グリーンエコーの秋の演奏会はオーケストラなしのコーラスのみの構成で開催されました。18時開演の名古屋芸術劇場コンサートホールは、大勢の観客で客席が埋まりました。グリーンエコーの演奏会ならクラシックだと思ったら、今回はくつろいで聴ける歌曲を中心した演目となりました。僕は歌曲にすこぶる疎い者だから、逆に何も情報を入れずにまっさらな気持ちで拝聴することにしました。プログラムは三部。新実徳英の「白いうた 青いうた」から7曲、ボブ・チルコットの「ソング・ブック」から5曲、間宮芳生「12のインヴェンション」から5曲、アンコールに同じく新実徳英の「白いうた 青いうた」から「ぶどう摘み」です。正直言えば、このようなコンサートは初めての経験なので、集中して耳を傾けて聴いていたら、あっという間に演奏が過ぎてしまいました。「白いうた 青いうた」の詩は谷川雁によるもので、グリーンエコーのコーラスで聴くと最初は「みんなのうた」に聴こえてしまいました。シュールだけどどこか素朴な詩に男女混合コーラス。僕の引き出しにはそんなイメージしかありませんでした。しかし、ただ音符に合わせて合唱しているのではなく、歌詞の内容からその場面を表すかのように歌っていることが読み取れました。「ちいさな法螺」では指を鳴らし気取って歌い、「いでそよ人を」では、風が吹くように声を響かせて歌うのです。歌詞のテーマに合わせて役作りをしているようです。第一部はマニアックな耳を持たずとも楽しめる曲が多い気がしますが、「ぶどうとかたばみ」「北のみなしご」「南海譜」はグリーンエコーらしく反戦のスピリッツを感じる選曲です。テナーはドラマチックに、ソプラノは物悲しく聴こえました。第二部のボブ・チルコット作曲(または編曲)では「赤とんぼ」「ダニー・ボーイ」「スカイ・ボート・ソング」「ランナー」「百合と薔薇」を歌い上げ、日本、アイルランド、スコットランド、アメリカ、イングランドと海外の声楽曲を散りばめた選曲になっています。「赤とんぼ」は誰が聴いても馴染み深いですね。羽音をハミングにしたりしてアイデアも素晴らしかったです。ハーモニーはとてもシルキーでした。シューマンの盗作疑惑の比較まで披露してくれたので勉強になりました。気に入ったのは「ランナー」でした。ランナーが息を吐く音や地面を蹴って走り去る音までコーラスしてしまうなんてユニークです。リズムの乗り方も一段と良かったんじゃないでしょうか。ドゥ・ワップを思い出します。第三部の「12のインヴェンション」はすべて日本民謡です。「おぼこ祝い唄」(青森)「米搗唄」(岩手)「田の草取り唄」(秋田)「知覧節」(鹿児島)「のよさ」(長野)と僕には馴染みのないものばかりでしたが、この部の歌が一番歌い易かったのか、生き生きしていました。日本民謡は労働唱歌と言ってもいいくらい農作業と関係があります。つまりあまり深い意味はありません。元来、力が入り易くなるような機能を重視していると思われます。ですから同じDNAを持つグリーンエコーのメンバーも力が入り易かったのでは?と思いたくなりました。それが凄みとなって天井や壁に反射し、ホールに生命力あふれるコーラスが生まれました。生きるとは、すなわち生活することであり、生活の中には歌がある。そして一人が歌う歌より大勢が歌う歌へ。今回、コーラスだけの(伴奏でピアノは使いました。渡部真理さんのピアノは見事!)コンサートでずっと電気で増幅されていない人の声だけを聴いみて、その音楽性の深みを知った気がしています。iPodにもユーチューブにはない生のコーラスを聴いてきました。
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