◆毎年、夏場になると増えてくる食中毒。激しい腹痛や下痢、おう吐、発熱、血便などを症状とし、場合によっては入院治療が必要になるなど、深刻な状態に陥ることもあります。食中毒の原因となるのは、細菌などの病原微生物。体内で障害を起こす仕組みによって感染型と毒素型の2種類に大別されます。

◆感染型の食中毒は、病原微生物が体内で増えることで発生します。主な病原微生物としては、腸管出血性大腸菌、サルモネラ属菌、カンピロバクター、腸炎ビブリオなど。毒素型は食品中で細菌が産生した毒素を摂取することで起こり、黄色ブドウ球菌、ボツリヌス菌、セレウス菌などが原因菌となります。

一方、腐敗した食品を摂取して、お腹を壊すこともあります。腐敗とはタンパク質やアミノ酸などが分解された状態のこと。たとえ腐敗臭がしていても、食品中に原因となる病原微生物がいなければ食中毒は起こりません。

とはいえ、腐敗した食品はさまざまな病原微生物が増えやすい環境にあり、食中毒の原因となる可能性は高いといえます。逆に食品が腐敗していなくても、食中毒の原因となる微生物や毒素が存在すれば食中毒は起こります。むしろ、食中毒は見た目や臭いに変化のない食品から多く発生しているのです。

◆食中毒予防の基本は、細菌の体内への侵入を防ぐこと。毎年2000件前後の食中毒が発生していますが、そのうち約2割は家庭内で起こっています。対策のポイントは、「つけない」「増やさない」「殺菌する」の3つです。

まず、手指や調理器具を介して別の食材に細菌が移動する交差汚染に気をつけましょう。調理前には必ず手を洗い、加熱調理前の食肉や魚介類に触れたまな板、包丁、ふきんなどは使いまわししないようにします。菜箸やトングなどを使った後は熱湯などで消毒し、生で食べる野菜などと接触しないようにしてください。

◆食中毒の原因となる微生物は、ヒトや動物の体温に近い温度で最も増殖しやすくなります。乾燥したものより水分を含んだもの、塩分濃度が高いものより低いもののほうが増えやすいこともわかっています。冷蔵・冷凍は細菌やウイルスの活動を低下させるだけのこともあり、必ずしも完全な対策とはなりません。

殺菌の基本はやはり加熱です。食中毒の原因となる病原微生物の多くは、食品の中心温度が75℃以上で1分間加熱すれば死滅するといわれます。ただし、ボツリヌス菌、ウエルシュ菌、セレウス菌などは、増殖できない環境になると加熱や乾燥に耐えられる「芽胞」を作ります。環境が元に戻ると再び増殖するため、注意が必要です。』