拝啓 夏目漱石先生

自称「漱石先生の門下生(ただのファン)」による日記

FINAL ACT

2007-05-04 12:49:39 | 音楽
LUNA SEAのラストライブ「FINAL ACT」を観ている。これ、凄い記録映像だ。各メンバーのプレイヤーとしての実力が縦横無尽にスパークしまくっている。当時熱狂的ファンだった人にとっては涙無しには見られない映像かもしれないが、そうでない自分は見ていてただただ爽快。そして、「こんなに豪快に東京ドームで音を鳴らせるバンドがなんで解散したんだ?何が問題だったんだ?」と単純に不思議に思う。
彼らのアルバムを聴いてよく思うのは、「この人達は音楽を通して何かメッセージを伝えたい、という欲求が皆無なんだな」ということだ。普通なら制作者の意図が作品に直接的にも間接的にも滲み出てくるものだが、LUNA SEAにはそれが無い。歌詞は深読み無用のストレートさとナルシスティックさで溢れていて、所謂「メッセージ性」を排除してる印象があるし(普段聴いてるラルクや宇多田やhideや岡村ちゃんなんかと比べるとその違いは歴然)、各個人の高い演奏力は自分の思いをプレイで表現しているというよりは「この音で全ての人間をビビらせてやる」という一点のみに捧げられているように思う。そして彼らの鳴らす音に突き動かされた少年達がこぞってLUNA SEAをコピーし、我々は河村隆一の絶唱にビビったわけだ。ただ純粋に「畏怖」であろうとしている感じ。LUNA SEAが多くの熱狂的ファンに支えられていたと同時にびっくりするぐらい拒絶されていた要因は多分そこにある。
でも末期のLUNA SEA…『SHINE』辺りを聴いてると、所々に抑え切れずに溢れ出てしまったようなメッセージ性が感じられる。河村隆一節炸裂の「I for you」とか…。時期的には各メンバーのソロ活動が済んだ直後、特に河村隆一に至ってはLUNA SEAファンとは全く違う種類の人々から支持を集めまくり、結果的にバンド以上に売れてしまった直後。バンドが叩き出す音圧が凄みを増す一方で妙に湿っぽいメッセージまで混入してきた感のある『SHINE』。その二年後、「♪宇宙的に感じようよ」という耳を疑うようなフレーズが印象的な「Be Awake」という曲で幕を開ける『LUNACY』というアルバムを最後に彼らは終わる。ただただ音を研ぎ澄ましてロックを追究したいメンバーと、メッセージを鳴らしたいメンバーに分裂した末の解散…だったのだろうか。よくわからない。
解散という大きな節目なのにしんみりした淋しさが殆ど感じられない「FINAL ACT」では、ハイレベルな演奏と熱いボーカルを存分に楽しむことができる。くねっくねと腰を振るエロテロリスト、「俺様」ことSUGIZOに失笑しつつも彼の放つ華やかなオーラに釘づけ。偏見って恐ろしいな。こんな凄いバンドを今までずっとスルーしてたなんて。そして本当に勿体ないよなぁ…この先バンドを続けていけば必ず花開いたであろう可能性が、あのライブには詰まりまくってたのに。まぁ、いなくなった人々の事を考えてても仕方ないけど。