Kantele-Suomiho-Fuga

フィンランドと音楽(カンテレ、音楽療法)をキーワードに!

音楽療法的BGM

2007-03-16 22:36:03 | 音楽療法
<その1 ST(言語聴覚士)からの相談事> 
嚥下(飲み込み)の悪いSさんは、食事になると身体に力が入りますます状態が悪くなってしまう。そこでまず気持ちをリラックスさせるために音楽を流したいという。音楽療法はCDをたくさん持っているので、その中からさがすことにした。

Sさんは歌好き、歌詞があるものは歌ってしまうので食事どきにはむかない。クラシックは重すぎる。イージーリスニング系は華やかすぎる・・・ と「あれもダメ、これもダメ」で最後に残った何枚かで選ぶ。私が薦めたのはオルゴール系のゆったりしたもの、しかしSTは「高い金属音が気になる」で却下。結局、リラクゼーション用の自然の音をベースにしたやわらかい音楽のCD。鳥のさえずり、水の音、さわやかな風を感じる音が音楽になっている。

さてその効果は? 「いいわねエ、いい気分ねエ」とおっしゃるが、食は進まない。1週間様子観察をし、また考えることにした。

<その2 介護スタッフからの依頼>  
全介助でリクライニング車椅子のIさんは、意思疎通がむずかしい。スタッフが着替えや排泄(おむつ)交換をしようとすると、突然暴れる。またなかなか入眠しないで、一晩中お目目ぱっちりということもしばしば。音楽が流れると同じ人とは思えないほど穏やかになり、うっとりした表情をするので、「ダメモト承知で枕元音楽を試したい」という。Iさんは唱歌が大好きで、ほんの稀に一部だけ歌うことがある。そこでゆったりした歌声の唱歌集テープを作った。

こちらは効果満点、スタッフの話にわずかに反応したり笑顔も見せる。お試しは片面30分だったので、あわてて60分に延長した。

<その3 デイケアでのできごと> 
《千の風になって》を毎日練習して2週間がたったある日、スタッフが自分のCDをかけた。私は、基本的に歌詞(特に日本語)がある曲はBGMには使わない。歌詞を聴いてしまうからBGMにはならない。このCDも1回だけかと思ったら何度もかかった、「エッ、3回目?」。PT(理学療法士)のAさんは「ゲェ、まだ続くの? この歌嫌いになってきた」と怒り発言。同僚のRさんが理由を説明してとめたが、夕方はエンドレスでかかったらしい。

翌朝いちばんで「何とかしてください」とスタッフたちから苦情。「一度ならいいけど何度も聴くと気分が悪くなる」とのこと。曲が悪いのではなく、歌詞があるからどんどん重くなってしまう。その日も夕方またかかったので、今度は私がCDの持ち主と話をした。もちろんご本人は好意でかけたのだから、納得してもらうのには時間がかかった。私は音楽療法士として確固たる態度で事情を説明、「かける音楽は何でもいいわけではなく、私たちもかなり吟味して選択している」を、何とかわかってもらえたかな。

<週末の宿題>
音楽療法的BGMは本当にむずかしい。何が適しているのか、的確な判断が求められる。でも対象者を思い浮かべながら状態を考慮してアレコレ考えるのは面白い作業。週末の宿題は、認知症フロアの夕食時のBGM。「ゆっくり落ち着いて、楽しんで美味しく食事できる音楽」が栄養科からの課題、さてどうしようかしら・・・。