とんびの視点

まとはづれなことばかり

団地に残された家族

2011年05月09日 | 雑文
ゴールデンウィークが終わりいつも通りの日々が戻る。普通ならそう書くところだが、個人的には引っ越しがやっと終わり、少しずつ日常を取り戻す日々が始まろうとしている。会社は1日で作れるが、組織を作るには時間がかかる。同じように、引っ越しは1日で終わるが、新たな日常を作るにはそれなりの時間がかかりそうだ。

ゴールデンウィーク前半は段ボールや荷物の整理でてんやわんやだった。朝起きてから夜寝るまで段ボール中から荷物を出して右往左往していると、いつの間にか夜になっている。ゆっくりと新居を味わう時間もない。階段の上り下りのときに栂の無垢材の風合いや壁の漆喰の白が目に着いたときなど、うん良い家だな、と思うのだが、それが自分の家だとは思えない。さあそろそろ帰ろうか、という声がどこからか聞こえてきそうな気がする。

それとは別な奇妙な感覚も味わった。一日中片づけをし、疲れた体で家族で夕食を取る。新しい家で始まる新しい生活に子どもたちがワクワクしているのが感じられる。夕食はいつもよりも家族の団欒の暖かな雰囲気だ。新たな生活をちょっとだけ実感する。でもそれと同時に、自分たちが虚構ではないのかという気持ちになる。

本物の僕と家族は今もまだあの団地の12階の部屋で生活をしているのではないか。僕らの1番大事な部分はあそこに残っているのでないか。そんな気がする。まだ団地で生活をしている彼らのことを思う。そこにはこじんまりとしたささやかな生活がある。妙な気持ちだが、そんな彼らの生活が壊れないことをどこかで願ってしまう。

そんな奇妙な気持ちの揺れを感じながらゴールデンウィークの前半を過ごした。後半に入ると、少しずつ日常が戻り始めた。ゴールデンウィーク後半で合計70kmほどランニングをした。4回ほど土手まで行った。そのうち2回は子どもたちが自転車、相方がランニング、家族全員だ。たくさんの草が生えていた。タンポポは白い綿毛を飛ばしていたし、名も知らない草花がたくさん咲いていた。春ではなく初夏のような陽気だ。ランニングをして土手まで行き、土手で子どもたちとボール遊びをし、またランニングで帰ってくる。そんなことを2日ほどやる。

そして残りの2日は20kmを超えるランニングだ。1月末の若潮マラソン以後、月に100kmちょっとのペースで走っていたのでかなり脚力が落ちていた。20km程度のランニングで(それもゆっくりしたペースなのに)脚が筋肉痛になっている。次は6月5日の喜多マラソン。そこまでに何とか走力を戻さねばならない。

そして今日、こうしてブログを久しぶりに書いている。何だか物事がやっと一巡した感じだ。仕事場にしているロフトに座ってパソコンに向かうことにも違和感がなくなってきたし、窓から見える景色にも慣れてきた。(ここからは決して桜並木も富士山も見えることはないだろう)。引っ越し直後に団地に残してきた彼らも時間的に少し遠いところに行きつつある。

仕切り直し。新たなスタートなのだろう。とは言え、やることはこれまでと大して変わらない。きちんと仕事をし、ちゃんと子どもを育て、甘えることなくランニングを続け、言葉を丁寧に追いかけていくこと、それくらいである。あっ、そうそう。それときちんとローンを返すこと。
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