拝啓 夏目漱石先生

自称「漱石先生の門下生(ただのファン)」による日記

『TOKYO CLASSIC』/RIP SLYME

2007-08-21 10:01:40 | アルバムレビュー
せっかく書いたのでブログに載せておこう。

『TOKYO CLASSIC』/RIP SLYME(2002.7.24)

1.~Introduction~CHICKEN featuring Breakestra
ジャジーなトラックに乗せてメンバー紹介。

2.By the Way ★★★
アカペラで始まるが、だんだん一曲目の流れを引き継ぐ心地よいホーンとスクラッチが絡む。

3.Tokyo Classic ★★★★
ゲーセンによくある陽気な音ゲーから流れてそうなトロピカルなループ。一気に南国ムード。というか本当、ベタなぐらいリゾート気分。途中に「ラ~ララ~」というトボけたコーラスがそれを助長。皮肉交じりのSUのライムに痺れ、RYO-Zの「I wanna dance with you la chachacha」にズッコケ。

4.楽園ベイベー(Album Version) ★★★★
大ブレイクしたあの曲。まだまだ南国ムードは続く。FUMIYAのトラック作りの才能が冴え渡りまくり。これ、全部サンプリングなんだよな…。浮遊感のあるシンセとぶっとい低音が気持ちよすぎる。トローンとさせておきながら途中でふと目が覚めるような、中盤のブレイクの部分もキモ。ナンパ失敗した情けない情景を描き、「イメトレだけでまた今日もオナる~」とまでライムしているPESの声にすら和める、ヒップホップなんだけどヒーリング系ミュージックにも通じるような癒しのトラック。

5.Case 1 STAND PLAY ★★★
「リップスライム」と聞いて多くの人が思い浮かべる声の主、PESのソロ。タイトルが示すように、通常のリップスライムの楽曲でもあの声で時に全てを持っていってしまう感のある彼。こじんまりとしていて地味なトラックだが、奇妙さと可愛さを併せ持ったこの声に合っているのでは。

6.Case 2 MANNISH BOY(続Zeekのテーマ) ★
RYO-Zソロ。古き良きソウルナンバーのパロディーか、それとも真剣に歌っているのだろうか。物凄く面白い表情で歌う彼が想像できるのでおそらく前者だろう。あっという間に終わる。

7.FUNKASTIC ★★★★
燃えよドラゴンのテーマをサンプリングしたファンキーなトラック。ギターのリフ聴いてるだけでどんなリズム音痴でもなんとなく体が動いてしまう。冒頭のサビからRYO-Zのパートに転がり落ちる瞬間がとてもカッコいい。絡むピアノも絶妙。各ラッパーの個性をしっかり活かそうとバースごとに奇怪な音を入れ替わり立ち替わり詰め込み、間奏では自分のスクラッチの腕前もちゃんと魅せるFUMIYA、最年少だからして先輩を立てつつも、どこか裏番長の雰囲気。それにしても曲の雰囲気を一瞬で自分のモノにするPESの声、強烈すぎる。

8.奇跡の森 featuring Hirotaka Mori★★
シンガーをフィーチャーした曲。一曲目や二曲目と「FUNKASTIC」を混ぜたようなトラックなので、少々飽きが来る頃か。

9.Case 3 スーマンシップDEモッコリ ★★
SUのソロ。タイトル通り、卑猥なリリック。リップとは一線を画す、ややハードコアなトラック。SUらしさは良く出ているような。途中「音飛び?」と思うかもしれないが、音飛びではない。

10.Case 4 Bring your style ★★
イルマリのソロ。「楽園ベイベー」の温度を若干下げたようなクールなトラック。南国ムードを感じるが「楽園ベイベー」とは違い、軟派な感じはしない。

11.One ★★★
初期のDragon Ashのアルバムに入っていそうな、バンドサウンド(サンプリングだが)にラップをふわっと乗せた曲。夕日の下でみんなで合唱しているのが目に浮かぶ、ほのぼのトラック。PESとSUが何となく寂しげな雰囲気を作り、RYO-Zが流れをプツっと切り、イルマリがポジティブにシメる、というマイクリレー。

12.バンザイ ★
メロウな流れを断ち切る、ファミコンの音みたいなチープな小品。ガラっと曲調が変化する展開のちょっと驚く。

13.花火 ★★★★★
超メロウで叙情的。アコギやビブラフォーンなど、鳴ってる楽器全てがいちいち切なさを煽る。リリックの内容も寂しげ(特にイルマリのパート)。PESが歌うサビもメロディアスで、普通の歌モノポップスとしても優れている、涙腺直撃の日本人好みのトラック。ただ、RYO-Zのパートから雰囲気が若干明るくなるのが物足りない。寂しげな雰囲気でずっと引っ張ってしまってもよかったような。最後の曲だし。


総評★★★
ミリオン売ってしまった、リップスライム最大のヒット作。
所謂全盛期なのだろうが、FUMIYAがトラックメイカーとして覚醒&暴走するのは次回作から。HIPHOPでありながらも歌モノとして聴きやすい、J-POPにもきちんと収まるメロディアスなトラックがずらりと並んでおり、「まぁ、ミリオン売れるのもなんとなくわかる、かな?」という感じ。発売されたのが7月だったし、開放的な季節も手伝ってミリオンまで行ってしまったのかもしれない。夏に聴くのには最高の一枚であることは確かだろう。途中で4人のラッパーの短いソロが入っているが、正直コレ抜いて全員での曲をもっと入れて欲しい気も。個性を発揮したかったのだろうが、一曲の中でも4人のキャラは十分立っていると思う。曲数稼ぎか?各曲で似たような音が何度も使われているので途中飽きそうになるものの(逆に前半5曲まではかなり楽しめる)、「One」で流れがガラっと変わる。この享楽的でポップなアルバムがミリオン売ったという事実はハードコアラッパーから物凄く反感を買ったが、「DJがサンプリングで組み立てたトラックにラップを乗せる」というHIPHOPの形式をギリギリで死守しているわけで、「あんなのヒップホップじゃねぇ!」とあまりにも邪険に扱いすぎるのはどうかと思う。アメリカのヒップホップの劣化コピーにも思える日本のハードコア勢とは逆の方向に進み、最後の曲は日本人らしさの塊とも言える「花火大会で空を見上げながら感じる切なさ」をヒップホップと合体させるという、何気に離れ業が成されてると思うのだが。ちなみにこのアルバムの次の『TIME TO GO』は、ドラムンベースの虜となったFUMIYAのストイックなトラックが冴え渡る傑作だが、リップスライム聴くならまぁこのアルバムからだろう。



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