思索の日記 (クリックで全体が表示されます)

武田康弘の思索の日記です。「恋知」の生を提唱し、実践しています。白樺教育館ホームと共に

公共哲学をめぐってー荒井達夫さんの質問と山脇直司さんのお応え

2007-01-09 | メール・往復書簡

元旦のブログのコメント欄にありますように、
山脇直司さんから「荒井達夫さんの質問書へのお応え」が私(武田康弘)宛に来ましたので、以下に載せます(プライバシーに関わるものでない限り、公開性が公共哲学の要諦です)。


1. 三元論の現実妥当性

 私(荒井)は、一般市民の意識や民法、行政法等の現実具体の例を挙げて、「公・私・公共三元論」が現実妥当性を欠いている、と批判しています。この論に山脇さんが反対する理由は何でしょうか。具体的に説明してください。

お応え→たとえば、1) 「国民主権」が意味するように、「民の公共活動や承認」が「政府の公的活動」の正当性(legitimacy)を成すということ、2) 「経済の私的活動」も「民の信頼という公共的徳性」に基礎を置いていることなどが挙げられます。また、3) 私立学校や私立病院やNGOは、「公共性」を義務づけられた「非公的組織」です。


2. 三元論と「民から開く公共哲学」

 私は、「公・私・公共三元論」は「民が支持しない公」を想定する点で非現実的・非論理的であり、「民から開く公共哲学」には不適切である、と批判しています。この論に山脇さんが反対する理由は何でしょうか。具体的に説明してください。

お応え→世論(公共論)の著しい支持率低下など、「民が支持しない公」は、実際にあり得ます。「民が開く公共性」によって「政府の公」が政権交代を余儀なくされることや、全体主義体制が崩壊することもあり得ます。


3. 三元論と天皇制

 山脇さんは、「三元論は天皇制批判を射程に収めている」と述べていますが、その理由を具体的に説明してください。また、私は、天皇制批判のためには「民から開く公共哲学」以外にあり得ないと考えていますが、山脇さんの考えを教えてください。

お応え→日本語の公には、「政府の公」以外に「天皇の公」というニュアンスが常に伴うばかりか、伊勢神宮には、まさにそういう立場から、神道を「政府公認の国家宗教」にしようとまで主張するパンフレットが置かれています。それで、荒井さんの言う「民から開く公共哲学」による天皇制批判のお考えには、共鳴します。


4. 国家公務員と市民

 山脇さんは、「国家公務員は極めて公(公共ではない!)に近い特殊な職業である」、「国家公務員を職業とする市民はふつうの市民ではない」と述べていますが、その理由を具体的に説明してください。

お応え→まず、公務員には一般市民には漏らしてはならない「守秘義務」が伴います。これは、「公共性」を成り立たせる条件の一つの「公開性」と矛盾します。ですから、公務員(public official)は、政府の公(the official, the goverbmental)に近いと私は考えます。しかし、その点を踏まえるならば、「国家公務員としての自己」と「一般市民としての自己」は両立可能だとも考えます。この関係は、「企業秘密」を抱える「私的企業人」と「公共的市民」の関係にもあてはまるでしょう。


5. 白樺思想と大学の「公共哲学」

 私は、「民から開く」という意味では大学の「公共哲学」より市民の集まりである「白樺」の思想の方が優れている、市民が求める哲学(人生や社会のありようを深く問う哲学)が「白樺」の方にあるのは事柄の性質上当然である、と考えています。また、これは白樺の人たちに共通する認識であると思っています。この論に山脇さんが反対する理由は何でしょうか。具体的に説明してください。

お応え→公共哲学は、大学だけで行われるものではありません。平和運動や教育基本法改悪運動にコミットしている公共哲学ネットワークもあります。また全20巻のシリーズに関して言えば、議論や討論によって互いの立場をはっきりさせること、いわば「アゴーン(闘技)としての公共性」が公共哲学の醍醐味を成しています。こうした点で、人生哲学と公共哲学は、やや異なっています。しかし私としては双方が大切と思っており、どちらが優れているといった優劣を論じる発想自体がナンセンス(無意味)です。とはいえ、現下の日本社会の惨憺たる状況をみるとき、武田さんたちの白樺グループの意義はとてつもなく大きいと思うので、エールを送るだけでなく、時間の許す限り、これからも協働・連帯していきたいと思っています。
以上です。

山脇直司




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