今日は故あって、とあるロシア料理店にお邪魔した。何を食べても美味しい店だ。加えて別の理由も私にはあったのだ。
この店はドンバス、つまり現ウクライナのロシア系住民の店なのだ。凄惨な攻撃をウクライナから受けている、あの地域だ。
ご家族はまだドンバスにいて、ウクライナからの脱出を試みている最中という。
2014年の暴力クーデターから、日々どんな恐怖をご家族は味わってきたか。住んでいる家に地下室を作って、その塹壕に暮らしているという。8年間塹壕から出られた機会は数えられるほど少ないと。
ウクライナ兵に殺された近所の人や知人もたくさんいる。それは数え切れない。彼らを埋葬さえ出来ない事態だという。何故なら地雷がどこにあるかわからないからだ。墓場は地雷が多いらしい。人がたくさん殺されるから、墓場に人が集まりやすいので、墓場に地雷を置くのだとさ。鬼畜な一石二鳥。
こんなに戦争が長引くとはドンバスの誰もが思わず、ただただ停戦を祈って来た。停戦協議も行われ、国際的協定のミンスク協定も合意発行された。だがウクライナ政府は、それを守ることは全くなかった。戦争は8年間続いている。
今年に入って、ウクライナ兵からの攻撃は激化。命の恐怖、それもネオナチによる惨殺の恐怖と隣り合わせの8年、加えての今年の激化。
こうした事態に関わらず、世界は自分達を助けるどころか、加害者扱をして、ウクライナ軍の攻撃はエスカレートしている。絶望的だ。
私が聞いて来た、ウクライナ長期取材の欧州ジャーナリスト達の話と、一つ一つ符号する。
脱出を試みている家族とまだ連絡がつかないと。ここまで聞いて、もう私も涙が止まらなくなった。
他に来ていた店の客はだいたい外国人だった。繁盛していた。
その後遅れて入って来た日本人客はメニューを見ながら
「なんだロシア産のものばかりじゃないか!!戦争をしているのに、ウクライナのものじゃなく、ロシア産のものを置くとはどういうつもりだ!!」
と大きく声を荒げた。高飛車もいいところだ。
「ここはウクライナ料理店はではなく、ロシア料理店なのです」
と辿々しくも、客に丁寧に答える。
「だから言ってやってるんだ!戦争をやっている国の酒や料理を出すなんて、間違ってる!!」
ウクライナ軍に散々鬼畜行為を受けて来たドンバス出身だなんて知りもしないだろう。怒鳴りつける為に、正義のために、店を予約していちいち来たのだ。
私はその客を睨みつけ、店の迷惑にならないようにどうすべきか悩みつつ、
「水なら日本産だと思うけどね」
と言った。
“ もうそう言う態度をやめろ、お前は水戸黄門か。即時裁判、刑執行ですか?” 苛立つ気持ちが言葉が、自分自身の中に溢れる。だが私がケンカを始めたら、店の人が余計に悲しむ。だからその後は目でひたすら訴えるしか、私には出来なかった。
「忙しくしてるけど、人気だとは思わない」
最初に自分のお店の事を笑顔で説明してた、その言葉の理由がわかった気がした。
帰り際「もうプーチンしか私の家族を救えないんです。。。」涙を浮かべていた。
日本にたどり着いた弱者のこの人の、この言葉、涙を批難出来る日本人は、どこにどれだけいるのだろう?
ウクライナの残虐行為を、私は仕事柄映像を通して散々見てきたが、生の声はまた違う重みを感じる。
帰り道で見かけたテレビのニュース、心無い客。我らが日本の善良なる人々の、裁判官のような正義の振る舞いの恐ろしさに心底震えがした。
またこの店に応援がてら、会いに行こう。せめて。
追記: 早速この店に嫌がらせに行こうという人物が出て来たので、写真からわからないように加工しました。
どの店であれ、ロシア料理店に嫌がらせに行くような人物は、ヘイトの自供をしにまずお近くの警察署へどうぞ。