ベイジン

北京オリンピック開幕に合わせて運転開始を目指し、世界最大の原発を建設する。
そして、オリンピック開幕日の運転直前にトラブルが発生するし、運転中止を訴える日本人技術者の意見を無視し、維新をかけた中国共産党のエリートは、運転を強行する…。

3.11の前であれば、規律を守らない現地の労働者や、品質よりもコネや利権で業者を選ぶ中国社会の中で、規律を守らせようとする日本人技術者の奮闘ぶりや、トラブル発生後の、中国人自身による傲慢さへの反省が、完成度の高いエンタメ小説として読めたが、皮肉なことに、日本で世界最大の原発事故が置き、傲慢さを反省するべきだったのは日本人だったということとなってしまった。

ハゲタカも書かれた後にファンドの破綻があり、著者のの一連の作品が、書かれた当時とその後の時代の変化で、正反対の価値観を提示しているのが皮肉である。作者が人並み外れた取材をしたことは間違いないが、どんな人間でもその時代の価値観に縛られた見方からは、逃れらないのだなと感じた。

ベイジン〈上〉 (幻冬舎文庫)
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