Sightsong

自縄自縛日記

豊里友行『オキナワンブルー』

2016-06-16 22:50:29 | 沖縄

豊里友行『オキナワンブルー 抗う海と集魂の唄』(未來社、2015年)。この写真集を逡巡した結果買ったのだが、やはり素晴らしい作品に仕上がっている。

なぜ逡巡したかと言えば、それは氏の写真を立派な印刷と製本により鑑賞すべきなのかどうか、いまだに判断できないからである。皮肉などではない。

辺野古において行使されている暴力、基地というものが入り込んだ日常、路地で遊ぶ子どもたち、やむにやまれず権力への抵抗を続ける人たち、夜の街の米兵たち、このナマの姿は、常に、視えない沖縄に身を置き続けている氏でなければ、決して撮ることができなかった写真に違いない。

一方で、2014年末に、廉価にて運動の場において売られていた小さい写真集『辺野古』。廉価とは言っても、かつて土門拳が筑豊で撮って敢えて安い印刷製本で売ったものとは違い、かなりいい印刷であることは確かである。そして、今回の『オキナワンブルー』とも重なる写真が少なくない。決定的な特徴は、各頁の写真の下に、短い解説が書かれていることだ。運動のためであり、とても写真の意味するものが解る形である。しかしそのことが、解説以外の写真の観方を制約している。結果的に、「ためにする」写真でもある。

以前の写真集『沖縄1999-2010』は、判型が途中で大きくなったことによって、写真の見ごたえが明らかに増した。今回の『辺野古』と『オキナワンブルー』との違いはそれ以上のものである。

北井一夫さんは、かつて宴席で豊里さんの写真について触れ、写真芸術が政治に依拠する時代は終わったと言った。

わたしなどには結論が出せないし出すべきでもないのだと思う。なんにせよ、『オキナワンブルー』は素晴らしい写真集である。

●参照
『越境広場』1号(2015年)(豊里友行氏と石川竜一氏との対談)
『LP』の豊里友行特集(2012年)
豊里友行『沖縄1999-2010 改訂増版』(2010年)
豊里友行『沖縄1999-2010』、比嘉康雄、東松照明(2010年)
豊里友行『彫刻家 金城実の世界』、『ちゃーすが!? 沖縄』(2010年)