拝啓 夏目漱石先生

自称「漱石先生の門下生(ただのファン)」による日記

『PSYENCE』/hide

2008-02-12 19:29:26 | アルバムレビュー
PSYENCE/hide

1.PSYENCE ★★★
缶ジュースのふたを開封する音で始まるインスト。スパイ映画のオープニングのようなゴージャスなホーンがワクワク感を煽る。隙間を埋める打ち込みのビートと揺れまくるピアノもカッコイイ。

2.ERASE ★★
打ち込みのループと生音の融合。「趣味悪い服着てハイソなレストランへ行こう」など、迷言多数。でもこのフレーズ、異端なhideを象徴するフレーズかもしれない。

3.限界破裂 ★★★
危険な妄想男による変態的な世界。この曲もそうだが、このアルバムの歌詞はエロいのばかりだ。作中で最もベースのフレーズがメロディアスで、かなり気持ち良いグルーヴを放っている。

4.DAMAGE ★★★
全編所謂「デス声」。ナインインチネイルズヲタであったhideの趣味世界が爆発。ボーカルや曲調の割りに歌詞が比較的聴き取りやすいので、この曲は歌詞にも注目すると面白い。ロックに堅苦しい四字熟語がすんなり乗っているのだ。割とポップだった「限界破裂」の次にこんなハードな曲を持ってくるとは…。

5.LEMONed I Scream(CHOCO-CHIP Version) ★★★★
全英語詞によるミディアムな小品。まるで白昼夢を見ているかのような浮遊感が漂う。炎天下の真昼間にこれ聴いてると確実に逝く。エフェクトのかかったhideの声が妙に可愛らしくて心地よい。ゆる~く踊れる。

6.Hi-Ho ★★★
サンバのリズムに乗ってエロエロな歌詞を陽気に歌う。まさかhideがサンバで踊るとは…。代表曲が「紅」であるバンドに所属しているhideだが、この曲はとにかくカラフル。鮮やかな電飾がテラテラ点滅している様子が浮かぶ。Xとは全くカラーの違うギターソロもたっぷり楽しめる。ライブではストリッパー従えてhide、ノリノリで熱唱。さらにMステでも…。

7.FLAME ★★★★★
名曲1。X JAPANの一員でもあるhideのパブリックイメージからすると全く想像できない物凄く優しい声で、優しい言葉を丁寧に歌う。とことんメロウで切ないメロディーだが、バックではおもいっきりディストーションかかったギターがギュオーっと鳴りまくっている。ポップとハードを見事に合体させた、hide屈指の名曲。

8.BEAUTY & STUPID ★★★★
卑猥な歌詞とポップなメロディーが息つく間も無く駆け抜ける、どこか昭和の香りも漂う歌謡ロック。前曲の切なさはどこへ…。最高に踊れる、聴いていてとにかく楽しいポップチューン。サドっぽい歌詞で始まるが、後半になるといつのまにかドM男な歌詞に変貌しているのが笑える。余談だがスカパラがリミックスしたバージョンもかなりの名曲である。

9.OEDO COWBOYS ★★★
ドリフのコントで使われてそうなドタバタしていてコミカルなインスト。タイトル通り、江戸の町をカーボウイが馬で疾走しているような、逆に西部劇に出てくるような街を岡っ引きが駆け抜けているような、異文化交流を感じる曲。

10.BACTERIA ★★
デス声で熱唱。歌詞カード見ないと何言ってるか全く聞き取れない(歌詞結構面白い)。「めっちゃくちゃやってやりました」的なハードな曲だが、キャッチーなコーラスもちゃんとあるため「BEAUTY & STUPID」が好きな人でも置いてきぼりにならない。はず。

11.GOOD BYE ★★★★
ビートルズ風のサイケなバラード。前曲との曲調の落差が凄い。夕焼け空が不穏に変色していくような雰囲気。いけない薬を摂取したらこういう景色が見れるのだろうか。アグレッシブな曲が多いこのアルバムでやたら異彩を放つとともに、hideの才能の幅広さも見せる。ハマると一日中聴けそう。

12.Cafe Le Psyence ★★
バーのBGMみたいなインスト。ムーディーなピアノをフィーチャー。

13.LASSIE(demo master version) ★★
タイトル通り、デモ音源をそのまま収録したらしい。よって荒削りなミックス。歌詞は飼い犬の反抗について。人による「アォー-ン!」という遠吠えが笑える。転調して以降の盛り上がりぶりが楽しい。

14.POSE ★★★★★
名曲2。卓球のラリーのような音が聴こえてきたと思ったら機械的なリフがガーっと響き、野太いリズム隊が絡む、ヘヴィーなインダストリアル曲。作中で最もハードな曲にも思えるが、シリアスなキーボードが突然ふわっと入ってくる箇所があり、ハードなのが苦手な人でも結構聴きやすいのでは。ていうかキーボードはキモだ。絶妙すぎる。

15.MISERY(remix version) ★★★★
抜けるような青空を思わせる、超爽快なポップチューン。7曲目「FLAME」と双子のような関係にあるらしく、同じ歌詞・フレーズが登場する。しかし曲調は全く違うのでなかなか気づきにくい。ハードな曲もしっかり作りつつ、J-POP好きも大喜びな超ポップな曲も作れるhide、凄い。「これでもか!」と言うほど快感のツボを押しながらポップに上り詰めていくメロディーに、とにかくポジティブな歌詞が乗っていて、油断してると涙腺が…。

16.ATOMIC M・O・M★
エピローグのインスト。笑い声が不気味。1曲目のインストのホーンがサンプリングされている。無くてもアルバム完結しそう。

総評★★★★
hideの名曲と言えば晩年の「ピンクスパイダー」だが、それ以前に制作されたこの2ndソロアルバムも良い。リーダー・YOSHIKIの異常なまでの完璧主義ぶりのせいでなかなか新曲が完成しなかったX JAPANと対照的に、まだ黎明期だったハードディスクレコーディングを駆使して曲を作りまくっていた当時のhide。そんな彼の実験と遊びの記録がこのアルバムである。一曲一曲の方向性が見事なまでにバラバラで、「好き放題しまくりました」という感じ。ハードな曲の完成度は晩年のアルバム『Ja,Zoo』にはかなわないが、「ハードな曲を日本のヒットチャートに送り込んでやる」という明確な意思のあった晩年には無い、フットワークの軽さと楽曲パターンの幅広さ、ラフさがここにはある。音楽性が幅広いため初めは自分の好みに合ったタイプの曲にしか惹かれないかもしれないが(ポップなのが好きなら「MISERY」「Hi-Ho」、ハードなのが好きなら「POSE」など)、通して聴いているうちにどの曲にもハードな面とポップな面が共存していることに気付く。全16曲の曲順は聴きやすさを徹底的に無視。凄く唐突。メロウな曲の次に超ハードな曲を持ってきたり、アグレッシブに盛り上る曲の次に、熱を一気に冷却させるかのようなバラードを持ってきたり。多分ランダム再生モードにしても全く変わらぬ印象で聴けるだろう。

 

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2 コメント

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Unknown (may99)
2008-02-13 03:22:18
このアルバム教えて貰って以来ずーっとiPodに入ってるにゃ、どの曲が好きって選べないくらいいっぱい好きなのがあるにゃ(´艸`)
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Unknown (shallow)
2008-02-15 01:45:07
おぉ、そうなの(´ω`)私もこれがhideで一番好きかなぁ。最近聴いてないけれども。
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