拝啓 夏目漱石先生

自称「漱石先生の門下生(ただのファン)」による日記

『Kiss』/L'Arc-en-Ciel

2007-11-27 23:30:34 | アルバムレビュー
フラゲしてから一週間。とりあえず載せておこう。

『Kiss』/L'Arc-en-Ciel

01. SEVENTH HEAVEN
4つ打ちディスコ。「ロックバンドがこんな曲やる必要あんのか?」という意見と「生バンドでディスコが鳴らされる迫力がたまらん」という意見に分かれるのだろう。自分は後者。リズム隊がしっかりしてるバンドなんだからこういう曲やらないと勿体無いのでは。tetsuやkenほどメロディアスじゃないhydeの曲にディスコアレンジが結構ハマっている。美しいメロディーではなく、単純な展開のループで聴き手を幻惑させる。サビが何処だかイマイチよくわからないので「幻惑」ではなく「困惑」かもしれないが。

02. Pretty girl
ラルクらしからぬ軽薄な歌詞と、時にギターを食う勢いで鳴らされるホーンという、やりすぎ一歩手前の歌謡ロックアレンジが光る一曲。隙間無く詰め込まれるドラムと極太なのにメロディックなベースのフレーズが耳に気持ち良い。この二人が居なかったらオレンジレンジ風のチャラい曲に仕上がったかもしれない。ちなみに、一見軽薄な歌詞だが、作詞者kenがレコーディング中にハマっていた花札のあそびの一つ「こいこい」を思わせるフレーズが散りばめられている。冒頭の歌詞は「夢を見ていたよ濃い恋する夢 何でも上がってく」…意外に練られた歌詞である。

03. MY HEART DRAWS A DREAM
軽薄ムードを断ち切るシリアスなU2風のギターリフが響くイントロから、とことん抑えたAメロへ。以降、階段をスムーズに駆け上ったり転がり落ちたりする予測不可能のメロディーが紡がれる。それをきっちり歌いこなすhydeの歌が素晴らしい。サビの地声からファルセットへ切り替わる部分はこの曲のハイライト。Aメロで鳴ってるアルペジオも鳥肌モノ。案外あっさりと終わるラストを、スマートだと感じるか物足りないと感じるかは趣味の問題か。

04. 砂時計
夜空から何か降りてくるような(砂?)イントロからスムーズにAメロ→Bメロ→サビ…と連なる。必殺技でも繰り出すが如く、狙い通りビシっと決まったサビ前のブレイクが秀逸。作詞者・tetsuの溢れんばかりのメッセージがドサっと詰まっていそうな歌詞だが、「誰かの願いが叶うころ あの子が泣いてるよ」の一言で要約できる。

05. spiral
単調ながらもインパクトのあるメロディーを叩きつけてくる曲。ソロの時のhydeのワイルドな声でガンガン歌われてたら迫力満点だったかもしれない。多分、生歌だと映えるであろう曲。

06. ALONE EN LA VIDA
ふわふわと色気を振りまき、聴き手を幻惑しようとする、異国情緒溢れる曲。この曲の雰囲気はラルクの2ndアルバム『Tierra』によく似ている(あの当時のヴィジュアルでこの曲を演奏されたら困るが)。聴き手に各々の「郷愁」を想起させるような雄大なアレンジ。ひたすら涙を誘おうとしてくる綺麗なメロディー。ハマれば抜け出せなくなるだろうし、ハマらなければ右から左へスーっと流れていくだけで終わるだろう。

07. DAYBREAK'S BELL
「OPには聴いてテンションが上がる曲を!」と熱望するガンヲタに総スカンをくらっていたシングル。「こんな形の出会いしかなかったの?悲しいね」という歌詞が皮肉である。ガンヲタよ…。流れるような美メロはラルクに魅了されたヲタにはたまらないが、アニソンとしてはインパクトに欠けているのだろう。Aメロ・Bメロでほぼ逆方向に突き進んでいるようなベース・ドラムが、一気にシンクロするサビが聴き所。2番Aメロの風のようなギターのフレーズも聞き逃せない。

08. 海辺
出だしの打ち込みがちょっとありきたり過ぎやしないだろうか。ブリッジ部分「許されるなら~」あたりは、もうちょっとカオスな演奏が聴けるとラストの盛り上がりも映えたかもしれない。

09. THE BLACK ROSE
「hydeのソロ曲をラルクでやってみてほしい」という些細な願いを叶えてくれる曲。強力なリズム隊とスリリングなホーンが、hydeならではのサビで無理やり爆発するメロディーを、より一層盛り上げる。ラスト1分は冷や汗モノの名演。
空間をじわじわ埋めるギターも、血の滴りを思わせる歌詞を引き立てていて良い。hydeのソロに似てる、という意見をよく見るが、こんな曲ソロじゃ絶対聴けないはず。

10. Link -KISS Mix-
ふわっと噴出するようなサビのメロディーを引き立てる抑え目のBメロがこの曲のキモか。それにしても、ラルクがこんな跳ねたリズムの曲を生み出すとは。もう何でもアリだな。しかも作曲したのはブラックミュージックなんて全く興味無さそうなtetsu。この曲がリリースされた当時、同時にエグザイルとグレイのコラボレーション曲も発売されたが、エグザイル、グレイじゃなくラルクとコラボした方がハマってたりして。

11. 雪の足跡
手数の多さ、機械と完全にシンクロ出来る正確さが売りだったyukihiroだが、この曲では彼らしいプレイがやや希薄。かなり素朴な演奏を披露している。胸に手をあて懺悔したくなるパイプオルガンが冒頭で響くが、歌詞は日常風景を描いた異色の曲。でも、思わぬ所まで上りつめる奇特な歌メロ聴いてると「やっぱラルクだなぁ…」と感じさせられる。

12. Hurry Xmas
ゴージャスなジャズアレンジが施されているが、メロディー自体はいつものhydeそのもの。「HONEY」のような、勢いまかせの暴れ馬メロディーである。そんな曲をジャジーなクリスマスソングにしよう、という試みを実行し、「ディズニー映画みたい」と聴き手に思わせるほどの完成度まで持っていくラルクにとりあえず拍手を。ランニングし続けるベース…お疲れっす。


総評
「ディスコやりたい」「クリスマスソング作りたい」「美メロを極めたい」といったアイディアを過剰なまでに突き詰めまくったような曲が殆どである。その過剰さを「最高だ!」と思うか「やりすぎだろ…」と思うかで、どうしても賛否両論を生んでしまうのだろう。個人的にはこの過剰さがとても楽しかったので満足。「ラルクはこうでなくては」的な思い込みが無く、「何でもやる雑食バンド」という認識があれば多分とことん楽しめる。相変わらずリズム隊が大活躍してるアルバムなのでもっと聴き込むとさらに楽しめそうだ。
そういえば、このアルバムのインタビューでhydeは「作詞してると、大体2Aの部分で核になる言葉をあてはめちゃう」と発言している。2Aとは2番のAメロ。「1Aは出だしだから重要な言葉を乗せにくいし、サビはキャッチーにしなきゃいけないからやっぱり重要な言葉を乗せにくい」とのこと。これを手がかりに歌詞を読むと面白いかもしれない。
    




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