これは僕だけなのかどうか分からないが、ボクシングというものは、
好きになればなるほど見るのが辛くなる。自分が応援する選手の試合が
間近に迫ってくると、楽しみだという気持ちと、見るのが怖いという
気持ちの間で胸が痛む。
これはボクシングという競技の過酷さから来るものだろう。サッカーや
野球なら、こんな気持ちにはならないのではないだろうか。今の時代に
おいて、ボクシングが今いちメジャーになりきれないのは、そういう
ところにも原因があるのかもしれない。シリアスすぎるのだ。
しかし、そのシリアスさがあるからこそ、いつの時代もボクシングには
根強いファンがつき、ここまで生き残ってこれたのだとも思う。
「昔に比べて試合がつまらなくなったから、ボクシング人気は低迷して
いるのだ・・・」オールドファンがよく言うセリフだ。しかし昔だって
泥試合はあったはずだし、要は素晴らしい試合だけが記憶に残っているから
そう感じるに過ぎないのだと思う。僕は、こういうことを言って昔を美化する
オヤジにだけはなりたくない、と思う。
つまり、シリアスなものや分かりにくいものを遠ざける傾向にある現代の
メディアの風潮に、ボクシングの持つ生真面目さがそぐわないのだろう。
・WBC世界ミニマム級TM ホセ・アントニオ・アギーレvs星野敬太郎
初めに行われた星野の試合は、終盤の星野の打たれ様が壮絶すぎて、
直視に耐えないほどだった。元々ガードの甘い選手ならまだ心の準備も
出来るが、ディフェンスの巧みな星野があれほど打たれるとは・・・。
確かに王者アギーレの攻撃力を考えれば、星野のKO負けは予想できる
範囲内のことではあった。しかしそれを実際に目の当たりにした時の
ショックは、予想を越えていた。その終盤が訪れるまでは星野もよく戦い、
アギーレをピンチに陥れる場面もあったのだが、それら全てを帳消しに
するほどの悲壮なシーンだった。
普段は飄々とした人柄、ボクシングスタイルで知られる星野だけに、余計に
それがショッキングに映ったのだろう。ボクシングの恐ろしさを、改めて
思い知らされた一戦だった。
星野は敗れる度に何度も引退を宣言し、またそれを撤回して再起を繰り返した。
世界戦では初のKO負けとなった今回は、果たしてどうだろうか。30代にして
6度の世界戦を経験し、その結果は2勝4敗。結局ガンボア小泉にしか勝って
いないという事実もあるわけだが、どの試合でも星野は、卓越した技術を我々に
見せてくれた。今は静かにその動向を見守りたいと思う。
・WBC世界Sフライ級TM 徳山昌守vs川嶋勝重
続く徳山の試合にもハラハラさせられた。楽勝を予想していたが、挑戦者・
川嶋の狂ったような突進に、心臓が激しく動悸した。冷静に見れば、大ピンチに
見えた序盤も徳山が的確にパンチを当て続けていたし、後半はスタミナ切れと
ダメージで失速した川嶋を、老獪なクリンチワークで封じ込めていたのだが。
クリンチが多かったことでやや凡戦という印象になってしまったが、気合いが
入りすぎて空回りする挑戦者に対して、チャンピオン徳山がキャリアと技術の
差を見せ付けて手堅く王座を守った、そんな内容だったように思う。しかし
川嶋のその尋常ではない気合いが、試合をスリリングにしていたのも事実だ。
これで徳山は、実に7度もの防衛を果たしたことになる。新聞等でさかんに
報道された通り、日本のジム所属の世界チャンピオンとしては、具志堅用高の
13度、勇利アルバチャコフの9度に続く、歴代3位の記録だ。
確かに挑戦者の「質」について疑問の声を投げかけられる試合もあったが、
徳山が「対戦相手の良さを殺す」ことを持ち味としている点は、差し引いて
考えなければならないと思う。つまり、徳山と対戦した者は、実際より少し
弱く見えてしまうのである。
また徳山は、強豪ペニャロサとの2戦を通じて、決してスマートとまでは
行かないながらも、突貫ファイターへの対処法を会得したようだ。その経験が
今回の川嶋戦にも生かされていたように思う。後半は、歯を食いしばって攻め込む
川嶋に対し、驚くほど冷静な徳山の表情が印象的だった。
果たして、このダブル世界戦のビデオを見返すことはあるのだろうか。
それは分からない。ただ、一つだけ言えるのは、僕はこの先もまだまだ
ボクシングを見続けていくのだろう、ということだ。
シリアス過ぎるものを直視したくない、そんな気分の時もある。
しかしその切迫感からは逃れることが出来ない。ボクシングとはある意味で、
見る側にもそういった切迫感を強いるスポーツでもあるのだ。
好きになればなるほど見るのが辛くなる。自分が応援する選手の試合が
間近に迫ってくると、楽しみだという気持ちと、見るのが怖いという
気持ちの間で胸が痛む。
これはボクシングという競技の過酷さから来るものだろう。サッカーや
野球なら、こんな気持ちにはならないのではないだろうか。今の時代に
おいて、ボクシングが今いちメジャーになりきれないのは、そういう
ところにも原因があるのかもしれない。シリアスすぎるのだ。
しかし、そのシリアスさがあるからこそ、いつの時代もボクシングには
根強いファンがつき、ここまで生き残ってこれたのだとも思う。
「昔に比べて試合がつまらなくなったから、ボクシング人気は低迷して
いるのだ・・・」オールドファンがよく言うセリフだ。しかし昔だって
泥試合はあったはずだし、要は素晴らしい試合だけが記憶に残っているから
そう感じるに過ぎないのだと思う。僕は、こういうことを言って昔を美化する
オヤジにだけはなりたくない、と思う。
つまり、シリアスなものや分かりにくいものを遠ざける傾向にある現代の
メディアの風潮に、ボクシングの持つ生真面目さがそぐわないのだろう。
・WBC世界ミニマム級TM ホセ・アントニオ・アギーレvs星野敬太郎
初めに行われた星野の試合は、終盤の星野の打たれ様が壮絶すぎて、
直視に耐えないほどだった。元々ガードの甘い選手ならまだ心の準備も
出来るが、ディフェンスの巧みな星野があれほど打たれるとは・・・。
確かに王者アギーレの攻撃力を考えれば、星野のKO負けは予想できる
範囲内のことではあった。しかしそれを実際に目の当たりにした時の
ショックは、予想を越えていた。その終盤が訪れるまでは星野もよく戦い、
アギーレをピンチに陥れる場面もあったのだが、それら全てを帳消しに
するほどの悲壮なシーンだった。
普段は飄々とした人柄、ボクシングスタイルで知られる星野だけに、余計に
それがショッキングに映ったのだろう。ボクシングの恐ろしさを、改めて
思い知らされた一戦だった。
星野は敗れる度に何度も引退を宣言し、またそれを撤回して再起を繰り返した。
世界戦では初のKO負けとなった今回は、果たしてどうだろうか。30代にして
6度の世界戦を経験し、その結果は2勝4敗。結局ガンボア小泉にしか勝って
いないという事実もあるわけだが、どの試合でも星野は、卓越した技術を我々に
見せてくれた。今は静かにその動向を見守りたいと思う。
・WBC世界Sフライ級TM 徳山昌守vs川嶋勝重
続く徳山の試合にもハラハラさせられた。楽勝を予想していたが、挑戦者・
川嶋の狂ったような突進に、心臓が激しく動悸した。冷静に見れば、大ピンチに
見えた序盤も徳山が的確にパンチを当て続けていたし、後半はスタミナ切れと
ダメージで失速した川嶋を、老獪なクリンチワークで封じ込めていたのだが。
クリンチが多かったことでやや凡戦という印象になってしまったが、気合いが
入りすぎて空回りする挑戦者に対して、チャンピオン徳山がキャリアと技術の
差を見せ付けて手堅く王座を守った、そんな内容だったように思う。しかし
川嶋のその尋常ではない気合いが、試合をスリリングにしていたのも事実だ。
これで徳山は、実に7度もの防衛を果たしたことになる。新聞等でさかんに
報道された通り、日本のジム所属の世界チャンピオンとしては、具志堅用高の
13度、勇利アルバチャコフの9度に続く、歴代3位の記録だ。
確かに挑戦者の「質」について疑問の声を投げかけられる試合もあったが、
徳山が「対戦相手の良さを殺す」ことを持ち味としている点は、差し引いて
考えなければならないと思う。つまり、徳山と対戦した者は、実際より少し
弱く見えてしまうのである。
また徳山は、強豪ペニャロサとの2戦を通じて、決してスマートとまでは
行かないながらも、突貫ファイターへの対処法を会得したようだ。その経験が
今回の川嶋戦にも生かされていたように思う。後半は、歯を食いしばって攻め込む
川嶋に対し、驚くほど冷静な徳山の表情が印象的だった。
果たして、このダブル世界戦のビデオを見返すことはあるのだろうか。
それは分からない。ただ、一つだけ言えるのは、僕はこの先もまだまだ
ボクシングを見続けていくのだろう、ということだ。
シリアス過ぎるものを直視したくない、そんな気分の時もある。
しかしその切迫感からは逃れることが出来ない。ボクシングとはある意味で、
見る側にもそういった切迫感を強いるスポーツでもあるのだ。