トリビュートアルバム。功績のあるミュージシャンに対して称賛するために作られるコンピレーションアルバム。普通、複数のアーティストによって対象となるアーティストの曲をカバーしたものを中心に収録される。そんなトリビュートアルバムの中で、日本で一番売れたのは、実はhideへのものである。hideの死からちょうど一年後の1999年5月2日に発売された『hide SPIRITS』。これは日本で唯一売り上げがミリオンを突破したアルバム。そんなに売れてたとは知らなかったが、参加しているミュージシャンを冷静に振り返ってみると納得。YOSHIKIや全盛期のGLAY、LUNA SEA、布袋に清春などなど、豪華なメンツが揃っている。アルバムを聴くと、それぞれが意外なほど素直に原曲をカバーしているのに驚く。アレンジの方向性が殆ど変わっていないというか、無難にして王道なカバーが多いような。ヘタにいじって駄曲にしちゃうよりはいいのだろうが、原曲のイメージを消し去るような強引なカバーの方が、hide本人が聴いて一番喜ぶ気もする。
しかし思うのだが、生前のhideってこんな風に沢山のアーティストから何かをトリビュート―捧げられるような人だったのだろうか?もちろん彼は人望があって、後輩の面倒などもよくみる、誰にでも慕われる兄貴的存在だったというのは沢山のインタビューを読めばわかる。でもhideは後輩たちを少しも上の立場から見ていなかったはずだ。むしろ同じ舞台でライバルとして競い合っていたぐらいだ。hideが表舞台に引っ張ってきたLUNA SEAやGLAYは、hideに負けず劣らずの勢いで活動していたし。参加ミュージシャンの多くがhideと親しい間柄にいた人々であるこのアルバムは、YMOやはっぴいえんどや尾崎のトリビュート盤とは違い、「トリビュート」とという言葉が全くしっくりこないんだよね…。hideが生きてたら絶対に出なかっただろうしね。
ダラダラと書いてきたが、ここで『hide SPIRITS』に収録されている曲の中で印象に残ったものを数曲紹介しようと思う。
■布袋寅泰/「ROCKET DIVE」
アレンジは殆どhideの原曲と同じだが、この人の歌声とギターの力は凄い。何の違和感もなく「ROCKET DIVE」を自分のモノにしております。これぞ「ギタリズム」(?)。間奏、ハジけまくりだ。布袋バージョンの間奏にあわせてhideが踊る姿も見てみたいところ。なお、この曲の最後には、布袋が作ったであろう歌詞が付け加えられている。「さらば赤い髪のエイリアン 君の作ったロケットに愛を込めてアディオス」。
■清春/「Beauty&Stupid」
この人もあの特徴的なビブラート声で、このスケベな曲を歌いこなしている。例によってアレンジが原曲とそう遠くないため、清春の声をたっぷりと味わうことができる。ファンにはたまらないのだろう。そして清春の声が苦手な人にとっては別の意味でたまらないのだろう。
■コーネリアス/「ピンクスパイダー」
ナイーブな文系ミュージシャンにも関わらずヴィジュアル界の大物hideと某音楽史で対談した猛者、コーネリアス。元々はhideがコーネリアスファンだったことで実現した対談。その対談後にhideがコーネリアスの曲をリミックスした縁で参加が決定したのだろう。このトリビュートアルバムに参加しているメンツの中で、コーネリアスは明らかに浮きまくっている。当たり前だ、ヴィジュアル系だらけなんだから。洋邦問わずありとあらゆるジャンルの音楽を聴きまくっていたhideならではの交流だろう。で、この「ピンクスパイダー」も変化球すぎて浮きまくり。インストだよ…。「ピンク」という言葉にインスパイアされたらしく、随所にピンクな声が挿入され、あのイントロのかっこよすぎなリフが音飾を取り払われ丸裸にされ、ゆるやかにうねる。そして終盤に響き渡るhideの「♪ピンク!」というボーカル。hideは生前「自分の曲を他人のリミックスさせるのは、可愛い娘を知らない男の家に一晩泊まらせにいくほどスリリングなこと」と語っていたが、コーネリアスの家に泊まった「ピンクスパイダー」は…。これ、hideが聴いたら一番喜ぶ作品だと思うぞ、確実に。コーネリアスのアルバム『POINT』の布石になっているような音なのも興味深い。
■LUNA SEA/「SCANNER」
hideの書く歌詞はスケベだったり前向きだったり後ろ向きだったり攻撃的だったり四字熟語が多様されてたりどこかコミカルだったり、とにかくパターンが多いわけだが、「SCANNER」は結構コミカルな詞の部類に入ると思う。で、そんな歌詞を河村隆一のあのねちっこく艶っぽく伸びやかなボーカルで歌われたら…笑うしかない。私は「♪荷物まとめ夜逃げする~~」で爆笑しました。河村のキャラとhideの詞のギャップが凄いわ、これ。hideが歌うと普通にかっこいいんだけどね。しかもアレンジが妙に重心の低いシリアスなものになってて、それはとても好みなのだが…やっぱ「SCANNER」の歌詞とのギャップがありすぎて笑える。ある意味必聴。
■OBLIVION DUST/「限界破裂」
このアルバムのベストトラックだと思っている。大胆すぎるアレンジに好感大。スピード感ソリッド感満載の原曲だが、よくこんなに静かな作りにしようと思ったな。「限界破裂」なのに序盤、普通に聴き入っちゃったし。
曲目
1. Introduction
2. ROCKET DIVE(布袋寅泰)
3. Beauty&Stupid(清春,SHOJI)
4. TELL ME(kyo&TETSU)
5. ピンクスパイダー(SIAM SHADE)
6. LEMONed I Scream(shame)
7. ピンクスパイダー(コーネリアス)
8. FLAME(ZEPPET STORE)
9. SCANNER(LUNA SEA)
10. DOUBT’99(BUCK-TICK)
11. ever free(トランスティック・ナーヴ)
12. 限界破裂(オブリヴィオン・ダスト)
13. MISERY(GLAY)
14. CELEBRATION(I.N.A.,PATA,heath)
15. GOOD-BYE(YOSHIKI)
追記
今日hideの誕生日らしい。
しかし思うのだが、生前のhideってこんな風に沢山のアーティストから何かをトリビュート―捧げられるような人だったのだろうか?もちろん彼は人望があって、後輩の面倒などもよくみる、誰にでも慕われる兄貴的存在だったというのは沢山のインタビューを読めばわかる。でもhideは後輩たちを少しも上の立場から見ていなかったはずだ。むしろ同じ舞台でライバルとして競い合っていたぐらいだ。hideが表舞台に引っ張ってきたLUNA SEAやGLAYは、hideに負けず劣らずの勢いで活動していたし。参加ミュージシャンの多くがhideと親しい間柄にいた人々であるこのアルバムは、YMOやはっぴいえんどや尾崎のトリビュート盤とは違い、「トリビュート」とという言葉が全くしっくりこないんだよね…。hideが生きてたら絶対に出なかっただろうしね。
ダラダラと書いてきたが、ここで『hide SPIRITS』に収録されている曲の中で印象に残ったものを数曲紹介しようと思う。
■布袋寅泰/「ROCKET DIVE」
アレンジは殆どhideの原曲と同じだが、この人の歌声とギターの力は凄い。何の違和感もなく「ROCKET DIVE」を自分のモノにしております。これぞ「ギタリズム」(?)。間奏、ハジけまくりだ。布袋バージョンの間奏にあわせてhideが踊る姿も見てみたいところ。なお、この曲の最後には、布袋が作ったであろう歌詞が付け加えられている。「さらば赤い髪のエイリアン 君の作ったロケットに愛を込めてアディオス」。
■清春/「Beauty&Stupid」
この人もあの特徴的なビブラート声で、このスケベな曲を歌いこなしている。例によってアレンジが原曲とそう遠くないため、清春の声をたっぷりと味わうことができる。ファンにはたまらないのだろう。そして清春の声が苦手な人にとっては別の意味でたまらないのだろう。
■コーネリアス/「ピンクスパイダー」
ナイーブな文系ミュージシャンにも関わらずヴィジュアル界の大物hideと某音楽史で対談した猛者、コーネリアス。元々はhideがコーネリアスファンだったことで実現した対談。その対談後にhideがコーネリアスの曲をリミックスした縁で参加が決定したのだろう。このトリビュートアルバムに参加しているメンツの中で、コーネリアスは明らかに浮きまくっている。当たり前だ、ヴィジュアル系だらけなんだから。洋邦問わずありとあらゆるジャンルの音楽を聴きまくっていたhideならではの交流だろう。で、この「ピンクスパイダー」も変化球すぎて浮きまくり。インストだよ…。「ピンク」という言葉にインスパイアされたらしく、随所にピンクな声が挿入され、あのイントロのかっこよすぎなリフが音飾を取り払われ丸裸にされ、ゆるやかにうねる。そして終盤に響き渡るhideの「♪ピンク!」というボーカル。hideは生前「自分の曲を他人のリミックスさせるのは、可愛い娘を知らない男の家に一晩泊まらせにいくほどスリリングなこと」と語っていたが、コーネリアスの家に泊まった「ピンクスパイダー」は…。これ、hideが聴いたら一番喜ぶ作品だと思うぞ、確実に。コーネリアスのアルバム『POINT』の布石になっているような音なのも興味深い。
■LUNA SEA/「SCANNER」
hideの書く歌詞はスケベだったり前向きだったり後ろ向きだったり攻撃的だったり四字熟語が多様されてたりどこかコミカルだったり、とにかくパターンが多いわけだが、「SCANNER」は結構コミカルな詞の部類に入ると思う。で、そんな歌詞を河村隆一のあのねちっこく艶っぽく伸びやかなボーカルで歌われたら…笑うしかない。私は「♪荷物まとめ夜逃げする~~」で爆笑しました。河村のキャラとhideの詞のギャップが凄いわ、これ。hideが歌うと普通にかっこいいんだけどね。しかもアレンジが妙に重心の低いシリアスなものになってて、それはとても好みなのだが…やっぱ「SCANNER」の歌詞とのギャップがありすぎて笑える。ある意味必聴。
■OBLIVION DUST/「限界破裂」
このアルバムのベストトラックだと思っている。大胆すぎるアレンジに好感大。スピード感ソリッド感満載の原曲だが、よくこんなに静かな作りにしようと思ったな。「限界破裂」なのに序盤、普通に聴き入っちゃったし。
曲目
1. Introduction
2. ROCKET DIVE(布袋寅泰)
3. Beauty&Stupid(清春,SHOJI)
4. TELL ME(kyo&TETSU)
5. ピンクスパイダー(SIAM SHADE)
6. LEMONed I Scream(shame)
7. ピンクスパイダー(コーネリアス)
8. FLAME(ZEPPET STORE)
9. SCANNER(LUNA SEA)
10. DOUBT’99(BUCK-TICK)
11. ever free(トランスティック・ナーヴ)
12. 限界破裂(オブリヴィオン・ダスト)
13. MISERY(GLAY)
14. CELEBRATION(I.N.A.,PATA,heath)
15. GOOD-BYE(YOSHIKI)
追記
今日hideの誕生日らしい。