ボクシングレヴュー

「TM」はタイトルマッチ、階級名につく「S」はスーパー、「L」はライトの略です。

東洋太平洋Lヘビー級TM 西澤ヨシノリvsヒース・ステントン

2007年01月30日 | 国内試合(日本・東洋タイトル)
「中年の星」としてテレビなどで度々取り上げられ、ボクシングファン以外にも
その名を知られる41歳の西澤だったが、大差の判定(117-113、118-111、
118-110)で初防衛戦に敗れ、王座を失った。

この両者は過去にも2度対戦経験がある。いずれも東洋太平洋スーパー・
ミドル級の王座決定戦で、一度は引き分け、2度目は西澤が2-1の判定で
際どく勝利している。それはもう6年近く前の話で、現在31歳のステントンと
41歳の西澤の体力の差を考えると、長丁場の勝負では分が悪いだろうとは思っていた。

そして西澤はタイトルを失っただけではなく、引退の危機にも直面している。
日本ではボクサーの「定年」は37歳と決められているが、タイトル保持者や
世界挑戦経験のある選手などは、特例として37歳を過ぎても現役であることが
許されている。しかし、西澤の場合は2004年から05年にかけて3連敗
喫した時に一度JBCから引退勧告の話があり、それ以降は「試合内容が悪ければ
引退」というのがほぼ決定事項のように言われていた。

当然、今回の敗戦もそれに当たるだろう。JBCは、週明けにも引退勧告をする
可能性があるという。果たして西澤の今後はどうなるのだろうか。

WBAミニマム級、統一戦は4・7

2007年01月29日 | その他
ついに決定した。あの薬師寺保栄と辰吉丈一郎の激闘(WBCバンタム級)
以来、史上2度目となる日本の選手同士の王座統一戦。WBAミニマム級の
正規王者・新井田豊と、暫定王者・高山勝成が対戦する。

この両者は昨年秋に、新井田がチャンピオン、高山が挑戦者として戦う
予定だったが、新井田の負傷により延期。その間に高山が暫定王座決定戦に
出場、当時1位だったカルロス・メロに圧勝して暫定王者となっている。

両者の共通点は防御勘の良さとスピード。ただしそのスピードの質が違う。
出入りのスピード、つまり俊敏なフットワークが持ち味の高山に対し、
新井田はのらりくらりとした動きから、唐突にトップギアに入ったかの
ように放つパンチのスピードが凄い。

また、新井田は後半にスタミナ切れを起こす傾向があるが、高山は
12ラウンド「走り切る」豊富なスタミナを誇る。しかしパンチ力では新井田が
上なので、前半から高山のボディを攻めておけば、後半のスタミナの残量を
五分に持っていけるかもしれない。

新井田が高山の素早い動きに翻弄され続けるようだと、元より手数の少ない
新井田の判定負けの可能性が高い。逆に高山を捉える場面が多ければ、
徐々に弱らせてのKO勝ちもあり得るだろう。

両者の一般的な知名度が低く、最軽量のミニマム級ということもあってか
会場は後楽園ホール。世界王座の統一戦というビッグイベントを行う場としては、
やはり小さいと言わざるを得ない。しかし早くも両者が舌戦を繰り広げているため、
各スポーツ紙の食い付きはなかなかいいようだ。

しかも、この試合の勝者は、WBC王者・イーグル京和との両団体統一戦に
乗り出す可能性がある。そういった意味でも注目されるべき一戦だ。

いずれにせよ、4月7日はハイレベルな技術戦が期待できるだろう。
一度延期され、高山が暫定王座決定戦で強さをアピールしたことで、
かえって以前よりも楽しみが増した感じだ。

王座返上の話

2007年01月25日 | その他
1週間ほど前だったか、WBA世界ライト・フライ級王者
亀田興毅が王座を返上し、フライ級に上がるという報道があった。
実際にいつ返上するのかは分からないが、返上することは確かなようだ。

日本のジムに所属する選手が、世界王座を返上(負けて王座を
失うのではなく、自主的に王座から降りること)する例は過去に
ほとんどなく、チャンピオンのまま73年に事故で死亡した
大場政夫を例外とすれば、01年の新井田豊が最初であった。

新井田は王座獲得のわずか2ヵ月後に引退を表明して王座を返上、
ボクシングファンを驚かせたが(恐らくこんな例は世界的にも
珍しいだろう)、2年後に再起、再び王座を獲得して現在に至っている。

2例目は昨年末、バンタム級転向(というより長谷川穂積への挑戦)を
理由に王座を返上した徳山昌守。これは記憶に新しいだろう。
よって亀田が正式に返上すれば、日本ボクシング史上3度目のケースとなる。

ちなみに海外では、スター選手などが複数階級制覇を狙って王座を
返上する例は決して珍しくない。

そしてこれはあくまで「可能性がある」というレベルの話だが、
現在の日本のエース、長谷川穂積までもが王座返上を考えているという。
考えてみれば、防衛回数を伸ばすことだけが名選手の証ではない。
脂の乗った時期に王座を返上し、新たなチャレンジの道を模索するのは
悪いことではない。そういう選択肢があってもいいだろう。


反対に、日本王座や東洋王座を返上する選手は少なくない。
理由は様々だが、「世界挑戦の準備に本腰を入れる」というのが
一番多いかもしれない。

今月20日、日本と東洋のフライ級王座を同時保持していた内藤大助が、
東洋王座のみを返上した。2つもベルトを持っていると、それぞれに
防衛戦の相手を考えたりしなければならない場合も多く、確かに大変だろう。

そして24日、大曲輝斉が日本ウェルター級王座を返上
大曲は当初、チャンピオン・カーニバルで牛若丸あきべぇの挑戦を
受けることになっていたが、いつの間にか湯場忠志に相手が変更。
しまいにはチャンピオンの大曲がベルト返上し、慌しいことこの上ない。

ボクシング協会会長選

2007年01月24日 | 国内試合(日本・東洋タイトル)
ここ数日、「日本ボクシング協会」の文字がスポーツ紙を
賑わせている。日本ボクシング協会と東日本ボクシング協会が、
任期満了のためそれぞれ会長選を行うのだが、それが何やら
揉めているらしいのだ。

様々な記事が出ているため、現時点では正確な状況を掴みにくいが、
取りあえず関連記事をまとめてみる。

<ニッカンスポーツ>
・ボクシング界で会長選巡り場外乱闘ぼっ発
・輪島氏と具志堅氏タッグで勢力拡大目指す
・輪島氏が会長選に負けても「輪島派」結成
・金平会長ら輪島氏の法人化発言に疑問呈す

<サンケイスポーツ>
・輪島功一氏、日本プロボクシング協会会長選に立候補
・会長選立候補の原田現会長「もう3年がんばりたい」

<スポーツ報知>
・輪島氏が日本プロボクシング協会会長へ立候補
・原田、輪島両氏が会長選に…日本プロボクシング協会
・輪島氏vs原田氏 史上初選挙…日本プロボクシング協会会長戦
 (「史上初」は間違い。80年に金平正紀氏が選挙で選ばれている)
・具志堅氏VS大橋氏“元世界王者”一騎打ち…東日本ボクシング協会会長選

<デイリースポーツ>
・泥沼化…輪島氏が原田氏を痛烈批判


かなりの量だ。それほどまでに人は「泥沼の争い」が
好きなのだろうか・・・。リング外の動きに興味のない僕は、
未だに協会がどういう仕事をしているのかもよく知らない。

混同されやすいが、日本プロボクシング協会JBC
(日本ボクシングコミッション)
は別のものだ。
ウィキペディアで調べてみると、その情報量には
極端な差がある。また、あろうことか協会の
ホームページは現在閉鎖中であり、ますますその
業務内容は掴みにくい。

基本的には、ボクシングジムの寄り合いのようなもので
あるらしい。以前どこかにも書いたかもしれないが、
プロ用のボクシングジムを開こうと思ったら、協会に
かなりの額の加盟金を納めなければならない。

とにかく会長選に関しては、最後はスポーツマンらしく
遺恨を残さずまとまって欲しいものだ。


オレンジ疑惑

2007年01月24日 | その他
ネットで日本ボクシング協会の歴史を調べていたら、
偶然面白い文書を見つけた。有名な「オレンジ疑惑」の
問題が、当時の国会で取り上げられた際の議事録だ。
いかに大きな騒ぎになっていたかが窺い知れる。

結局この疑惑は疑惑のまま終わったわけだが、それとは
別に、この議事録で色々と指摘されているボクシング界の
悪しき因習の多くは、4半世紀経った今でもあまり改善
されていないようにも思える。

ボリュームのある文書なので見づらいが、ぜひ一読をお勧めしたい。
ボクシングに関する話題は、全体の半分より少し上の箇所
から始まっている。

坂本の記事

2007年01月22日 | その他
「ナンバー」の坂本博之の記事を読んだ。
他に興味のある記事もなかったし、最初は立ち読みで
済ませようと思ったが、読んでいる内に震えが来て、
思わず買ってしまった。

坂本の壮絶な生い立ちにについては今までにも
散々書かれてきたが、最近の坂本のプライベートな
部分についてはこれまであまり語られていなかった。
まさか2度も子供を失っているとは・・・神様は一体、
坂本にどれだけの苦悩を与えれば気が済むのだろうか。

しかし神様は、その人が乗り越えられるだけの壁しか
与えないのだという話もある。人生で初めて、もうダメかも
しれないと思ったという坂本だったが、今は何とかそれも
乗り越え、前向きな気持ちになっているようだ。

僕などが気軽に感想を言える立場ではない。機会があれば、
ぜひ読んでいただきたい。

東洋太平洋バンタム級TM マルコム・ツニャカオvsロリー松下

2007年01月13日 | 国内試合(日本・東洋タイトル)
速報。

ツニャカオが、2ラウンドにダウンを奪われた上に
10ラウンド負傷判定負けでまさかの王座陥落。
元WBC世界フライ級王者のツニャカオは、再び
世界王座に返り咲くことを夢見ていたわけだが、
この敗戦で大きく後退してしまうことになるだろう。

前回のノンタイトル戦を見て、どうも覇気がないなあと
思ったが、それでも負けることなど考えもしなかった。
なかなか訪れない世界のチャンス。ツニャカオの
モチベーションは切れてしまったのだろうか。

そもそもロリーって誰?初めて聞く名前だなあ・・・と
思っていたら、フィリピンから日本のジムにやってきた
選手で、本名ロリー・ルナス。約4年前に、小松則幸の
持っていた東洋太平洋フライ級王座に挑戦して2ラウンド
TKO負けしたルナスだったのだ。

同国人の元世界王者を破る殊勲の星を挙げたルナス、いや松下。
テレビ放送(スカパー)はもう少し後だが、見るのが楽しみだ。

坂本博之vsカノーンスック・シットジャープライ

2007年01月06日 | 国内試合(その他)
衝撃の引退発表から1ヶ月あまり、ついに坂本博之が最後の
リングに上がった。後楽園ホールはまさに超満員、熱気に溢れている。
世界王座に手が届かなかった選手のラストファイトとしては、
この熱い応援ぶりは極めて異例。坂本の存在感の大きさが分かる。

「ラストファイト」と銘打たれた試合では通常、弱い相手を
連れてきて豪快に倒して終わるというイメージがある。しかし
この相手はどうだろう。タイ国のランキング1位。まだ17歳と若く、
動きもいい。いかにも硬そうなパンチを、次々とヒットさせていく。

ただ、相手の出来の良さ以上に目を引いたのは、坂本の衰えぶりだった。
全盛期なら避けられたはずのパンチが避けられない、全盛期なら
前に出ていたはずの場面で押し負けてしまう、全盛期ならびくとも
しなかったはずのパンチでふらつく、全盛期なら倒していたはずの
パンチで倒せない・・・。

これがラストファイトだなんて悲しすぎる・・・半ば憐れみの感情で
見ていた僕だが、いつしか坂本の苦闘ぶりに、手に汗を握る自分がいた。
坂本は、今の自分に出来る精一杯のことをしている。全盛期なら
「噛ませ犬」に過ぎなかったであろうタイ人相手に、必死で手を出し、
必死で防御している。ある意味で、これは実に坂本らしいラスト
ファイトなのではないだろうか?簡単に倒して終わるより、遥かに
意味のあるラストファイトなのではないだろうか?

そして勝負は唐突に終わった。バッティングによって負った坂本の
目の傷がひどくなり、試合がストップされたのだ。負傷判定の結果は
引き分け。ラストファイトで負傷引き分け・・・なんと煮え切らない
終わり方であろうか。しかも坂本にとっては、キャリア初のドローである。
個人的には、カノーンスックの方が優勢に見えた。最後の試合をそんな
内容で引き分けにされては、かえって坂本が可哀想ではないかと思った。

しかし観客は暖かかった。そう、この試合、もはや勝敗や相手の格など
どうでもいいのだ。坂本が最後のリングに上がり、精一杯のファイトをした。
それこそが最も重要なことだったのだ。


観客に挨拶をする坂本。決して愛想のいい方ではないが、その
語り口には優しい人間味が溢れている。リングには、坂本を愛する
ボクサー、元ボクサーたちが続々と上がってくる。ハラハラして試合を
見ていた観客たちも含め、みな笑顔になっている。

「これからも熱く生きていきます」という言葉を残し、トレーナーに
肩車されて会場を去った坂本。孤児院で幼少期を過ごし、愛に飢え、
自分の境遇に憤り、子供ながらに「神様とケンカしてやる」とまで
思ったという男が、今ではこれほどまでに多くの人に愛されている。
これからの坂本の人生に何が待っているのかは分からないが、
この愛を失うことだけは決してないだろう。

日本Sフェザー級TM 小堀佑介vs大之伸くま

2007年01月06日 | 国内試合(日本・東洋タイトル)
チャンピオンが最強の挑戦者を迎え撃つ「チャンピオン・カーニバル」の
幕開けとなるこの一戦、僕は接戦を予想していた。

元日本フェザー級王者の大之伸は減量苦から一つ階級を上げてきた選手。
本望信人が持っていた日本タイトルへの挑戦は負傷判定で敗れて2階級制覇は
ならなかったが、キレのある動きには目を見張ったものだ。負けはしたものの、
この階級での自分のコンディションに手応えを感じたことだろう。

一方、今回が3度目の防衛戦となる小堀。前回の防衛戦からわずか
2ヶ月という短い試合間隔、そして負傷した左肩の影響が心配される。
この負傷により、本来は9月に予定されていた前回の試合を11月に
延期したという経緯がある。その試合ではやはり左にキレを欠き、
苦戦を強いられた。果たして左肩は良くなっているのだろうか。
もし小堀が万全でないのなら、王座交代は充分にあり得る、と思った。


リングに上がった両者。ウォーミングアップをする小堀、調子は
なかなか良さそうだ。一方の大之伸だが、なぜかフェザー級の時より
体が細くなっている。しかし本人によると減量は順調だったそうで、
計量後の食事量を減らしたためにリバウンドが少ない状態でリングに
上がれたのかもしれない。本望戦で見せた、動きのキレで勝負する
つもりなのだろうか。

ゴングが鳴った。やはり体調はいいようで、いきなり大之伸が勢い良く
小堀に襲い掛かる。予想通り、激しい打撃戦になりそうだ。ただ、
この序盤の猛攻は小堀陣営も予想していたらしく、小堀は決して慌てて
いるようには見えない。むしろ大之伸のパンチがよく見えている印象だ。

手数の割には大之伸のパンチはあまり当たらず、少ない手数ながら
小堀は効率良くカウンターをヒットさせる。クリーンヒットの数では、
逆にチャンピオンが上なのではないかとさえ思える。

第2ラウンドは更にヒートアップし、お互いにパンチを効かせる場面を
作る。しかしその中でも、やはり小堀のヒット率の方が高い。そして
このラウンドの終了間際、大きなパンチの連打から最後は右がまともに
入り、大之伸から痛烈なダウンを奪う。その旺盛な手数とともに、タフさも
売りの一つである大之伸だが、さすがにこれはかなりのダメージだ。

3ラウンド、当然ながら小堀が仕留めにかかる。左右フックの雨あられ。
それでも持ち前の手数を出して粘る大之伸だったが、小堀が思い切り振った
右でまたしてもダウン。アゴの先端をかすめる、芸術的な一撃だった。
その直後に大之伸のコーナーからタオルが飛び、ここで試合終了。小堀が
TKOで3度目の防衛を果たした。


小堀は試合の出来にムラのある選手だという評があるが、この日は
「いい時の小堀」だったようで、攻防ともに勘が冴えまくっていた。
そもそも、ここ最近の小堀は、故障の影響が明らかだった前回の試合を
除けば、いい勝ち方が続いている。これまでに勝った試合のKO率が
5割ほどの選手が、タイトルマッチでは4戦全勝3KOという好成績だ。
「ムラのある小堀」というイメージは、もはや取り払うべきかもしれない。

あれだけの手数を出す大之伸を相手に、さすがに無傷というわけには
いかなかったが、ロープやコーナーに詰まってもほとんどパンチを
もらわない。そしてあんな大振りのフックが次々と当たるのだから、
きっとタイミングが絶妙なのだろう。これは天性のものではないだろうか。

チャンスの時にも大振り一辺倒で、攻め口の雑さは否定できないが、
自分が打たれる可能性も含め(ガードが低いため)、実にスリリングな
試合をする選手だ。強敵相手にこの快勝。人気もまた上がるだろう。

それにしてもフィニッシュの右・・・あんなパンチ、そうそうお目に
かかれるものではない。倒された大之伸には悪いが、本当にいいものを
見せてもらった、という気分だ。


元チャンプからの年賀状

2007年01月04日 | その他
中野吉朗(よしお)というボクサーを覚えているだろうか。
圧倒的不利の予想を覆し、日本ウェルター級王座を獲得した人だ。
詳しくはこちら(2段目の記事)に書いてあるのでご覧頂きたい。

その中野さんから、年賀状が来た。僕は日本タイトルを獲った試合に
感動してファンレターを送ったことがあり、その後2~3回手紙の
やり取りをしたが、それももう何年も前のことだ。まさか僕のことを
覚えているとは思っていなかったので驚き、すぐに返事を書いた。

もちろん僕の方は、中野さんのことを忘れるはずもない。ボクサーに
手紙を書いたことなど、あれが最初で、今のところ最後だ。

ボクシング・グランプリ2007

2007年01月03日 | 国内試合(その他)
団体対抗戦という新しい発想で始まった、「ボクシング・
グランプリ」。5試合のうち4試合がKOで決着し、内容的には
なかなかの盛り上がりを見せたと言えるのではないだろうか。 


(先鋒戦)細野悟 KO6R マリオ・ガルシア

 粘り強いメキシカンに手こずったが、5回と6回にダウンを奪って
 KO勝ち。あまり見栄えのいい勝ち方ではなかったが、細野は
 プロとしてはまだまだこれからの選手。いい経験になるだろう。


(次鋒戦)宮将来 引分10R ルーベン・エスタニスラオ

 テレビでは5ラウンドからの放送だったので何とも言えないが、
 やや宮が劣勢だったような印象だったので、この判定は意外。
 これで宮の全勝記録は途切れたが、辛うじて無敗は保った。


(中堅戦)大曲輝斉 TKO3R アレハンドロ・ガルシア

 大曲は単なる無骨なファイターではない。確かに不器用な面は
 あるが、カウンターを当てる勘には非凡なものがある。また今回は、
 左右フックの間に打つ右アッパーもよく機能していた。

 毎回ダウンを奪い、最後は相手の首が後に吹き飛ぶほどの壮絶な
 カウンターを決めて勝利。これで大曲は12連続KO。元世界王者・
 浜田剛史が記録した日本記録「15連続」にあと3つと迫った。


(副将戦)エドウィン・バレロ TKO1R ミチェル・ロサダ
     (WBA世界S・フェザー級タイトルマッチ)

 ここまで20戦全勝全KOという完璧なレコードのバレロ。
 ロサダは試合前、自らのタフさをアピールしていたが、わずか72秒で
 2度のダウンを喫して敗れるという、悪夢のような結果になってしまった。
 あっさり初防衛に成功したバレロは、全KO記録を21に伸ばした。

 結果として1ラウンドで終わってしまったが、この日のバレロは
 決して攻め急いでいる風には見えず、落ち着いた立ち上がりだった。
 スパーリングでは、強打というよりむしろ技術の豊かさを披露している
 というバレロ、真価を発揮するのは実はこれからなのかもしれない。


(大将戦)クリスチャン・ミハレス TKO10R 川嶋勝重
     (WBC世界S・フライ級タイトルマッチ)

 引退を撤回し、背水の陣でミハレスとの再戦のリングに上がった
 川嶋だったが、まさかのTKO負け。あのタフな川嶋が、決して
 ハードパンチャーとは言えないミハレスに倒されるとは・・・。

 自慢の強打にもいつもの決定力を欠き、当たってもミハレスが
 倒れる気配はまるでない。ミハレスの細かいパンチを浴び続け、
 徐々にダメージが蓄積していったのだろう。持ち前のずば抜けた
 根性だけを頼りに奮闘はしているものの、この日の川嶋には正直言って
 「勝つ」というイメージが全く湧かなかった。

 川嶋の最大の武器はやはりスタミナ、タフさといった「体力」である。
 その体力にはっきりと陰りが見えてしまったのだから、今後は厳しくなる
 だろうと言わざるを得ない。残念だが、この辺りが潮時ではないだろうか。


この「ボクシング・グランプリ」、今回は日本とメキシコの対抗戦と
いうことだったが、シリーズ化はあるのだろうか。選手を集めるのは
大変だと思うが、日本と世界各国の選手との対決をまた見てみたい。