しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

新渡戸稲造 杉森久英著 人物文庫

2015-08-15 | 日本小説
本の感想久々ですが...。

6月にちょいと転勤したりでバタバタして感想を書く間がありませんでしたが、本はペース落ちながらも読んでいます。
最近はSF離れしていますが、本を読むこと自体はやめられないようです。

ということで感想もボチボチ書いていこうと思います。

本書を読んだのはもはや4~5ケ月くらい前ですが…まぁ思い出しながらで。

SFにも飽きたところで本書をブックオフで見かけて購入し

読み始めました。

美酒一代」のところでも書きましたが小学校時代「天皇の料理番」をテレビで見て当時単行本で出版されていた「天皇の料理番」を読んで以来杉森久英氏の作品を愛読しており密かに(?)杉森作品全作コンプリートを目指しているためブックオフの「す」の棚は必ずチェックしています。
(「天皇の料理番」再ドラマ化されたのを期に杉森作品いろいろ復刊されればいいなぁ…)
矢野徹コレクションと比べると集まり具合はいまいちですが…。

本書は1991年発刊と著者晩年の作品だったため、ブックオフで見かけるまで作品の存在自体知りませんでした。
そのため本書を108円棚で見つけたときは結構うれしかったです。

内容紹介(裏表紙記載)
杉森久英の伝記小説「新渡戸稲造」は小説としても十分読み甲斐のある小説であったが現代の教育現状を視野に入れれば、新渡戸の教育方針こそ、学校再建のために資すること大である。学校関係者はもとより、就学者の子女を持つ人びとにもこの伝記小説が広く読まれることを薦めたい。-解説より


私が「新渡戸稲造」の名前を最初に見たのは、小学生時代に星新一の「明治・父・アメリカ」か「明治の人物誌」を読んだとき。
これまた杉森作品で描かれている「後藤新平」とセットで登場している感じでした。

その当時は一般的に「有名」という感じの人ではなかった記憶があります。

前の5.000円札に新渡戸稲造の肖像写真が採用され、著書である「武士道」(まぁ英文を和訳したものですが)がちょいともてはやされたりしていた時期もあったので、昔よりは有名だとは思いますが、それにしても何をやった人かぱっとわかる人はそんなにいない気がします…。

学者のような教育者のような文筆家のような政治家のような行政家のような....。
なかなか「これをやった人」という枠にはめにくい人物ですから一般受けしないんでしょうねぇ。
しいていえば「国際人」という人です。

そんな感じで割と地味な人物なわけですし、「美酒一代」が期待外れだったのでまったく期待しないで読みましたが….。

本作かなりの名作と感じました。

明治維新の6年前に東北の士族として生を受けた身で、明治国家の中枢に入り込んでいくことや、当時の米国社会で東洋人がある程度のステータスを得ること。
当時の国際聯盟の事務次長にまでなってしまうんですから只者ではない…。

非凡な人物にはなし得ないことですが、それだけに無理をしている部分や限界的なものもあるわけで、「新渡戸稲造」を礼賛するわけでも批判するわけでもなく冷静な目線で書かれていて等身大の新渡戸稲造の人物が迫ってくるような気がしました。

明治期のいけいけな日本、大正デモクラシーの時期と活躍してきて、軍部の台頭する昭和を迎えるわけですが...。

時代が異なるとなかなか適合できず活躍も難しくなります。
なんとか軍閥台頭や日米開戦を回避しようとするわけですが...難しい...。

その辺、東北出身ながら長州閥にかわいがられていた後藤新平との関係、その死後の新渡戸の影響力の顕著な低下などが背景にあったりするのでしょうがそれがそのものずばり書かれているわけではな。

ただなんとなく「そんなことかなぁ」と感じられさせられるわけですが、時代」移り変わりと「人」の仕事について考えさせられました。
「人」がそれほど変わるわけではなくても「周り」との関係が変わると仕事のしやすさも変わってくる...。

一部門の「学者」として優秀な人であれば周りが変わってもそれほど影響はうけないのかもしれませんが(もちろんある程度は受けるわけですが)新渡戸のようなゼネラリストは影響を大きく受けるような気がします。

「裏表紙」では「学校教育」の問題に照らしわせて資すること大としていますが、激動の時代にマイナーな出自かつ専門的な知識がない人間が、「全体的な知識」と「前向きさ」(かなり世俗的はありますが)で時代と対峙していく姿こそ見るべき本ではないかと感じました。

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