この一滑は絶対無二の一滑なり

シーズン終了。それにしても雪不足で大変なシーズンでしたね!

秋のグランジャートレ

2012-10-21 22:50:43 | スキーの話題一般


ついこの前まで蝉が鳴いていたのに、ふと気が付くと秋がやってきていました。秋が来るとフィジカルトレーニングだけでなく、実践のオフトレがやりたくなります。

そんなわけで、原村の八ヶ岳自然文化園へグランジャー練習に行ってきました。木々が綺麗に紅葉しておりますが、運動するには快適な気温で、実践型オフトレにうってつけの気候でした。

さてこの日はまず基本ポジションの確認。グランジャーも久しぶりに滑るのでものすごいビビリ後傾から始まります(苦笑)。まずはゆるい斜度で滑ってポジションを前方の正しい位置に移動させる練習を繰り返しました。

ポジショニングが直ったら、昨シーズンから取り組んでいる切り替えの練習に取りかかりました。今シーズンは練習における意識を次のような考え方に変えることにしました。それは、


「スキー技術で重要なのは、フォーム(型)ではなく、モーション(運動)である」


という考え方です。これまで僕は、ある一瞬の静的なフォームを取れるようにひたすら練習することをこれまで繰り返してきました。「スキーは道具を使うスポーツである」という事実に気付くと、「どう運動すれば板の性能を最大限に引き出すことができるか」というように、動的な身体の使い方(モーション)もより重要だと意識が変わりました。グランジャーのようなしっかり動かし続けないと曲がってくれない道具を使ったために、なおさらこのことの重要性を再認識しました。

具体的には、切り替えにおけるモーションがスキーにおいては一番大事であると考えます。ポイントは下記のとおりです。

・ 切り替えは山脚のアウトサイドエッジからインサイドエッジへ荷重を切り替えながら行う。切り替え後に谷側へ軸を倒してはいけない。山脚(外脚)への荷重を抜かないまま、フォールラインに絡んでいくことが大事。

・ 切り替え後に軸を谷側に傾けないことは本当に大事である。傾けた瞬間に外脚から圧が抜け、せっかく作った雪面グリップが失われてしまう。結果として、ターン後半の山回りで外スキーに強い圧をかけざるを得なくなる。(従って自然で楽なスキーやHYBRID SKIINGは×)

・ ターン全般において外スキーが後ろ、内スキーが前の前後差がついているのが正しいポジション。前後差は切り替え時に入れ替わる。体軸は常に外スキーと内スキーの中点にあるような両スキー荷重が理想。それより谷(山、前、後)はいわゆる内倒(外傾、前傾、後傾)ポジションで×。

上記のポイントを、一連のモーションとして連続させ、動き続けながらターンを行います。正しいポジションで動き続けることで板に圧が常にかかり続け、ターン中つねに雪面コンタクトが取れた状態を維持することができます。すなわち「常に雪面に張り付くように滑る」ということが可能になると思います。

以上で本日のまとめを終わります。


丸山貴雄さんの講演を聴きに行きました

2012-10-15 21:10:44 | スキーの話題一般


友人のお誘いで、あるスキー連盟主催で開催された丸山貴雄デモの講演会に一般参加することができました。 技術選を3連覇した基礎スキー界を代表する選手であり現役のナショナルデモンストレータでもある選手が、どのような技術論を展開するかめちゃめちゃ期待して聴講してきました。

以下、セミナーの内容を簡単にまとめます。

1. 技術について
(1) スキーを操作するという技術 = スキーに特有の動き(=技法) ←従来こればかりが重視されてきた
(2) 身体運動という技術 = 他のスポーツと共通の動き。体幹部(コア)を軸とした運動 ←「技法」ではなく「運動」がより大事

・ HYBRID SKIINGはたしかに自然で楽、健康で快適で効率の良いスキーだが、体軸が谷に傾くだけの脱力したダラダラ滑りになりがち。内股関節を先に緩めてしまうと上体と下肢がバラバラな運動になってしまいがち。
・ スキーはスポーツなのだから、もっとアクティブでスポーティな運動でありべきだ。
・ 従ってスキーは、むしろスピードスケートのような速く動くスポーツから多くを学べる。

2. スキー技術の解説
・ 軸を意識し、スキー面に垂直に荷重する(外向外傾や内倒ではない)
・ クロスオーバーするのではない。ただ内側に傾くのではない。顔や身体の向きは進行方向に一致させる。
・ ターン外側へ荷重する。外側への重いズレを利用する。

3. 指導方法について
・ 「外脚を踏む」のではなく「ターン外側へ荷重する」という観点から指導する
・ 低速でも高速の練習ができるはず。(例えば傾きが出たときにターン外側へ荷重する練習)

4. 3連覇へのメンタル力に必要だったこと
(1) 自己分析 ー 技術選最高3位だった現状や原因を直視しない自分を認識。人の良さやコーチの意見を否定する自分を改善。
(2) 目標設定 ー 成績目標(5連覇という高い目標を掲げる)と熟達目標(戦いながら継続的に向上する)
(3) イメージトレーニング ー 失敗でなく常に成功で終わるようにイメージを普段から作り上げる。
(4) メンタルトレーニング ー 身心一元論=心が身体を動かす。

簡単ですがまとめました。要約ですので分かりづらい点はどうぞご容赦下さい。

丸山選手の技術論・運動論を僕なりに一言でまとめると「両脚による外側への荷重」だと理解しました。ターン外側へ働き掛け、ターン外側へ荷重し、外側へのズレを利用すること。これはまさしく僕の主張してきた「板を外側へ踏んでずらし、そのたわみを活用する滑り」と同じ技術要素・運動要素だと思います。彼の講演でも「外側」という言葉が繰り返し100回くらい出てきました。

ただし丸山選手は「外脚主導」「外脚を踏む」というのは外脚一本のイメージがあるために、彼を注意深くその用語を避けていました。両足を使ってターン外側へ働き掛けることを強調されておりました。

ただ、丸山選手としか思えないめっちゃ上手いスキーヤー(^^;;;)のビデオを仔細に分析すると、どう見ても「外脚で踏みずらす(=突っ張りずらす)」動きに見えます。おそらくご本人としては「外へずらす」と「踏む」はの運動感覚的に違うのでしょう。この点は今後さらに研究が必要だとは思いますが、少なくとも丸山選手の言う「外側への荷重」と、僕の主張してきた「板のたわみを利用する滑り」はほぼ同じ技術要素であると今は考えています。これが確認できたことが今回の講演に参加した最大の収穫だったと思います。

実は正直申し上げると今回の丸山選手の講演を聴く前は、技術選を3連覇した現役ナショナルデモンストレータとなれば、SAJ教程に対して遠慮した内容になるのではないかと予想していました。しかし実際には丸山選手はSAJ現教程の欠点をはっきり指摘し、ご自身の考える正統派の技術論を明確に述べました。これは大変勇気のあることであり、高く評価したいと思います。

願わくは丸山選手に要望したいことは、次の技術選は教程に迎合することなくご自分の掲げる理想の滑りを全面に押し出して戦って頂きたいと言うことです。丸山選手が3連覇した時のインタビューで「自分の滑りが本当は好きじゃない」と言いました。であれば僕は丸山選手にはとことん自分の好きな滑りを追求し表現して欲しいと思います。僕らが見たいのは教程に則った優等生的な滑りじゃなく、丸山選手が自分を最大限に表現したときの他人が真似できない驚異的で圧倒的な滑りなのです。

さらに願うならば、全日本スキー技術選というイベントが、どれだけ型にはまっているかを競う大会ではなく、どれだけ型破りな個性を競う大会となることを心から願うのであります。