さて、すいません更新が大分遅れました、な第970回は、
タイトル:人類は衰退しました
著者:田中ロミオ
出版社:小学館 ガガガ文庫(初版:'07)
であります。
―楽屋裏までお見せします―
「ホタルでございま~す♪」
「マユでありんす♪」
「最初の挨拶って難しいですね……」
「常春の国マリネラって偉大だよなぁ……」
「既に御存知の方もいらっしゃるかと思いますが、この度新たに、私達の雑談専用のページ『ホタルとマユの楽屋裏』を設置しました! 最新の投降覧の【☆『目録へのショートカット』兼『総合案内板』】の、『怪しいページを作りました!』の所から行けますので、興味がある方は是否お越し下さい♪」
「現在は、前回紹介したPS2のゲーム『グリムグリモア』の話の続きを掲載している。こういった記事内での雑談の続きをやる場合、後から元記事の方にもリンクを入れるようにする予定だ」
「この記事の末尾にも、後から楽屋裏へのリンクが張られる可能性があるってことですか?」
「いんや。今回の雑談は楽屋裏設置の紹介だから、これ以上話すことは何もねーと思うぞ」
「がーん……せっかくの新企画なのに」
―どんな作品ざましょ?―
「さぁて、本日御紹介するのは……遂に来ました、ガガガ文庫の一番星君グレート! 『人類は衰退しました』です!」
「創刊と同時に大々的に売りにかかった、まさに文庫の顔と言える作品だ。ジャンルとしては、まったり系世紀末SFといったところか」
「緩やかに破滅に向かっている筈なのに、まったく悲壮感がない人類と、彼らに代わって全世界に生息している(と目されている)妖精さん達の微笑ましい交流を描く、ファンタジック・コメディですね!」
「フッ……こいつを、ファンタジー扱いするとは。ホタル、てめぇ厄いな」
「(なぜここでみどろネタ? しかも全然似てないし……)
その根拠は? と言うか、マユさんってジャンル限定するの嫌いじゃありませんでした?」
「別にファンタジー部分がおざなりだと言うつもりはない。つーかむしろ、かなりしっかり描かれていると言うべきだろう。だが、その中に潜んでいるSF要素がかなり濃いんで、あたしはこれはSFだと言ってるだけだ」
「厄いとか言っといて、随分当たり障りのない答えですねぇ……。
本書は『妖精さんたちの、ちきゅう』と『妖精さんの、あけぼの』の二つの中編と、おまけの『四月期報告』から成っています。
第一章『妖精さんたちの、ちきゅう』は、人類最後の教育機関《学舎》を卒業した主人公の少女(かなりの人見知り)が、故郷のクスノキの里に戻り、新任の調停官として新人類《妖精さん》と親睦を深める話。基本的な世界観については、大体この章で語られています。
第二章『妖精さんの、あけぼの』は、前の話に引き続き、主人公が妖精さんの生態を調べるのですが、原始時代ごっこから始まった彼らの遊びは急速に変化して……というお話。最後のオチは結構ブラックでした」
「(いつになく真面目な解説だなァ……)
最大のキーである妖精だが――平均身長10センチ、三等身の小型人類だ。言っとくが羽根は生えてねぇ。
台詞はすべて平仮名表記、甘い物好きで簡単に餌付けされてしまう、恐怖を覚えるとみんな揃って失禁&気絶するといった間の抜けた特徴を数多く持つ。が、その反面、思い付きだけで何でも作ってしまうとんでもない知性と技術を有し、さらに、生きるために食物を必要としない、繁殖方法が不明で気付いたら増えている、という既存の生物とは一線を画す存在でもある。
この手の情報は主に主人公の語り口調の地の文と、調停官である彼女の祖父の口から語られるんだが、論理的かつ細かくて実に素晴らしい」
「正直な話、そういった小難しい部分は読み飛ばしちゃっても問題ないです♪
本作は人類の現状やら、妖精さん達の生態といった説明にかなりのページを割いており、第一章前半などは殆どそれのみで埋まっています。しかし、それらの話は実際に妖精さん達と出会う一章後半でも出てきますし、何より、実際に目の前に対象がいる方が理解もしやすいです。なので、序盤の情報量に挫折しかけた方は、斜め読みでどんどん先へ行っちゃいましょう」
「ちったぁ真面目に読めよ……と言いたいところだが、その指摘はあながち間違ってねぇ。
妖精達は、『かんたんのはんたい』とか『にんげんさんは、かみさまです』といった知的なんだか間が抜けてるんだかよく解らね~どっかズレた台詞を吐きまくることで、ラノベらしいライトな雰囲気を醸し出してくれるんだが、人間同士の会話ってのはふざけた所はあっても何だかんだ言って真面目なんだよなァ……。ストーリー自体も、妖精が登場してから俄然面白くなるので、情報過多な序盤でくじけかけた人は、ホタルの言うように斜め読みで済ますか、気合いと根性で突破して欲しい」
「無論、設定好きの方はしっかり隅々まで読んであげて下さい。マユさんのおっしゃる通り、論理的かつ詳細な解説がなされているので、充分に知的好奇心を満足させることが可能です。不明なとこは不明のままで残してあるのも面白さを引き出してますね」
―で、面白かったの?―
「本作はシリーズ物で、既に三作が出ている。2も読んだし、3も買ってきてはあるんだが、それについてはまた今度だ。とりあえず、この巻の感想としては――」
「妖精さん可愛いっ!」
「(に……似てねぇ……)
あ~、まぁ……何だ。上のホタルみたいな顔した妖精達が、いい意味で予想を裏切る暴れっぷりを見せてくれたので前評判以上に面白かったな」
「いつになく歯切れが悪いですね? 妖精さん達、可愛くありません?」
「いや……可愛い、とは思うぞ。どこからともなく現れてうじゃうじゃ増えるし、どいつもこいつも恐がりで一斉に失禁するし、行動原理はガキみてーだが、集団になると人類を遥かに上回るテクノロジーでとんでもないもの作っちまうし、まるで電子生命みてぇだ。ちょっかい出したらすぐに反応するから、色々実験してみたくなるよな」
「貴方の可愛いと、私の可愛いは、根本的にズレてると思います……。
最後に、各章の見所なぞを紹介しておきましょうか。
『妖精さんたちの、ちきゅう』は何と言っても、主人公の微妙なアプローチに、はしゃいだり怯えたりする妖精さん達がとにかく可愛いです! 私も主人公のようにスイッチがオンになっちゃいそう。
『妖精さんの、あけぼの』は、最初から最後までお菓子に振り回される妖精さん達がこれまた可愛い! お菓子のオマケの話も楽しいです」
「お前、『可愛い!』しか言ってねぇぞ。
前者は、名前を持たない妖精達が、名付けをしてくれる主人公を神と呼び、勢いで近代都市やら神像まで造ってしまう展開に注目だ。
後者は、プチ人類史……と見せかけて、飽くまで妖精独自の急激進化(?)を遂げる様が興味深い。前章で語られた、『妖精は生きるために食物を必要としない』という設定をちゃんと生かしているのもいいな」
「お互い、好きなところが全然ちがいますねぇ~」
「裏を返せば、それだけ作品の間口が広いってことさ。最初にちょっと話したが、SF要素もファンタジー要素も手を抜かず、上手いこと融合させている傑作だ。主人公やその祖父の名前を敢えて明かさないことで、寓話的な面も持たせており、様々な角度から読むことが出来る。ここ最近のライトノベルの中では、かなりのオススメと言っていいだろう」
「もしかして、今回はオチなしですか?」
「商業的には、最近のゆるキャラブームに上手いこと乗っかった作品って見方も出来るぜ♪」
「作品の出来はいいんだからそういうこと言わないのっ!」
――【つれづれナビ!】――
◆ 『人類は衰退しました』のまとめページへ
◇ 『ライトノベル一覧表(その2)』へ
◆ 『つれづれ総合案内所』へ
タイトル:人類は衰退しました
著者:田中ロミオ
出版社:小学館 ガガガ文庫(初版:'07)
であります。
―楽屋裏までお見せします―
「ホタルでございま~す♪」
「マユでありんす♪」
「最初の挨拶って難しいですね……」
「常春の国マリネラって偉大だよなぁ……」
「既に御存知の方もいらっしゃるかと思いますが、この度新たに、私達の雑談専用のページ『ホタルとマユの楽屋裏』を設置しました! 最新の投降覧の【☆『目録へのショートカット』兼『総合案内板』】の、『怪しいページを作りました!』の所から行けますので、興味がある方は是否お越し下さい♪」
「現在は、前回紹介したPS2のゲーム『グリムグリモア』の話の続きを掲載している。こういった記事内での雑談の続きをやる場合、後から元記事の方にもリンクを入れるようにする予定だ」
「この記事の末尾にも、後から楽屋裏へのリンクが張られる可能性があるってことですか?」
「いんや。今回の雑談は楽屋裏設置の紹介だから、これ以上話すことは何もねーと思うぞ」
「がーん……せっかくの新企画なのに」
―どんな作品ざましょ?―
「さぁて、本日御紹介するのは……遂に来ました、ガガガ文庫の一番星君グレート! 『人類は衰退しました』です!」
「創刊と同時に大々的に売りにかかった、まさに文庫の顔と言える作品だ。ジャンルとしては、まったり系世紀末SFといったところか」
「緩やかに破滅に向かっている筈なのに、まったく悲壮感がない人類と、彼らに代わって全世界に生息している(と目されている)妖精さん達の微笑ましい交流を描く、ファンタジック・コメディですね!」
「フッ……こいつを、ファンタジー扱いするとは。ホタル、てめぇ厄いな」
「(なぜここでみどろネタ? しかも全然似てないし……)
その根拠は? と言うか、マユさんってジャンル限定するの嫌いじゃありませんでした?」
「別にファンタジー部分がおざなりだと言うつもりはない。つーかむしろ、かなりしっかり描かれていると言うべきだろう。だが、その中に潜んでいるSF要素がかなり濃いんで、あたしはこれはSFだと言ってるだけだ」
「厄いとか言っといて、随分当たり障りのない答えですねぇ……。
本書は『妖精さんたちの、ちきゅう』と『妖精さんの、あけぼの』の二つの中編と、おまけの『四月期報告』から成っています。
第一章『妖精さんたちの、ちきゅう』は、人類最後の教育機関《学舎》を卒業した主人公の少女(かなりの人見知り)が、故郷のクスノキの里に戻り、新任の調停官として新人類《妖精さん》と親睦を深める話。基本的な世界観については、大体この章で語られています。
第二章『妖精さんの、あけぼの』は、前の話に引き続き、主人公が妖精さんの生態を調べるのですが、原始時代ごっこから始まった彼らの遊びは急速に変化して……というお話。最後のオチは結構ブラックでした」
「(いつになく真面目な解説だなァ……)
最大のキーである妖精だが――平均身長10センチ、三等身の小型人類だ。言っとくが羽根は生えてねぇ。
台詞はすべて平仮名表記、甘い物好きで簡単に餌付けされてしまう、恐怖を覚えるとみんな揃って失禁&気絶するといった間の抜けた特徴を数多く持つ。が、その反面、思い付きだけで何でも作ってしまうとんでもない知性と技術を有し、さらに、生きるために食物を必要としない、繁殖方法が不明で気付いたら増えている、という既存の生物とは一線を画す存在でもある。
この手の情報は主に主人公の語り口調の地の文と、調停官である彼女の祖父の口から語られるんだが、論理的かつ細かくて実に素晴らしい」
「正直な話、そういった小難しい部分は読み飛ばしちゃっても問題ないです♪
本作は人類の現状やら、妖精さん達の生態といった説明にかなりのページを割いており、第一章前半などは殆どそれのみで埋まっています。しかし、それらの話は実際に妖精さん達と出会う一章後半でも出てきますし、何より、実際に目の前に対象がいる方が理解もしやすいです。なので、序盤の情報量に挫折しかけた方は、斜め読みでどんどん先へ行っちゃいましょう」
「ちったぁ真面目に読めよ……と言いたいところだが、その指摘はあながち間違ってねぇ。
妖精達は、『かんたんのはんたい』とか『にんげんさんは、かみさまです』といった知的なんだか間が抜けてるんだかよく解らね~どっかズレた台詞を吐きまくることで、ラノベらしいライトな雰囲気を醸し出してくれるんだが、人間同士の会話ってのはふざけた所はあっても何だかんだ言って真面目なんだよなァ……。ストーリー自体も、妖精が登場してから俄然面白くなるので、情報過多な序盤でくじけかけた人は、ホタルの言うように斜め読みで済ますか、気合いと根性で突破して欲しい」
「無論、設定好きの方はしっかり隅々まで読んであげて下さい。マユさんのおっしゃる通り、論理的かつ詳細な解説がなされているので、充分に知的好奇心を満足させることが可能です。不明なとこは不明のままで残してあるのも面白さを引き出してますね」
―で、面白かったの?―
「本作はシリーズ物で、既に三作が出ている。2も読んだし、3も買ってきてはあるんだが、それについてはまた今度だ。とりあえず、この巻の感想としては――」
「妖精さん可愛いっ!」
「(に……似てねぇ……)
あ~、まぁ……何だ。上のホタルみたいな顔した妖精達が、いい意味で予想を裏切る暴れっぷりを見せてくれたので前評判以上に面白かったな」
「いつになく歯切れが悪いですね? 妖精さん達、可愛くありません?」
「いや……可愛い、とは思うぞ。どこからともなく現れてうじゃうじゃ増えるし、どいつもこいつも恐がりで一斉に失禁するし、行動原理はガキみてーだが、集団になると人類を遥かに上回るテクノロジーでとんでもないもの作っちまうし、まるで電子生命みてぇだ。ちょっかい出したらすぐに反応するから、色々実験してみたくなるよな」
「貴方の可愛いと、私の可愛いは、根本的にズレてると思います……。
最後に、各章の見所なぞを紹介しておきましょうか。
『妖精さんたちの、ちきゅう』は何と言っても、主人公の微妙なアプローチに、はしゃいだり怯えたりする妖精さん達がとにかく可愛いです! 私も主人公のようにスイッチがオンになっちゃいそう。
『妖精さんの、あけぼの』は、最初から最後までお菓子に振り回される妖精さん達がこれまた可愛い! お菓子のオマケの話も楽しいです」
「お前、『可愛い!』しか言ってねぇぞ。
前者は、名前を持たない妖精達が、名付けをしてくれる主人公を神と呼び、勢いで近代都市やら神像まで造ってしまう展開に注目だ。
後者は、プチ人類史……と見せかけて、飽くまで妖精独自の急激進化(?)を遂げる様が興味深い。前章で語られた、『妖精は生きるために食物を必要としない』という設定をちゃんと生かしているのもいいな」
「お互い、好きなところが全然ちがいますねぇ~」
「裏を返せば、それだけ作品の間口が広いってことさ。最初にちょっと話したが、SF要素もファンタジー要素も手を抜かず、上手いこと融合させている傑作だ。主人公やその祖父の名前を敢えて明かさないことで、寓話的な面も持たせており、様々な角度から読むことが出来る。ここ最近のライトノベルの中では、かなりのオススメと言っていいだろう」
「もしかして、今回はオチなしですか?」
「商業的には、最近のゆるキャラブームに上手いこと乗っかった作品って見方も出来るぜ♪」
「作品の出来はいいんだからそういうこと言わないのっ!」
――【つれづれナビ!】――
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◇ 『ライトノベル一覧表(その2)』へ
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