Kantele-Suomiho-Fuga

フィンランドと音楽(カンテレ、音楽療法)をキーワードに!

うれしいひと声

2008-01-29 23:11:12 | 音楽療法
仕事している医療法人は、老健(介護老人保健施設:入所+デイケア・通所リハビリテーション)、認知症グループホーム3つ、療養型通所施設、クリニック、クリニック+デイケアからなる高齢者施設。音楽療法士は一人だから、これを全部飛び回っている毎日。超多忙だけれど、充実していてなんといっても楽しい! とはいえ、忙しくて仕事をこなすのに精一杯で感動を後回しにしていた。でも今日は飛び上がるほど嬉しい日、こんな感動、久しぶり。

午後はグループホームで<音楽療法・歌の会>。昨夏にオープンした3番目のこのグループホームは、療養型通所施設と隣接している。療養型施設は、介護というより医療型施設。要介護度4~5と重い利用者様が多く看護師がケアにあたるが、食事、レクレーションなどできることは一緒に行なうという理念で、介護スタッフも入浴やお世話を積極的に手伝っている。

火曜日の利用者様はAさんとBさん。Aさんは初対面では表情もなく、アイコンタクトもできなかった。家では会話することも笑うこともなかったらしい。一緒に歌うようになり2か月たった頃、遠くを見るような目で微笑み始めた。それから顔つきが変わってきた。「家で笑うようになりました」と、嫁いで何十年にもなるお嫁さんは、初めてAさんの笑顔を見て驚いたそう。最近はいい笑顔で、楽しそうに皆の歌を聴いている。いつも私の隣にいるので、首をのばして歌いかけているが、Aさんはニコニコしてそれにこたえてくれる。歌ってはいないが、確実に皆の中に入っていることを感じていた。

ところが今日、『炭坑節』を歌っていたら「♪サノヨイヨイ」と聴こえてきた。歌集を支えていた介護スタッフが「歌ってる!」 それから何曲も、一部ではあるが声が聴こえてきた。「Aさん歌って」というともっと大きく口を動かしている。ナースたちも介護スタッフたちも入所者様たちも、「やったーッ!」とVサイン。

そして嬉しいことはもうひとつ。ナースから「先生、来月から食事もできるの」と報告を受ける。今まではチューブを通しての経管栄養摂取だったが、私たちと同じように口から食べることになった。それは素晴らしいこと。「声は出していなくてもきっと歌っていたと思う。それが経口摂取移行につながったひとつの大きな要素」とナース。歌うことは顔や喉の筋肉にいい効果を生み出し、嚥下にもよいといわれている。それは学会の症例研究でも発表されているが、私自身ははじめてのケース。精神面だけではなく、実生活につながるリハビリ要素の音楽療法が評価され、音楽療法士冥利につきる。「Aさん、よかったわね。お食事するんでしょう」と声かけしたら、満面の笑みをたたえ頷く。

Aさんだけではなく、傾眠のBさんも反応がよく、めずらしく声をだして笑ったり手を動かしていた。また入所のCさんも今日は集中力がありしっかり歌った、「あの女の人(私のこと)歌うまいね」と言っているのも聴こえた。今日は皆がいい気分、音楽が大きなつながりのひと時だった。これがあるから忙しくても、多少身体に故障を感じてもやめられない音楽療法士の私。
ウーン、幸せ。明日も仕事がんばっちゃう!