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しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

高みの見物 北杜夫著 新潮文庫

2015-08-29 | 日本小説
北村薫のあとは北杜夫....。
つながっているような、いないような…。

本書は小学生時代に図書館で借りて読んだのが初読。
その後単行本を古本屋で買って持っていたので好きだったんだろうなぁ…。
ツボにはまって笑いが止まらず読んだような記憶があります。

2年前に引っ越すときに「まっいいだろう」と単行本は処分してしまいましたが、機会があったら文庫版をブックオフで入手しようとしていました。

しかし探すと意外と見つからない…。

今年になってやっとブックオフで見つけて108円で購入しました。

内容紹介(裏表紙記載)
海外放浪癖があり、“高級”ゴキブリを自称するわたしは、南洋漁業調査船に潜伏しているうち、なまけ者の船医、目玉医者の奇妙な言動に興味をそそられ、帰国する彼についてゆくことにした。彼の友人でヘチマのような顔をしたケチの食いしん坊、SF四文作家氏の家庭にも触手を伸ばしたわたしは、両家を往復しつつ、複雑怪奇な人間世界の“高みの見物”としゃれこんだ。


小学生時代に最初に手に取った動機は同じ著者の子供向けの作品「ぼくのおじさん」(単行本)の解説で本書の紹介があったためだったような…。
前半の主人公の目玉医者が「ぼくのおじさん」に出てくる「おじさん」と境遇やら行動が似ています。
(というかモデルはどちらも著者なわけですが)

目玉医者登場部分は「どくとるマンボウ航海記」と「ぼくのおじさん」を足して、漱石の「吾輩は猫である」の「猫」を「ゴキブリ」に変えたような展開で正直安直ではあります。
本書の出版年が1965年10月、「ぼくのおじさん」が1972年出版のようですから「ぼくのおじさん」的描写は本書の方が本家ではあるようです。

小学生時代に読んだときはとても笑えた作品だったのですが、今回改めて読んでみると35年の歳月は大きく残念ながらそれほど笑えませんでした。
目玉医者の名前が出たところで吹き出したくらい...。
(電車の中なので少し恥ずかしかった)

吹き出すほど笑える場面はそれほどなかったですが、読みだす前にひそかに心配したほどつまらなくもなくユーモア小説として気軽に楽しくは読めました。
でも終盤の四文作家の旅立ち後の船の中の描写は少し手抜きなような感じはしました...。

現在本書はkindle版のみでの販売のようですが今日的な価値は薄いかもしれませんね。
ゴキブリが主要登場人物(?)な作品は世界的にも珍しいとは思うのでそういう意味では貴重な作品なんですけどねぇ。(笑)

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いとま申して 北村薫著 新潮文庫

2015-08-22 | 日本小説
新渡戸稲造」で戦前の日本に浸ったのでさめないうちに(?)ということで本書を手に取りました。

ブックオフで200円で売っていたものを購入。
単行本で2011年刊行された作品。

題名の「いとま申して」は主人公である著者の父親の辞世の句からとったものとのことです。

内容紹介(裏表紙記載)
父が遺した日記に綴られていたのは、旧制中学に学び、読書と映画を愛し、創作と投稿に夢を追う父と友人たちの姿だった。そして彼らが夢を託した雑誌「童話」には、金子みすゞ、淀川長治と並んで父の名が記されていた―。著者の父の日記をもとに、大正末から昭和初年の主人公の青春を描く、評伝風小説。


内容紹介にもあるように作者の父親の日記を基にした作品です。
主人公は明治42年生まれ、日記の最初の部分は大正13年1月、満14歳から始まっています。(平成4年に故人となられたとのこと、つい最近まで明治も近かったんですねぇ)

関東大震災は大正12年9月。
日記が始まる大正13年1月にも余震が多くあったと書かれているようです。
この辺も東日本大震災後の余震にも通じるものがある感じですね。

本書を読み始めてすぐ「肉親の日記を基にした作品」つながりで星新一の「祖父 小金井良精の記」を思い出してしまいました。
(読了後もなにか似ているなぁとの印象は消えていません。)

序盤「星新一の方が上だなぁ」などと思っていたらかなか作品に入っていけませんでしたが、本作の日記の引用部分と作者の思い的部分が渾然一体としている文章もなかなか味わい深くこれはこれでいいなぁなどと感じだしたころには作品に入っていけました。

文筆家を志しながらも教師となった主人公である著者の父親と、教師となってから文筆家となった著者の思いは時代を超えてつながるものがあるんでしょうねぇ…。随所にクロスオーバーしながら話は進んでいきます。

この本をわざわざ読もうなんて人はそこそこ本好きで「自分もあわよくば小説家に」などと一度は思った人が多そうです。
私も小学生時代ちらっと思ったことがありますが….自分の才能のなさはこのブログの文章を見てもわかるように思い知ってもいますが..。

自負を持って童話を書いて雑誌に投稿している主人公が最初は中学生らしい自信を日記に書き記している姿は多くの読者の思いと重なる部分があるのではないでしょうか。

雑誌に入選するぐらいですから「童話作家」としてそれなりに才能もあったのでしょうが、それなりに裕福な家庭に育ち文筆の世界に入りきれない姿…。

慶応予科で同人誌に作品を書いたりしながらも年を追うごとに自分の才能の程度も見えてきてしまう哀しさ…。
この辺も北村作品読者層の情感をくすぐりそうです。

本書は昭和4年3月29日主人公の20回目の誕生日、慶応予科を終わる所で終わります。

続編で主人公は慶応の本科に進み恩師である折口信夫と出会って以降のことが書かれているようなので読みたいところですが...まぁ文庫が出てからかなぁ。

「評伝」ということで他の北村作品のようなセンチメンタルさは抑え目ですが読了後なにやらやるせない思いを抱きました。

最近の北村作品は初期とくらべ「いまいち」とも思ってたのですが、本作読んである種枯れた新境地のようなものを感じました。

円紫師匠とわたしシリーズの新作も出たようでこれも気になるんですが…。

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新渡戸稲造 杉森久英著 人物文庫

2015-08-15 | 日本小説
本の感想久々ですが...。

6月にちょいと転勤したりでバタバタして感想を書く間がありませんでしたが、本はペース落ちながらも読んでいます。
最近はSF離れしていますが、本を読むこと自体はやめられないようです。

ということで感想もボチボチ書いていこうと思います。

本書を読んだのはもはや4~5ケ月くらい前ですが…まぁ思い出しながらで。

SFにも飽きたところで本書をブックオフで見かけて購入し

読み始めました。

美酒一代」のところでも書きましたが小学校時代「天皇の料理番」をテレビで見て当時単行本で出版されていた「天皇の料理番」を読んで以来杉森久英氏の作品を愛読しており密かに(?)杉森作品全作コンプリートを目指しているためブックオフの「す」の棚は必ずチェックしています。
(「天皇の料理番」再ドラマ化されたのを期に杉森作品いろいろ復刊されればいいなぁ…)
矢野徹コレクションと比べると集まり具合はいまいちですが…。

本書は1991年発刊と著者晩年の作品だったため、ブックオフで見かけるまで作品の存在自体知りませんでした。
そのため本書を108円棚で見つけたときは結構うれしかったです。

内容紹介(裏表紙記載)
杉森久英の伝記小説「新渡戸稲造」は小説としても十分読み甲斐のある小説であったが現代の教育現状を視野に入れれば、新渡戸の教育方針こそ、学校再建のために資すること大である。学校関係者はもとより、就学者の子女を持つ人びとにもこの伝記小説が広く読まれることを薦めたい。-解説より


私が「新渡戸稲造」の名前を最初に見たのは、小学生時代に星新一の「明治・父・アメリカ」か「明治の人物誌」を読んだとき。
これまた杉森作品で描かれている「後藤新平」とセットで登場している感じでした。

その当時は一般的に「有名」という感じの人ではなかった記憶があります。

前の5.000円札に新渡戸稲造の肖像写真が採用され、著書である「武士道」(まぁ英文を和訳したものですが)がちょいともてはやされたりしていた時期もあったので、昔よりは有名だとは思いますが、それにしても何をやった人かぱっとわかる人はそんなにいない気がします…。

学者のような教育者のような文筆家のような政治家のような行政家のような....。
なかなか「これをやった人」という枠にはめにくい人物ですから一般受けしないんでしょうねぇ。
しいていえば「国際人」という人です。

そんな感じで割と地味な人物なわけですし、「美酒一代」が期待外れだったのでまったく期待しないで読みましたが….。

本作かなりの名作と感じました。

明治維新の6年前に東北の士族として生を受けた身で、明治国家の中枢に入り込んでいくことや、当時の米国社会で東洋人がある程度のステータスを得ること。
当時の国際聯盟の事務次長にまでなってしまうんですから只者ではない…。

非凡な人物にはなし得ないことですが、それだけに無理をしている部分や限界的なものもあるわけで、「新渡戸稲造」を礼賛するわけでも批判するわけでもなく冷静な目線で書かれていて等身大の新渡戸稲造の人物が迫ってくるような気がしました。

明治期のいけいけな日本、大正デモクラシーの時期と活躍してきて、軍部の台頭する昭和を迎えるわけですが...。

時代が異なるとなかなか適合できず活躍も難しくなります。
なんとか軍閥台頭や日米開戦を回避しようとするわけですが...難しい...。

その辺、東北出身ながら長州閥にかわいがられていた後藤新平との関係、その死後の新渡戸の影響力の顕著な低下などが背景にあったりするのでしょうがそれがそのものずばり書かれているわけではな。

ただなんとなく「そんなことかなぁ」と感じられさせられるわけですが、時代」移り変わりと「人」の仕事について考えさせられました。
「人」がそれほど変わるわけではなくても「周り」との関係が変わると仕事のしやすさも変わってくる...。

一部門の「学者」として優秀な人であれば周りが変わってもそれほど影響はうけないのかもしれませんが(もちろんある程度は受けるわけですが)新渡戸のようなゼネラリストは影響を大きく受けるような気がします。

「裏表紙」では「学校教育」の問題に照らしわせて資すること大としていますが、激動の時代にマイナーな出自かつ専門的な知識がない人間が、「全体的な知識」と「前向きさ」(かなり世俗的はありますが)で時代と対峙していく姿こそ見るべき本ではないかと感じました。

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飲めば都 北村薫著 新潮文庫

2015-05-03 | 日本小説
新しい太陽の書」シリーズ5作を読んでお腹いっぱいだったこともあり「軽いものを」ということで本書を手に取りました。

北村薫の作品は円紫師匠とわたしシリーズ(の初期、最近新作出たようですが…)やスキップ、ターンあたりの作品を90年代前半にオンタイムで読んでいて大好きでした。

ただ最近の氏の作品は正直「いまひとつかなぁ」とも感じていて、本作主人公の「出版社勤務の若い女性」という設定が「円紫師匠シリーズ」的ということもあり前から気になっていながらも買うに至っていませんでしたが….。
今年の始めブックオフで108円のものを見つけ入手しました。
2011年新潮社から描き下ろしで発刊。

容紹介(裏表紙記載)
人生の大切なことは、本とお酒に教わった――日々読み、日々飲み、本創りのために、好奇心を力に突き進む女性文芸編集者・小酒井都。新入社員時代の仕事の失敗、先輩編集者たちとの微妙なおつきあい、小説と作家への深い愛情……。本を創って酒を飲む、タガを外して人と会う、そんな都の恋の行く先は? 本好き、酒好き女子必読、酔っぱらい体験もリアルな、ワーキングガール小説。


主人公、小酒井都のお酒にまつわるちょっとした謎やらなにやらを描いた連作短編という感じの構成です。
冒頭の新入社員時代の話が強烈で期待感を抱いたのですが...。
段々大人しくちぅちゃくまとまってしまったような…。
成長といえば成長なんですけどねー。
ラスト、結婚で終わるのもかなり安直ですし相手の職業やらキャラクターやらもいかにも北村薫的でひねりがない気がしました。

よくも悪くも北村薫らしい「善意」の世界が繰り広げられますが、登場人物全般紋切型です....。

作者になじみの出版界の事情とターン辺りで調べたであろう版画の知識やらを組み合わせて「安直に仕上げた?」という印象も...。

中盤の先輩女性編集者と後輩男性社員のエピソードを描いた「指輪物語」に初期の北村薫らしいテンションの高さをちらっと感じましたがそれ以外はまぁ軽く読むにはいいかなぁという程度の感想でした。

内容紹介も「そんな都の恋の行く先は?」「ワーキング・ガール小説」ですから安直としか思えないですよね....。

ただここまで安直な素材と展開でも円熟の直木賞作家 北村薫の作品ですから「面白い」ことは面白いので読んで損はないとは思います。(フォローになっていますかねぇ)
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流星ワゴン 重松清著 講談社文庫

2015-03-16 | 日本小説
珍しく最近の日本の小説です。
テレビドラマのインパクトで読んでみたくなり新品で(これまた珍しく)購入。

最近打っているのにはテレビドラマを意識したカバーがついていますが。
一皮むくと

本来のカバーとなります。

テレビの方はとにかく「忠さん」というか香川照之のインパクトでもっている感もありますが…。
重松氏の作品では「とんび」もテレビドラマを見て面白くて「買おうかなぁ」とも思ったのですがなかなか手に取れずにいたため本作が初読です。

内容紹介(裏表紙記載)
死んじゃってもいいかなあ、もう……。38歳・秋。その夜、僕は、5年前に交通事故死した父子の乗る不思議なワゴンに拾われた。そして――自分と同い歳の父親に出逢った。時空を超えてワゴンがめぐる、人生の岐路になった場所への旅。やり直しは、叶えられるのか――?「本の雑誌」年間ベスト1に輝いた傑作。


とりあえずの感想、テレビの方が面白い。
話的に映像化した方が見せやすいストーリーなのかもしれませんね。

テレビではかなり話を膨らませていますが、小説の方はすっと読めてしまいます。
原作どおりでやるなら2時間ドラマで十分かなぁ。

描写はシンプルかつストレートなので「裏を読む」とか「行間を読む」などという作業はいらない感じ。

上の子(男・小六)がテレビドラマにはまっているので、私が読んだ後息子に読ませようと思ってもいたんですが….。
主人公「僕」と妻の性交渉の場面があからさますぎて読ませる気になりませんでした…。

他は内容的にこどもでもOKと思うのでこれは惜しいですね....。
主人公・一夫の妻が「性的欲求」だけで浮気というか、欲求不満解消行動をするというのも説得力が弱いかなぁなどとも感じました。

過去にさかのぼって「事態をやりなおす」というのはタイムスリップものにありがちな話ですが、本作の場合SF的な意味で直接的に過去への働きかけはできず、結局は関係者間の「心の持ちよう」という非SF的(ファンタジー的?)な解決になっています。

まぁすっと読めて楽しく、「かっこつけないでホンネで語ろうよ!」というシンプルなメッセージも「なるほどね」とは思いましたが….。
再読はしないだろうなぁ….。
(ブックオフに売っちゃおうという感じ)

解説で齋藤美奈子子氏が、心理学的に暴君的父親を持った子供は反動で「愛情豊か」ないわゆる「優しい」父親になる。
その「優しい」父親に対して子供は「情けない」という感情をもつようになる。
というようことが書いてあり、ここに一番思う所があったかもしれない…。
(私もそんなケがあるので)
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