、ノーランカーの新保の頑張りだ。
世界ランカーの大場に対して全く臆することなく、果敢に前進して
手を出していく。打たれ強さもなかなかのものだ。終盤は大場に
打ちまくられて危険な瞬間もあったが、何とか最終ラウンドまで
耐え切った。

判定は問題なく大場。倒せなかったとはいえ、圧巻のスピード、華麗な
身のこなしで観客を魅了し、また新保の奮闘もあって全く飽きの来ない
10ラウンズだった。







2006年04月07日 | その他
夢を見た。

徳山昌守と名城信男の試合があったが、見るのを忘れていた。
気付いたときには30分ぐらい過ぎていた。留守録はしていたので、
ほっとしながらテレビをつけたら何故か徳山が秋野暢子と
エキシビジョン・マッチを行っていた。「名城との試合は
もう終わってしまったんだなあ、KOか、徳山もやるなあ」と
思いながら見ていたら、何と秋野暢子が徳山をKOしてしまった。
徳山は大の字に横たわり、起き上がれなくなっていた。

そして放送の最後にアナウンサーが、徳山はKOではなく
負傷判定で名城に勝ったと言っていた。なんだ負傷判定かあ、と
がっかりした。そんな夢だった。

ホルヘ・リナレスvsサオヒン・シリタイコンドー

2006年04月01日 | 国内試合(その他)
満員とまでは行かないが、かなりのお客さんが入っていた。
ベネズエラ人とタイ人の対戦、しかもノンタイトル。
その試合にこれだけの人が集まったことにまず驚き、そして
嬉しくもなった。リナレスのハイレベルなボクシングを
見たいという人は、確実に増えているようだ。

相手も噛ませ犬なんかではない。サオヒンは2度の世界挑戦を
経験し(いずれも判定負け)、現在はアジアの地域タイトルである
PABAのフェザー級王者。これが20戦目のリナレスに対し、
サオヒンは実に3倍の60戦以上というキャリアを誇る歴戦の雄だ。
アジア圏においては、間違いなく「強豪」と呼べる選手である。
この実力者を、「ベネズエラのゴールデンボーイ」リナレスが
どう攻略するのか。その興味が、これだけの観客を集めたとも言える。


既にWBAでもWBCでも上位にランクされ、いつ世界戦が
決まってもおかしくない状況にあるリナレスとしては、ここで
印象的な勝ち方をして、評価も人気も上げたいところだ。

試合の方は、リナレスが終始危なげない戦い振りで文句のない
判定勝ちを収め、世界レベルの力量を示した。その「危なげない
戦い振り」にやや食い足りなさが残ったが、「打たせずに打つ」
ことがボクシングの理想であるならば、危険な相手を前に徹底して
リスクを避けた今回のリナレスの戦法は間違っていない。

タフなサオヒンをぐらつかせるシーンが何度かあったが、決して
深追いはしなかった。サオヒンはかつて名古屋で石井広三と対戦し
判定で敗れたが、前半にダウンを奪われて劣勢になりながらも
終盤に反撃して逆転KO勝ち寸前まで行ったこともある。

そのことをリナレスが知っていたかどうかは分からないが、実際に
相対してみてサオヒンの強さを感じたのだろう。またリナレス自身にも、
7ラウンド辺りから足に痛みを感じるというアクシデントがあった
ようだ。そういった要素を鑑みて、まずは勝つことに専念したのだと
思われる。


これで20連勝無敗となったリナレス。しかし陣営は世界挑戦を焦らず、
次回もノンタイトル戦を行うようだ。