「沖縄県知事は自ら進んで取り消すと聞いている。辺野古問題に終止符だ」

 辺野古埋め立て承認取り消しの違法性を巡り、最高裁が下した県敗訴の判決について米側の反応を取材すると、複数の米政府関係者らから同様の言葉が返ってきた。

 「今回の判決で翁長雄志知事による埋め立て承認取り消しは違法と認められた。本来ならば工事再開には日本政府が代執行訴訟を起こす必要があるが、知事が自ら進んで取り消すので手間が省けた」という米側の共通認識が浮かんできた。

 以前は翁長知事を厳しく批判していた米政府関係者らも、知事の北部訓練場返還「歓迎」発言で態度が変化。中には「翁長知事は自衛隊配備や日米同盟の支持者だから、辺野古の問題が片付けば仕事しやすい相手となるだろう」という声も聞こえてくる。

 今回の裁判で、最高裁が示した判決主文にあるのは、(1)本件上告を棄却する(2)上告費用は上告人の負担とする-の2点のみ。すなわち、埋め立て承認取り消しを違法と確認したのみで、知事が取り消しを取り消さなければならない法的拘束力はない。

 沖縄では、取り消しを取り消し埋め立て承認が復活しても知事権限で阻止できるとの声もあるが、米側は大きな障害にはならないとみているようだ。つまり翁長知事に残されている新基地建設を阻止しうる唯一のカードは埋め立て承認「撤回」ということになる。

 翁長知事は、最高裁判決後に開いた記者会見でも、取り消しを取り消す具体的な理由を説明していない。26日に取り消しを取り消すというが、まずはその理由を県民に明確に説明し、判断を仰ぐべきだろう。新基地建設阻止を掲げる沖縄選出の国会議員や県議にも、知事の説明責任を追及する責任がある。

 高江ヘリパッド建設を巡っては、翁長知事は完成目前に「容認できない」と発言するなど、対応は完全に後手となってしまった。

 岩礁破砕許可が生きている状態で埋め立て承認が復活すれば、工事は再開され、沖縄は新基地建設を止める術(すべ)を永遠に失ってしまうかもしれない。

 最後まで闘うとの精神論や沖縄差別を訴えるだけでは、日米両政府の新基地建設計画を止めることはできない。翁長知事に必要なのは「実効性のある具体的行動」を取ることだ。取り消しを取り消すならば「撤回」の時期を明示する必要がある。(平安名純代・米国特約記者)

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>今回の裁判で、最高裁が示した判決主文にあるのは、(1)本件上告を棄却する(2)上告費用は上告人の負担とする-の2点のみ。すなわち、埋め立て承認取り消しを違法と確認したのみで、知事が取り消しを取り消さなければならない法的拘束力はない。

つまり仲宗根元判事が指摘するように、違法確認訴訟で県が敗訴確定しても「取り消し」の取り消しに執行力はない。(【おまけ】参照)

>沖縄では、取り消しを取り消し埋め立て承認が復活しても知事権限で阻止できるとの声もあるが、米側は大きな障害にはならないとみているようだ。つまり翁長知事に残されている新基地建設を阻止しうる唯一のカードは埋め立て承認「撤回」ということになる。

「取り消し」の代わりの「撤回」は、高裁那覇の判決文で否定されている。

判決文には、仮に埋め立て承認に多少の瑕疵があっても「撤回」は出来ないと明記されており、「撤回」が認められる例として「明らかな詐欺など」で承認させられた場合、とある。

しかも、本件の場合仲井真前知事の埋め立て承認に瑕疵はないので、ここで言う「撤回」は極めて困難といえる。

>翁長知事は、最高裁判決後に開いた記者会見でも、取り消しを取り消す具体的な理由を説明していない。26日に取り消しを取り消すというが、まずはその理由を県民に明確に説明し、判断を仰ぐべきだろう。新基地建設阻止を掲げる沖縄選出の国会議員や県議にも、知事の説明責任を追及する責任がある。

13日の「オスプレイ事故」以来、翁長知事を報じる沖縄2紙の印象は、大きく印象を変えている。

翁長知事批判が陰を潜めた。

それどころか最高裁では敗訴したが、「民意を背に、国と戦う英雄」といった扱いだ。

だが、闇雲に翁長知事礼賛では、必ず破綻が到来する。

そのためには、本日行われる「取り消し」の取り消し(取り下げ)について、県民に対する知事の説明責任が問われるのは言うまでもない。