映画監督の崔洋一氏が亡くなった。
つい先日、大森一樹監督の訃報を聞いたばかりだが
映画界の才能の相次ぐ死に衝撃を禁じえない。
作風もタイプも異なる二人ではあったが
ともに一時代を疾走した映画人どうしだけに
不思議な縁(えにし)を感じてしまう。
一度もお会いしたことのない人ではあるが
普段の発言や活動を見る限り「反骨の人」だったと思う。
それでいて思考は常に柔軟で融通無碍。
何かのトーク番組でその知識や見識に幅広さに驚いた記憶がある。
彼自身は在日コリアンという出自だが
そうした偏狭さには捕われない自由闊達さがあった思う。
とにかく「器が広い」人だったという印象がある。
大島渚の助監督としてデビュー以来、現場で叩き上げながら
代表作は「月はどっちに出ている」とビートたけし主演の「血と骨」。
とりわけ前作はの梁 石日の自伝的小説「タクシー狂騒曲」を原作としていて
タクシー運転手をする在日コリアンの男性と
日本でたくましく生きるフィリピン女性の恋愛を描いた秀作で
数々の映画賞にも輝いただけに印象深い。
主演は岸谷五朗とフィリピン女性役はルビー・モレノ。
在日コリアンの日常を活写した映画では
井筒和幸監督の「パッチギ!」と双璧ではないだろうか。
日本映画監督協会の理事長として尽力されたことも忘れてはならないし
ご自身、俳優としてもなかなかの才能の持ち主だったと思う。
まさしく「鬼才」と呼ぶにふさわしい存在だった。