スケッチブック 〜写真で綴るスローライフな日々2

写真を撮りながら、日々の暮らしや旅先で感じたことを書いています。
2016年からは撮った写真をイラスト化しています。

スローミュージック SELECTION Vo.82

2010年11月17日 | スローミュージック
in the studio/SPECIAL AKA

ロックはその昔、強いメッセージを持っていて、聴く者にただでは済まさない何かがありました。少なくとも僕がティーンエイジャーの頃はそんな気概が世の中に残っていました。好感度ばかりを気にしている音楽が当たり前の今では考えられないくらいです。ジェリー・ダマーズ率いるスペシャルズがスカのリズムを基本にしたバンドを結成して注目され、自ら企画したツートーン・レーベルからはマッドネスを送り出し、ヒットチャートを賑わしていたにもかかわらず、スペシャルズは解散してしまいました。スペシャルズは当時のイギリスが不景気で政治不安などの若者の声を代弁するかのような歌詞でパンク・ムーヴメントの渦中にいたグループでした。僕はまだ若過ぎてそのメッセージをよく理解していなかったけど、ライブなどカセットテープに録ってよく聴いていました。解散後、同じツートーン・レーベルから1984年にリリースされたのがこのスペシャルAKAの「イン・ザ・スタジオ」です。スペシャルズの路線は踏襲されながらも、スカのリズムにホーン・アンサンブルが加わり、更にエスニックな味付けが随所に散りばめられ、多彩なナンバーが目白押しのロックの傑作になりました。どれもシングルカットしてもいいくらい粒ぞろいです。始めは、何も考えずにただ聴いていただけなので、いい曲だなあと思っていたくらいでした。アナログ盤を入手して6曲目の「NELSON MANDELA」の歌詞を知ったことでこのアルバムの奥深さを再認識したのです。ア・カペラのコーラスで「FREE! NELSON MANDELA......」と歌い出し、ボーカルのスタン・キャンベルにつながっていくイントロダクションで、明るくポップで裏ビートのノリが良過ぎるので見過ごしがちですが、歌詞の内容は「ネルソン・マンデラを解放せよ!」で始まる曲だったんです。当時の南アフリカでアパルトヘイトと闘い、幽閉されていたネルソン・マンデラ氏の解放は、それすなわちイギリスの移民追放を景気対策にした政府に対する反発であり、雇用問題に直面した若者の怒りから発せられたメッセージだったんです。美しいメロディに合わせてこんあ歌を歌っていたなんて。歌詞の意味がすぐわからないほど英語力がないので気付くのが遅かったです。スペシャルズもスペシャルAKAも白人と黒人の混成バンドでしたから、人種差別問題は大きなテーマだったと思います。ボーカルのスタン・キャンベルも黒人で、その後ソロでアルバムを発表し、ピーター・バラカン司会のポッパーズMTVで紹介され、ブレイクしたのもよく覚えています。でも素晴らしい出来映えには変わりありません。ヒット曲となった3曲目「WHAT I LIKE MOST ABOUT YOU IS YOUR GIRLFRIEND」なんてどこか不気味でコミカルで不思議なナンバーなのですが、プロモーション・ビデオのインパクトも強く忘れ難い魅力があります。結局このアルバム一枚だけを残してスペシャルAKAは解散してしまうので(再結成されるがジェリー・ダマーズは不参加)残念な気がします。ネルソン・マンデラ氏は今年、サッカー・ワールドカップの開会式に参加してその姿を見た時は、どうしてもこのアルバムのことを思い出してしまった僕なんです。

イン・ザ・スタジオ
コメント
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