まろの陽だまりブログ

顔が強面だから
せめて心だけでもやさしい
陽だまりのような人間でありたいと思います。

錦繍を読む

2021年11月04日 | 日記
  1. 今年も手にとってしまいました。
    紅葉の季節が来ると決まってまた読みたくなります。
    宮本輝の小説「錦繍(きんしゅう)」です。
    錦繍とは美しい刺繍をほどこした織物のことで
    よく鮮やかな紅葉にたとえられます。



前略 蔵王のダリア園から、ドッコ沼へ登るゴンドラ・リフトの中で
   まさかあなたと再会するなんて、本当に想像すら出来ないことでした。
   私は驚きのあまり、ドッコ沼の降り口に辿り着くまでの二十分間
   言葉を忘れてしまったような状態になったくらいでございます。

そんな書き出しで始まる「錦繍」は
かつて夫婦だった男女が交わす14通の手紙からなる
いわば「往復書簡形式」の小説です。
離婚してから10年後・・
別れるきっかけとなったある「事件」について
そして、その後の10年間の二人の人生が
手紙という形で丹念に美しく語られていきます。
いまやメールやlライン全盛の時代で
めっきり手紙を書くこともなくなりました。
要件だけの短くて味気ない文章が際限なく増えて来ました。
そういった意味でもこの小説は貴重かもしれません。


公園もそろそろ紅葉の季節です。
小説の舞台である蔵王には一度だけ訪れたことがあります。
残念ながら取材のついでで時間もなく
季節も紅葉の頃ではなく夏の真っ盛りでしたが
ロープウエイのゴンドラに揺られながら
蔵王の雄大な風景にこの小説の一文を思い出していました。
蔵王はもう初雪の降る頃でしょうか。