Sightsong

自縄自縛日記

吉増剛造『我が詩的自伝』

2016-06-13 22:23:18 | 思想・文学

吉増剛造『我が詩的自伝 素手で焔をつかみとれ!』(講談社現代新書、2016年)を読む。

最初から最後まで「種明かしの見せ消し」のようなこの人の詩は、昔からさほど好きにはなれない。編集者なのである、ただしそれはあまりにも異常な。そのことが本書に付き合っていくと嫌というほどわかる。作業自体が、敏感な神経を触っては叫び、それを形にしていくような感覚もある。

このヤバさは、伊藤憲『島ノ唄』、ジョナス・メカス『富士山への道すがら、わたしが見たものは……』、小口詩子『メカス1991年夏』といった本人が登場する映画を観ても、また実際に朗読する姿を目の当たりにしても(吉増剛造「盲いた黄金の庭」、「まず、木浦Cineをみながら、韓の国とCheju-doのこと」)、恐怖感とともに伝わってくるものだ。

そのことと関係があるのかどうか、吉増剛造ファンには、彼の詩よりも佇まい(キャラともいう)が好きな人が少なくないのではないか。


白石民夫@新宿西口カリヨン橋 その4

2016-06-13 07:01:42 | アヴァンギャルド・ジャズ

先週に続き、新宿西口カリヨン橋において白石民夫さんの路上パフォーマンス(2016/6/12)。

演奏の30分ほど前、21時半ころに着くと、まだ白石さんしかいなかった。いきなり、普通の勤め人に見えるねと微笑んで言われてしまったのだが、わたしは普通の勤め人である。クリス・ピッツィオコスの話などを伺っているうちに(ふたりはNYのDowntown Music Galleryで同じ日に吹いている)、やがて20人ほどが集まってきた。他称映像作家のYさんも、これを企画したゴールデン街・裏窓のマスターも、Gaiamamooという即興ユニットの二人組も現れた。

曇り空に突き刺さる鋭い高音の断片群。先週とはまた違い、より聴く者の心をダイレクトに抉るものだった。そしてヴァイオリンの後飯塚僚さんも加わり、背後で、微分的で独立的な音を発した。その作用なのか、白石さんも自ら痙攣するようにして、30分もの間、新宿を裂いた。

白石民夫 (as)
後飯塚僚 (vl)

Fuji X-E2、XF60mmF2.4

●参照
白石民夫@新宿西口カリヨン橋 その3(2016年)
白石民夫@新宿西口カリヨン橋 その2(2015年)
白石民夫@新宿西口カリヨン橋(2015年)


吉野弘志+中牟礼貞則+廣木光一@本八幡Cooljojo

2016-06-13 00:53:04 | アヴァンギャルド・ジャズ

本八幡のCooljojoにて、「along with jojo」という企画でのライヴを観る(2016/6/12)。

Hiroshi Yoshino 吉野弘志 (b)
Sadanori Nakamure 中牟礼貞則 (g)
Koichi Hiroki 廣木光一 (g)

何しろウルトラレジェンド・中牟礼貞則である。『銀巴里セッション』だぞ。

最初は中牟礼さんと吉野さんとのデュオで、ジム・ホールの「Something Special」、ミシェル・ペトルチアーニの「Morning Blues」(これも『Power of Three』においてジム・ホールがギターを弾いている)など。廣木さんが加わり、高柳昌行らしく、レニー・トリスターノ「317 East 32nd Street」とリー・コニッツの「Dream Stepper」。セカンドセットは、中牟礼・廣木デュオで廣木さんの「Sleeping Jojo」などのあと、トリオで、ホールの「Running Out of Gas」、中牟礼さんのオリジナル「In A Stream」、スタンダード「All The Things You Are」、そしてアンコールでハーブ・エリスらの「Detour Ahead」。

手探りのように弾き始めた中牟礼さんは、やがてノッてきていい音を出した。太くクリアであり、和音は丁寧にぶつからず、しかし、じゃーんとキメる。この味わいといったらまさに妙なるもので、そこには日本ジャズの歴史が濃厚な出汁となって溶け込んでいるのだった。これに、やはり吉野さんの丁寧なベースと、モランディの静物画を思わせる静謐感のある廣木さんのギターが絡んでいくと、しばしば至福で頬が動いてしまう。

中牟礼さんは高柳昌行、渡辺貞夫と同学年で(1932年度)、なんと、高柳と目黒のアパートで一緒に住んでいたことがあるのだという(正確には、毎日のように高柳が泊りがけで来ていた)。曰く、高柳は音楽的にたいへん大きな足跡を残した人であり、アメリカでも比肩するような人はいなかった、ギタリストの範疇を超えた音楽家であった、と。また、このような響きのいいハコができてよかった、と。

音楽とは人であるということを実感させてくれるライヴだった。

「もう40年くらい前のCDじゃない?」と、とんでもないことを。(本当は20年ちょっと前)

●参照
宮野裕司+中牟礼貞則+山崎弘一+本多滋世@小岩フルハウス(2013年)
内田修ジャズコレクション『宮沢昭』(1976-87年)(中牟礼貞則参加)
『銀巴里セッション 1963年6月26日深夜』(1963年)(中牟礼貞則参加)
松風鉱一トリオ@Lindenbaum(2008年)(吉野弘志参加)
廣木光一+渋谷毅@本八幡Cooljojo(2016年)
Cooljojo Open記念Live~HIT(廣木光一トリオ)(JazzTokyo)(2016年)
廣木光一(HIT)@本八幡cooljojo(2016年)