
「大乗涅槃経『施身聞偈』の詠嘆」というタイトルで今日が2回目の記事の掲出です。
今回は、仏教の三つの命題のうちの「諸行無常」を原始仏教典の内にみたいと思います。
『涅槃経』は詳しくは『大般涅槃経(だいはつねはんきょう)』と表示されます。涅槃経は釈尊の遺言集ということですが、紀元前の涅槃経、紀元後の涅槃経の二種類があるそうです。
この二種類の涅槃経はともに『大般涅槃経』と漢訳されているそうです。
仏教経典には編纂経典と創作経典があり、編纂経典はパーリごという一種の俗語で著されていて、釈尊が身近な人々を相手に説法した内容で、創作経典は雅語がご)であるサンスクリット語であらわされているとのことです。通常は編纂された『涅槃経』を『原始涅槃経』、創作された『涅槃経』を『大乗涅槃経』と呼ぶのだそうで、タイトルはその意味での表記です。
『原始涅槃経』は、パーリ語で書かれているので「マーハーパリニッパーナ・スタンタ」と言い内容を知るには岩波文庫の『ブッダ最後の旅 大パリニッバーナ経』という中村元先生の訳されたものがあります。
『ブッダ最後の旅』には、釈尊の最後の言葉が、次のように訳されかかれています。
そこで尊師は修行僧たちに告げた。
「さあ、修行僧たちよ。お前たちに告げよう。『もろもろの事象は過ぎ去るものである。怠ることなく修行を完成なさい』と。」
これが修行をつづけてきた者の最後の言葉であった。
これについての中村先生は訳注で
これによると、仏教の要訣は、無常をさとることと、修行に精励することの二つに尽きることになる。<無常>の教えは、釈尊が老いて死んだという事実によって何よりもなまなましく印象づけられる。それがまた経典作者の意図であった。ところが年代の経過とともにゴータマ・ブッダは仏として神格化され、仏の出現は稀であるとか、仏の身体がみごとであるとかいう神学的思弁が諸異訳のうちに付加されることになった。
と書いています。
他の『原始涅槃経』の解説本として、NHK出版の「シリーズ仏典のエッセンス」という本が刊行されています。その本は上の写真のもので、『パリニッバーナ 終わりからの始まり 下田正弘著』といい、そこでは、釈尊の最後の言葉は、「無常と情熱 釈尊の最期のことば」という章で、
つくりあげられたものは、滅びてゆく。あなたがたは、熱烈に、なすべきことを完成しなさい。
と訳され、
釈尊が入滅の直前に残された、最期のことばです。「つくりあげられたものは、滅びてゆく」とは<諸行は無常であること>とまったく同義で、仏教が説く耳に親しい教えです。けれども、それには後半、すなわち「あなたがたは、熱烈に、なすべきことを完成しなさい」という一説がつづいています。
と解説されています。
仏教の三つの命題である「諸行無常 一切皆苦 諸法無我」の内「諸行無常」は釈尊の最後の言葉であることが分かります。
プッシュ願います。