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拝啓 夏目漱石先生

自称「漱石先生の門下生(ただのファン)」による日記

蘇る世界―映画『1980』~「セルロイドの夜」って一体…

2006-06-24 19:32:36 | 映画
DVDで『1980』という映画を観た。舞台はタイトル通り1980年の冬。主人公はそれぞれの悩みを抱えた三姉妹。夫の浮気に悩む高校教師の長女、突然アイドルを辞め、高校教師を志す男癖の悪い次女、映画研究会の作品でヌードを披露する必要に迫られる高校生の三女。物語は次女が、長女が勤務・そして三女が生徒として通う高校に教育実習生としてやってくるところから始まり、彼女の自由奔放で不安定な生き様を主軸として進む。とにかくすぐに男に惚れてしまい、B級アイドル時代に様々な人間と浮名を流した次女は、実習先の高校で早速男子生徒を誘ってしまう悲しい程のズルズルぶり。さらに過去の男関係を全て記した暴露本まで出され、精神的に追い詰められていく…。1980年という時代を必死で駆け抜ける人々の群像映画である。
舞台が1980年ということで、当時の文化がいたるところに顔を出す。カラフルな色使いの家具や洋服、当時の最先端だったテクノポップ、ポータブルというにはかなり大きい初代ウォークマン、ルービックキューブ、スライム、留守番電話などなど…数年前の「80年代ブーム」でも紹介されたアイテムがぞろぞろ出てきて、当時生まれてもいなかった世代としてはとても興味深い。ただ、音楽にしてもファッションにしても80年代モノをあまり好まない自分にとっては見ていて少々ダルく感じる箇所もあったが。例えば作品中随所で流れるテクノポップ、あれ、どこがいいんだ…ドラムンベースが結構好きな私には単純なピコピコ音がちょっと不快(笑)。ただ、YMOの「ライディーン」が流れている際に醸し出す強烈な哀愁のようなものにはビビったけど。
作品としてあまり面白いと思えず、「これは80年代に思い入れのある人が喜ぶタイプの映画なのか?」と考えたのだが、ネットなどの感想を見たらむしろ80年代っ子の人達のほうがよりこの映画に失望しているみたいだった。この映画の監督は、80年代のインディーズシーンで一世を風靡したバンド、「有頂天」のボーカリストで、現在は劇団「ナイロン100℃」を主宰し、演劇の世界でも脚光を浴びるケラリーノ・サンドロヴィッチ(本名:小林一三)氏。80年代のインディーズバンド市場を切り開いた人の一人であり、その方面では80年代を象徴するような人物である。そんな人が『1980』というタイトルの映画を撮るということで、期待はかなり大きかったようだ。でもそれらに応えるほどの映画ではなかったのかもしれない。独特なプラスチックな雰囲気になじむのに私は30分かかってしまった。
ただ、部分的に素晴らしい箇所はある。ミッチーが出演しているシーンは明らかに空気が違うので何度も見てしまう。流行にあわせてコロコロと音楽性を変え、しぶとく芸能界に生き残る歌手を演じるミッチー。彼の出てる場面はフルスロットルで狂っててとても楽しめた。持ち歌の歌詞も意味不明で笑える。なんだよ、「セルロイドの夜」って…。そして三姉妹がビルの屋上から夕日を見つめ、遠い未来である2000年について語るシーン。あの夕日のシーンが今現在と地続きのように感じられて切なくなる。彼女たちは「2000年代はもっと良い時代になってるはず」という考えを多かれ少なかれ持っているようで、それを思うと……なんとなく、合掌。

先生の名作『夢十夜』の実写化に挑戦する人々

2006-05-03 21:07:36 | 映画
先日文学史の講義で漱石先生の名作『夢十夜』についての話題がちょろっと出た。そして実写映画化『ユメ十夜』を思い出した。どんな映画になるのか、かなり気になるのに公式サイトもずーっと音沙汰なし。大御所から若手まで、10人の映画監督がそれぞれ一夜ずつを10分の短編に仕上げる、というコンセプトのせいだろうか?「いつまで経っても10本揃わねぇ!」みたいな。あ、でも公開は2007年って書いてあるな…。こんな早くから期待してる私がフライング過ぎるだけだわ。それはともかく、一体どんな人達がこの実写化に取り組んでいるんだ?というのが気になったので、今回はそれぞれの作品を製作する監督・脚本家さんについてさらっと調べてみた。

【第一夜】
監督 実相寺昭雄
『ウルトラマン』シリーズの演出で有名な方らしい。最近では京極夏彦原作ホラー小説「姑獲鳥の夏」の実写版の監督を担当。
脚本 久世光彦
今年3月に急逝した、日本テレビドラマ界を代表する演出家。代表作は『寺内貫太郎一家』『時間ですよ』他多数。先生関連では、昨年放送された単発ドラマ「夏目家の食卓」の演出も担当している。
【第二夜】
監督 市川崑
最年長、なんと90歳の日本映画界の大御所中の大御所。『金田一耕助』シリーズを手がけ、絢爛な映像美で後世の映画監督たちに多大な影響を与えたという。先生関連では、30年前に『吾輩は猫である』を映画化している。超見てぇ。
【第三夜】
監督・脚本 清水崇
日本が世界に誇るホラー映画『呪怨』の監督。日本人監督の作品として始めて全米興行成績週間No.1となる。第三夜はガチンコホラー作品になるってことか…。
【第四夜】
監督 清水厚
この人もホラー系の映画監督らしい。彼が監督した映画を検索すると『武勇伝』『ねらわれた学園』『蛇女』という作品がでてきた。
脚本 猪爪慎一
先述の京極夏彦の実写化作品でも脚本を担当。
【第五夜】
監督・脚本 豊島圭介
ホラーコメディー「怪奇大家族」という特撮作品を第三夜の清水崇とともに監督した人らしい。ホラー・SF村の人がやたら多い。
【第六夜】
監督・脚本 松尾スズキ
劇団「大人計画」主宰。舞台・ドラマ・映画・声優・CM・作家とあらゆる分野で大活躍の文化人。映画監督は2004年の『恋の門』に続いて二度目。同胞の宮藤官九郎が監督した映画『真夜中の弥次さん喜多さん』ではヒゲ面の花魁姿を披露。
【第七夜】
監督 天野喜孝
世界的に人気な画家、キャラクターデザイナー、イラストレーター。妖艶で幻想的な作風だが(公式HP)、『タイムボカン』シリーズのデザインなどコミカルな作品も手がたりもしている。
【第八夜】
監督 山下敦弘
最年少、30歳の新進気鋭の映画監督。代表作は2005年の『リンダリンダリンダ』(韓国人留学生とブルーハーツのコピーバンドを組むというストーリー)。
【第九夜】
監督・脚本 西川美保
この人は何者だろうか。普通の名前すぎるためか、めぼしいデータがみつからない…。
【第十夜】
監督 山口雄大
実写化が困難と思われる強烈なギャグ漫画をあえて実写化することで知られる映画監督。代表作は『魁!!クロマティ高校 THE MOVIE』『地獄甲子園』。
脚本 漫☆画太郎
先述の『地獄甲子園』の原作者である漫画家。1990年、週間少年ジャンプにて『DRAGON BALL外伝』でデビュー。物凄いタイトルだが作風も物凄い。これは少年誌の絵じゃねー(笑)この緻密だけど汚い絵を描く強烈ギャク漫画家のルーツがジャンプだなんて。最近はピエール瀧を原作に加えて漫画を描いているらしい。ちなみに『幽☆遊☆白書』の作者冨樫義博は、当初漫画のタイトルを『幽遊記』にしようとしていたが、漫☆画太郎が当時『珍遊記』という作品をジャンプで連載していたため、かぶるのを避けてタイトルを変更したという話を『HUNTER×HUNTER』単行本で明かしていた。この二人が揃ったということは、第十夜はとんでもない強烈なギャグ作品に仕上がるのでは。

個人的には一番好きな第六夜が、これまた好きな松尾スズキが監督するというのがとても嬉しい。第六夜は、明治の時代になぜか運慶が現れ、彼が像を彫るのを見物するというストーリー。書き出しは「運慶が護国寺の山門で仁王を刻んでいると云う評判だから、散歩ながら行って見ると―」。なんともシュールで素敵ではないか。


追記
はぁ…今日は遊んじゃったから明日あたりにでも図書館行かなきゃ…やだなー。

追記
GWということで解放的にドライブを楽しむのは良いですが、くれぐれも開放的になりすぎてヘブンズドライブしないようにお気をつけください…!

『ドラゴンボール』映画化について考える

2006-03-26 23:49:36 | 映画
『ドラゴンボール』がハリウッドで実写映画化されることが決定。監督はジョージルーカス―
このニュースが流れてからどれほどの月日が流れただろう。当時は「すっげえ!さすが世界のドラゴンボール!」とワクワクしたものだが、今はこのまま、音沙汰の無いまま企画が立ち消えになってしまえばいいのに、という思いで一杯である。そもそも本当に映画化する気があるのだろうか。映画化の予定はないが、他の映画会社に先に映画化されたら悔しいのでとりあえず権利だけ買っておく、ということがハリウッドの世界では多々あるらしいから、ドラゴンボールもそうなのかも。実際、ハリウッド化が決まったものの全くそれ関連のニュースが聞こえてこない『寄生獣』や『MONSTER』などもそういう事情のもとに実写化の権利が買われたのかもしれない。『MONSTER』なんて長いミステリーとうやって映画化すんだよ、無理だろ…と突っ込みたくなるよ。それと、前もって権利を買っておけば、後で例えば『MONSTER』そっくりのサスペンス映画を作ったときに著作権も問題でもめる事がなくなる、というのを見越している、という話も聞く。日本の傑作漫画をもっと丁重に扱ってほしい。これらの作品は日本で実写化しても駄作になるのは目に見えてるんだから。やるなら凄いのを頼むよ。中途半端にやるのは勘弁してくれ。私が心配するのは―先走りかもしれないが―中途半端に映画化して原作の魅力が全く反映されていないよくわかんない映画にされたらどうしよう、ということである。「ドラゴンボール」のおおまかな設定だけを取り出して舞台をアメリカにして映画化!とか。例えば…

元気で明るいどこにでもいるような高校生ゴクウ。そんなゴクウの前に、彼の兄だと名乗る男が突然現れる。男は言う。「お前は地球人ではない。生まれは惑星ベジータ、誇り高き戦闘民族サイヤ人だ!」「この地球には、どんな願いでも叶えられるドラゴンボールというものが存在する。どんな手を使ってもいい。それを集めろ」。男の言っていることの意味がわからずただただ呆然とするゴクウ。しかし男がゴクウのガールフレンド・チチを襲おうとした瞬間、ゴクウの秘めたる力が爆発する…。その日から、ゴクウの非日常な日々が始まった。ゴクウの兄が言っていた何でも願いが叶うというドラゴンボールを手に入れるため、宇宙から様々な侵略者が地球にやってくるようになった。その中には、同じサイヤ人の最強戦士・ベジータもいた。突然ゴクウの通うハイスクールに現れ、ヤムチャ・ピッコロをはじめ、ゴクウのクラスメイトたちを次々に殺すベジータ。そんな傍若無人なベジータの行動にキレたゴクウは目覚めた力で徹底交戦、大激闘。なんとかベジータを追い返す。しかしそんなゴクウも元は普通の高校生。自らの力のせいで世界を荒廃させてしまい、クラスメイトまで巻き込んで犠牲にしてしまった罪の意識に苛まれ、苦悩する。そんなゴクウに、生き残ったクラスメイトであり、天才少女・ブルマは助言する。「なんでも願いが叶うドラゴンボールを誰よりも先に手に入れよう。そして死んだ人たちを生き返らせて、世界を元にもどすのよ!」。そうだ、ドラゴンボールを集めればいいんだ…新たな希望が芽生えたゴクウとブルマ。そんな時、すべての凶悪宇宙人の親玉である悪の帝王・フリーザがドラゴンボールの噂を聞き、地球に降り立った…。

みたいな話に改造されるとか。適当にヒーローもの、適当にバトル、適当にSF、適当に苦悩、ちょっと反戦メッセージ(アメリカでこれは無いか?)…ありそうじゃないですか?先生…。

追記
『バガボンド』の新刊を読んだ。前の巻でザックリ斬られた吉岡清十郎だが…。吉岡清十郎亡きバガなんてもう殆ど興味ないぜ。まぁ清十郎がいつか武蔵にぶっ殺されることはわかってはいたけどな。合掌。