菊池道人
2003年11月発行
新選組きっての剣の達人との呼び声も高い、三番組組長の斎藤一の半生を描いた長編小説。
第一章 池田屋事件
第二章 油小路
第三章 必殺! 突き技ーー天満屋事件
第四章 敗走
第五章 新生の地 会津
第六章 春なき新天地
第七章 昨日の敵は今日の友なれど
第八章 侍たちへの挽歌ーー西南の役
最終章 永久(とわ)なれ 会津 長編
新選組設立当初から隊に籍を置き、局長・近藤勇の信頼の厚かった、屈指の剣士・斎藤一の、京での戦いから、会津へと転戦。
維新後は、会津藩士と行動を供にし、斗南で苦渋を舐め、やがて警視庁警部補として西南戦争に従軍し、武士道を全うしながらも、新選組時代に密偵として御陵衛士に潜入、または、暗殺を繰り返したことに、苦悶する斎藤の姿を描いている。
小説であるが、作者の史実を追求しようと試みが、随所に現れ、ルポ的要素も強く、斎藤一という人物を知る上では、資料的な作品とも言えるだろう。
ただ、ところどころで「おやっ?」と思わせる部分があり、それは、当方が知りうる事実と若干の違いがある。
しかし、参考文献として列記されている莫大な資料の数々を踏まえての作品なので、当方の情報の違いの可能性が大きいのだが…。
例えば、山崎烝は江戸への帰還中の富士山丸の中で死亡とされているが、本書では、鳥羽伏見の戦にて戦死。
同じく、斉藤一も富士山丸にて帰還となっているが、富士山丸は近藤、土方歳三、沖田総司と負傷兵であり、斎藤は永倉新八らと順陽丸にて帰還である。
また、最初の妻である篠田やそと高木時尾の件は、完全にフィクションだろうと思われる。
篠田家は「諸士系譜」からも確認される名家で、会津藩士としては大身に属する。
さらに、斎藤と高木時尾は斗南藩時代の再婚であるとされるが、本書では東京に出てからとなっている。
小説であるので、多少の演出は踏まえた上だが、やその弟・春吉に関する記述は、フィクションであると著者が唱っているにも関わらず、そのほかに関しては何も注意書きがないので、当方がこれまで踏まえていた史実が違っているのか、今後も目を離せなくなった。
薩摩藩との関わりなどは、物語を盛り上げるフィクションだろう。
小説なのだから…分かってはいるが、ほかの部分がルポ的に忠実なので、ほんの些細な食い違いが気になるといったことである。
物語としては、斎藤一という男の気骨を感じさせる良い話である。
「今、会津を見捨てるは、武士道に非ず」。このひと言が斎藤一の全てを物語っているだろう。
かくゆう、新撰組フリークとしてあちこち史跡を訪ね歩く当方が、隊内で最も好きなのは、斎藤一である。
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新選組きっての剣の達人との呼び声も高い、三番組組長の斎藤一の半生を描いた長編小説。
第一章 池田屋事件
第二章 油小路
第三章 必殺! 突き技ーー天満屋事件
第四章 敗走
第五章 新生の地 会津
第六章 春なき新天地
第七章 昨日の敵は今日の友なれど
第八章 侍たちへの挽歌ーー西南の役
最終章 永久(とわ)なれ 会津 長編
新選組設立当初から隊に籍を置き、局長・近藤勇の信頼の厚かった、屈指の剣士・斎藤一の、京での戦いから、会津へと転戦。
維新後は、会津藩士と行動を供にし、斗南で苦渋を舐め、やがて警視庁警部補として西南戦争に従軍し、武士道を全うしながらも、新選組時代に密偵として御陵衛士に潜入、または、暗殺を繰り返したことに、苦悶する斎藤の姿を描いている。
小説であるが、作者の史実を追求しようと試みが、随所に現れ、ルポ的要素も強く、斎藤一という人物を知る上では、資料的な作品とも言えるだろう。
ただ、ところどころで「おやっ?」と思わせる部分があり、それは、当方が知りうる事実と若干の違いがある。
しかし、参考文献として列記されている莫大な資料の数々を踏まえての作品なので、当方の情報の違いの可能性が大きいのだが…。
例えば、山崎烝は江戸への帰還中の富士山丸の中で死亡とされているが、本書では、鳥羽伏見の戦にて戦死。
同じく、斉藤一も富士山丸にて帰還となっているが、富士山丸は近藤、土方歳三、沖田総司と負傷兵であり、斎藤は永倉新八らと順陽丸にて帰還である。
また、最初の妻である篠田やそと高木時尾の件は、完全にフィクションだろうと思われる。
篠田家は「諸士系譜」からも確認される名家で、会津藩士としては大身に属する。
さらに、斎藤と高木時尾は斗南藩時代の再婚であるとされるが、本書では東京に出てからとなっている。
小説であるので、多少の演出は踏まえた上だが、やその弟・春吉に関する記述は、フィクションであると著者が唱っているにも関わらず、そのほかに関しては何も注意書きがないので、当方がこれまで踏まえていた史実が違っているのか、今後も目を離せなくなった。
薩摩藩との関わりなどは、物語を盛り上げるフィクションだろう。
小説なのだから…分かってはいるが、ほかの部分がルポ的に忠実なので、ほんの些細な食い違いが気になるといったことである。
物語としては、斎藤一という男の気骨を感じさせる良い話である。
「今、会津を見捨てるは、武士道に非ず」。このひと言が斎藤一の全てを物語っているだろう。
かくゆう、新撰組フリークとしてあちこち史跡を訪ね歩く当方が、隊内で最も好きなのは、斎藤一である。

