正指検定本番まで2週間を切りました。種目練習もしっかり積み上げてきて、検定会にて出品できるレベルになってきたかなと思います。
ところで指導員検定会なるものについて、あまりご存じない方も多いのではないかと思いまして、本日は少し詳しく解説しようと思います。検定種目は下記の4単位(7種目)になっております。これら7つを全てクリアすることが合格の条件になります。
A単位: 谷回りの連続 (制動要素+推進要素)
B単位: 大回り+小回り
C単位: 不整地小回り+フリー滑降
D単位: 理論
このうちB単位とC単位はバッジテストなどと同じで、スキーの滑降・回転技術の基本能力を試します。D単位の理論はSAJスキー教程や安全知識、SAJ規約の内容に関する筆記試験です。
それに対して、A単位はSAJ指導員検定独特の種目です。SAJスキー教程に書かれている「技術論」を低速において表現する「演技種目」になっています。その技術論や具体的な演技内容は2年~毎年でコロコロ変わるので困るですが(^^;)、今年の検定では「自然で楽なスキー」なるコンセプトの中の「谷回りの連続」と呼ばれる要素を表現することになっています。百聞は一見にしかずで、実際の滑りでご覧ください。谷回りの連続(制動要素)と呼ばれる滑走性を抑えた種目です。
この業界(笑)に詳しくない一般の方々は、いわゆるプルークボーゲンではないかと思われるでしょうが、いわゆる普通のプルークボーゲンは「外脚主導」(=外脚荷重によりターンを導く)技術とされ、現在のSAJスキー教程では重力に逆らって無駄な筋力を使う技術として否定的な位置づけにあります。
上の動画の滑りは「自然で楽なスキー」における「谷回りの連続」と呼ばれる技術要素をプルークスタンスで表現したもの、ということになっています。「自然で楽なスキー」とは、「内脚主導」(=内脚荷重によりターンを導く)技術であり、ターン前半での内股関節の屈曲により内スキーの角付けを外すことで、谷側へのスキーおよび身体の落下を誘発することでターンを始動する技術です。
そういう解説を念頭において先ほどの動画を見直して頂けると、ヘタなりですが(^^;)、内股関節の屈曲→内スキーのずれ落ち→ターン始動→外スキーによるターン弧→内股関節の伸展でニュートラルポジション、という一連の運動が意識的に行われていることにお気付き頂けると思います。
逆にやってはいけない運動というものが指定されています。外脚を動かすのは外脚主導なのでバツ。かといって体を傾けすぎると外脚荷重が軽くなりすぎるのでバツ。ニュートラルポジションをしっかり見せないとバツ。エッジを立て過ぎるのは末端主導でバツ。スピードを出しすぎるとバツ。などなど数多くのすべからず集が存在します。
このように、A単位は見せるべき運動要素およびやってはいけない運動要素をしっかり理解した上で、それを明確に演技できる能力が求められているわけです。スキーがうまいからといってA単位が取れるわけではないのです。
さて余談(笑)になりますが、A単位は上述のように「重力(だけ)を利用する」滑りを表現するものですが、少しでもスピードが出てくると、重力の他に、回転の際に発生する遠心力(ターン弧の外側に引っ張られる力)の効果が大きくなってきます。この遠心力と雪面からの抗力とにより板のたわみが発生して、スキー板は舵取り回転を行います。カービング板の登場により、以前は上級者しか引き出すことができなかった「板のたわみ性能」を誰でも簡単に引き出せるようになり、一般スキーヤーでも手軽にハイスピードでシャープな回転滑走が可能となりました。
このように重力だけでなく遠心力も活用できる技術がスキー上達のためには必要です。現在のSAJスキー教程で提唱されている、重力を活用した自然で楽なスキーから、遠心力を活用するスキーへのステップをどう進めたらいいか、今後さらに考察を深めてゆきたいと思います。
素晴らしい。
緊張した中でこういう繊細な運動が出来るか、
それがキーなのでしょうね。
検定時は硬くなってしまうので、たくさん練習して自動化するしかないですね。
それに対して、
(1) 「自然で楽なスキーのすすめ」というタイトルの教則本から分かるとおり、「快適さ」「滑らかさ」「疲れにくさ」などの「プラス面」を強調して、制動技術とは区別して、実践的な回転技術=自然で楽なスキーという位置づけにあること
(2) 「自然で楽なスキー」は【最初から】谷回りの連続(内脚主導)で行う、とわざわざ書かれていること
以上の点からと、プルークボーゲンは否定的な位置にある申し上げました。
指導員検定でプルークボーゲンのできばえをみる種目が全くないことからも、その否定的な位置づけが明確だと、僕は思います。