思索の日記 (クリックで全体が表示されます)

武田康弘の思索の日記です。「恋知」の生を提唱し、実践しています。白樺教育館ホームと共に

丸山眞男による「戦後民主主義」の終焉ーマンガ『まさかの福沢諭吉』 雁屋 哲 原作。

2017-01-26 | 社会思想

確かにマンガですが、これは論文、否、ただの論文ではない絵巻物のような大作です。

戦後民主主義の不毛性の元がよく分かります。東大教授・丸山眞男は、今もなお東京大学関係者には「絶対」の存在で、政治学者の山口二郎さんも「戦後の民主主義は丸山眞男がいなければ無かった」とまで言います(偉い学者がいないと民主主義が始まらない?)。その丸山による福沢諭吉礼賛があって、諭吉は民主主義の旗頭のように思われてきましたが、それがどれほどの嘘かは、長年にわたり安川寿之輔さん(名古屋大学教授)が詳細に論じ、各地の講演会で明らかにしてきたことです。

それが分かりやすくマンガになったのを見て、わたしは、「ああ、これで戦後民主主義はおわったな」と思いました。

東京大学の有名な政治学者の丸山眞男の権威に依拠した民主主義では、あまりに脆弱です。demos(人々)+cracy(支配する)=デモクラシーになるはずがありません。明治政府(天皇制国家主義)の思想的牽引者であった諭吉を民主主義の先駆者=市民的自由の旗頭に仕立てての「戦後民主主義」は、虚構の上につくられたものでしかなく、終焉するのは当然です。

もちろん、安倍首相のように敬愛する祖父の岸信介が領導した戦前の靖国思想に戻れ=明治維新の偉業を再びというものではありません。権威に頼る思想や行動ではなく、ほんものの民主政治=自治政治へのチェンジというわけです。そのためには、明治の天皇制国家主義を「複眼的」というより「実利的」に支えた福沢諭吉の思想を検証し直す作業が不可欠です。このマンガの原作者である雁屋 哲さんは、福沢諭吉全集を読破し、核心的な部分を現代語訳して示していますので、とても分明です。

今後、政治学者も歴史学者もこのマンガを無視することはできないと思います。丸山眞男や福沢諭吉の思想(丸山諭吉)を是とする学者たちは、ここに書かれている内容に応えなければ存在理由がなくなります。ぜひ反論を書いてください。それでこそ学問です。『学問のすすめ』


武田康弘



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