「旅の坊主」の道中記:常葉大学社会環境学部・小村隆史の防災・危機管理ブログ

日本唯一の防災学部はなくなっても、DIGと防災・危機管理を伝える旅は今日も続いています。

東日本大震災を学ぶための本、まずは大学1年生向けに、文庫本から5冊選ぶ。

2015-07-14 23:55:05 | 東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)
少し前に拙ブログの話題に出した、東日本大震災を学ぶための本(書評and/or本の紹介)の件、
あっという間に、本気でまとめないとヤバい、という時期が来てしまった。

今日14日は、富士市立看護専門学校で「災害看護」について一コマ教えた後、
昼休みに連続公開講座についてのブレスト、夕方に時事問題討論ゼミ、
合間にたまった雑事や研究室の整理等々、と、いつもと同じような一日。

ただ、この空いた時間の何本かの電話で懸案事項が幾つか片付いたこともあり、
学生が帰った後、このタイミングなら書けそうだ、と、妙に原稿書きモードとなる。

5冊なり10冊なりを選ぶのは、本当に難しい。
で、依頼元の岡野谷女史とはまだ連絡がついていないのだが(メッセージは残した)、
何回かに分けて、例えば5冊ずつとか、紹介していければ、と思うようになった。

で、勝手に決めた第一弾として、大学1年生で東日本大震災について学び始めよう、と思っている学生向けに、
すでに文庫化されている本の中から、まずは5冊、選ばせてもらった。

(「何だ、小村さん、意外とオーソドックスなところを選んだのね」と言われそうだが……。)

1 さだまさし『風に立つライオン』(幻冬舎文庫)

国際協力を志した者として、忘れようにも忘れられない「あの名曲」をモチーフとした小説だが、
この小説も、涙を流すことなく読めない小説。どこかで「かくありたい」自分を重ねているのだろう。
石巻市の日和山から見下ろす冒頭のシーンが、何とも印象的。
ルポルタージュじゃくて小説かよ、との疑問はさもありなん。
もちろん小説ゆえフィクションもあろうが、実在のモデルのいる話。

学生諸君に、

「多少は美化されているとは思うが、登場人物にはちゃんとモデルとなった人がいて、
彼らの活動があったからこそ、現実社会の中でも本当に救われた者がいるのだ。」

ということをうまく伝えられたならば、
美談の裏側を探って「やはりひどいじゃないの!」と言うのではなく、
「人間って、まんざら捨てたものではないな」という気になってくれるのではないか、と思う。

5冊のうち、最初に読んでもらいたい。

ちなみに、第三部の主人公のモデル、石巻明友館自主避難所リーダーの千葉恵弘氏と班長・糸数博氏については、
頓所直人取材・文、名越啓介写真の『笑う、避難所:石巻・明友館 136人の記録』(集英社新書)もあるので、
ご関心ある方はこちらのルポルタージュもご一読あれ。

順番については迷うところがあるが、2冊目は、
河原れん『ナインデイズ:岩手県災害対策本部の闘い』(幻冬舎文庫)を選ばせてもらった。

文庫版あとがきで著者曰く、
「自分がその場にいたら、彼らのようにできるだろうか。人の命が、何万という人命がかかっているその状況に、
ためらわずに立ち向かっていくことはできるだろうか。
今回、ルポルタージュとして書くべきものを、あえて小説の形態で、一人称で書いたのは、
私の中に起こったその気持ちを入れ込みたかったからだ。
第三者ではなく、できるだけ救助者の気持ちになってこの本を書き上げたかった。」

私事で恐縮だが、著者と、主人公秋冨慎司医師、そして著者の母であり著者と秋冨医師とを引き合わせた、
災害看護界のスーパービッグネーム山達枝女史、このお三方と個人的なお付き合いもある「旅の坊主」である。
これらの方々の思いをしっかり受け止めているか、と己に問う、いわばリトマス試験紙のような本でもある。

学生諸君には、やはり、自分がその場にいたら、ためらわずに立ち向かっていくことができるか、
それを我が身に問いかけつつ、秋冨先生と岩手県災害対策本部の方々の9日間を追体験してもらいたい、と思う。

重要な登場人物である越野修三・岩手県防災危機管理監の活動については、
『東日本大震災津波 岩手県防災危機管理監の150日』(ぎょうせい)に詳しい。
こちらと併せて読むと、よりイメージが広がると思う。

残りの3冊については改めて。


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